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朝中ロの三角再結束…トランプと金正恩の賭博的な談判は再演されるのか(1)

登録:2024-03-07 01:43 修正:2024-03-07 09:18
[ハンギョレ21]カバーストーリー_トランプ大統領が来る? 
キム・ヨンチョル元統一部長官インタビュー 
「ダイナミックな南北関係? 
偶発的衝突の可能性を弱めるべき」
2019年のハノイ朝米首脳会談の決裂は、米中戦略競争の激化の時期と重なる。2019年にハノイで会談した米国のトランプ大統領と北朝鮮の最高指導者、金正恩氏/AP・聯合ニュース

 ドナルド・トランプ政権時代の朝鮮半島情勢は、まさに激動していた。同政権初年の2017年には一触即発の情勢の中で「戦争危機説」が沸騰し、2018年には南北首脳会談に続く史上初の朝米首脳会談の実現で、「冷戦解体」と「平和体制」に対する期待が非常に高まった。しかし2019年2月にベトナムのハノイで再会した朝米の首脳は、何の成果も出せずに会談を終えた。その後、南北-朝米関係は急速に冷却期に入り、最近では「戦争危機説」が再登場する状況にまで追い込まれている。「トランプ政権第2期」が現実のものとなれば、朝鮮半島情勢はどう変わるのだろうか。

 「ジョー・バイデン政権の『交渉の安定的な不在』に疲れた人たちは、トランプ政権時代の予測不確実性が躍動的に状況を変えうると期待しているようだ。現実はまったくそうではない。外交・安保は予測可能性を高めることが戦略的に最も重要だ。不確実性が高まるということ自体が安保にとって脅威となるからだ」

 キム・ヨンチョル元統一部長官(仁済大学教授)はハンギョレ21のインタビューでこのように語った。そして「朝鮮半島をめぐる国際秩序は従来とはまったく異なる。トランプ政権が再登場しても第1次政権時代とは状況がまったく異なるだろう」との見通しを示した。また「今は偶発的衝突を防ぐための細心の努力が切実に求められている」と強調した。インタビューは2024年2月26日午後に、キム元長官が理事長を務める「韓半島平和フォーラム」のソウル汝矣島(ヨイド)事務所で行われた。

キム・ヨンチョル元統一部長官=キム・ジンス記者//ハンギョレ新聞社

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グレーゾーンにおける朝ロ、朝中の経済協力

-北朝鮮は韓国に向けて「敵対的な二つの国家論」まで主張している。これまでは見られなかった状況だ。

 「現在、南北をつなぐ対話のチャンネルはすべて断絶している。南北関係が大きく悪化した李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)両政権の時代も民間のチャンネルは存在したし、当局同士の間接的な対話も行われた。水面下の情報機関同士のチャンネルはもちろん、民間、赤十字、軍事、政府同士のチャンネルなど、あらゆる接触の窓口が完全に断たれたのは、1972年の7・4南北共同宣言の発表以降で初めてだ。さらに、朝米などの国際的な対話の窓口も閉ざされたままだ。北朝鮮が「敵対的な二つの国家論」を掲げたのは、このような情勢を反映したものだ。今や軍事境界線を南北の小分断線ではなく、東アジアの大分断線にするということだ。かつてとは質的に異なる」

-朝鮮半島をめぐる国際情勢も急変しているが。

 「短期的にみれば米中協力時代が終わったということで、長期的にみれば第2次世界大戦後に作られた戦後秩序を意味する『ヤルタ体制』が終わりを告げたということだ。ガザ地区戦争などの中東問題についてもそうだが、特に北朝鮮問題に関する国連安全保障理事会の5つの常任理事国間の合意システムはすでに破壊されている。北朝鮮が何をしても、安保理で5カ国が一致した結論にたどり着けない状況になっている。対北朝鮮政策への国際的な共同対応やアプローチがもはや作動しなくなっているのだ。

 ハノイでの朝米首脳会談の決裂は、米中戦略競争が激化した時期と重なる。『ハノイ・ノーディール』さえなかったら、米中戦略競争の中にあっても朝鮮半島問題は最小限の協力が可能な空間として残っていただろう。結局、北朝鮮は外交・軍事分野だけでなく経済分野でも、『北方』で生存を追求する方向に向かった」

-朝ロ、朝中の協力が急激に強まりつつある。

 「安保理制裁は違法と合法との間のグレーゾーンが非常に大きい。この部分については、各国に有権解釈の裁量権がある。ロシアは北朝鮮と同様に制裁を受けているため、グレーゾーンを積極的に解釈する可能性が高い。そのうえ、安保理が本来の機能を果たせていないことで、制裁の履行に対する評価にも悪影響を及ぼしている。

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の2023年9月の訪ロ後、急激に密着している朝ロの経済協力は、このようなグレーゾーンを中心として行われる可能性が高い。朝中貿易とは異なり、朝ロ貿易にはいわゆる『比較優位』がある。ロシアの極東地域は労働力を、北朝鮮はエネルギーや食糧などを必要としている。互いにやり取りできるものがあるから、経済協力は双方にとって利益となる。3月15~17日に予定されているロシアの大統領選挙が終われば、ウラジーミル・プーチン大統領は平壌(ピョンヤン)を訪問するとみられる。両国とも制裁対象であるため、制裁から脱するための協力もあり得る。

 朝中貿易は性格が異なる。中国は米国に代わって『国際規範の担い手』になろうとしている。可能なら違法な行動は取らないだろう。ただし中国も『グレーゾーン』を積極的に活用する可能性がある。朝中貿易は基本的に商業的な基礎というより、親戚訪問や国境貿易のかたちが主流だ。朝中国境そのものが一種の『共同国境』であるため、その気になれば海上と鉄道を通じた公式な貿易とは異なる、統計に表れないかたちで行われる余地が大きい」(2に続く)

チョン・インファン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1130962.html韓国語原文入力:2024-03-05 14:30
訳D.K

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