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[ハンギョレ21 2009.12.11第789号]ドバイに浮かされた方々はどこへ行かれたか

‘金融規制緩和と開放のモデル’褒め称えたMBと自治体首長たち…
“大統領始め国中がしん気楼にもてあそばれた”

■チョン・ヒョクチュン

<場面1> 2007年5月7日ソウル ウェスティン朝鮮ホテルで金融家団体の‘ソウルファイナンシャルフォーラム’が朝食会の集いを開いた。ファン・ヨンギ前KB金融会長など金融界有力要人らが顔を見せた。この日イ・ミョンバク ハンナラ党大統領候補は‘創造的金融のための提言’という主題で講演した。当時イ・ミョンバク候補はドバイについて長い時間を割いた。

←2007年4月11日イ・ミョンバク当時ハンナラ党大統領候補が船でドバイ人工島のパームアイランド建設現場を視察している。 国会カメラマン団

“2週間前にドバイに行ったところ、ドバイ王(シェーク モハメド)が色々な政治指導者に会い忙しい日程を消化していた。(私が)ドバイ王に一度会ってみると言ったところ、実務者クラスが‘イ・ミョンバクの身分が失業者なのでプロトコル上、面会は難しい’と言った。ところがドバイ王から‘是非会わなければならない’と連絡がきた。接見室で歓談している時、王がポケットから携帯電話を取り出し電話を受けた。ドバイに進出した外国人投資家からの電話だった。王がそれほどに企業家を接待していた。”

ドバイ王の行動は外交的には欠礼だったが、イ候補はドバイ王の行動に機嫌を損ねるどころか見習わなければならない姿勢として褒め称えた。

イ候補は大統領になった後、102人の企業人が一日24時間いつでも通話できる企業家ホットラインを開通した。最高経営者(CEO)出身らしく、ドバイ王の‘ビジネス フレンドリー’モデルをベンチマーキングしたのだ。大統領府は「イ大統領の‘ビジネス フレンドリー’政策意志を見せたこと」と強調した。一部保守新聞は"‘CEO出身大統領はやっぱり違う’として歓迎する財界の雰囲気"を記事にした。だが‘イ・ミョンバク(MB)フォン’は‘不通フォン’になった。開通後1ヶ月間に10通しかかかってこなかった。

<場面2> 2008年1月6日ソウル,三清洞の大統領職引継ぎ委員会ブリーフィング室。“韓国がドバイのような金融ハブに跳躍するためには、規制重複から解き放ち、金融サービスの完全な開放を試みなければなりません。”デービッド・エルドン大統領職引継ぎ委員会国家競争力強化特別委委員長は記者会見でこのように話した。当時、米国の金融危機は未来のことだった。

ドバイ国際金融センター会長を引き受けていた彼は外国人として唯一業務引継ぎ委員会に合流した。ドバイをベンチマーキングするというイ大統領の意中が込められた人事だった。エルドン委員長が引き受けた国家競争力強化特別委は業務引継ぎ委員会の核心分科だった。韓半島大運河とセマングム,科学ビジネスベルト,投資誘致など、イ・ミョンバク当選者の主要政策を管掌した。記者たちの間に‘MBノミックス’は‘ドバイノミックス’という話が出るほどだった。

だが記者会見の後、業務引継ぎ委員会周辺にエルドンは見当たらなかった。エルドンの行跡を尋ねれば、業務引継ぎ委員会関係者たちもやはり彼がどこにいるのか把握できなかった。単に彼が香港,中東,ヨーロッパなどに滞在し投資誘致活動をしているとだけ話した。だが二ヶ月間の業務引継ぎ委員会活動が終る時まで、彼が投資を誘致したという便りは聞けなかった。業務引継ぎ委員会出入り記者たちの間では、彼が‘食い逃げ’だったという冗談が出てきた。

候補時期から‘ドバイを見習おう’強調

MBは去る大統領選挙当時‘韓半島大運河100%民間資本誘致’‘大韓民国747’(年平均7%経済成長,1人当り国民所得4万ドル,世界7位経済大国)等の公約を持ち出した。だが実現の可能性に欠けるという批判に苦しめられた。そのような批判に対抗し出すことができるのがまさに‘ドバイ神話’だった。MBにとってドバイは‘砂漠のオアシス’のような存在だった。自身の公約が実際に地上で具現されうることを示す場所だった。ドバイは世界で最も高い建物であるBuzzドバイなどの大型建築物を造っていた。フランス,パリほどの人工島パームアイランドも造った。巨大な土木・建築工事を着々と進行していた。ドバイは金融規制緩和と開放によりブラックホールのように外国資本を吸い込んでいた。

事実MBは去る大統領選挙期間中、一貫してドバイに対し無限の愛情を注いだ。税金がなく、外国為替取り引き制限がなく、労働争議がなくて、外国企業所有権に制限のないドバイ発展モデルはMBノミックスとも相接している。

2007年8月、MBは智異山登山の途中、韓半島大運河と関連する記者たちの質問に「最近、ドバイ系ファンドが韓半島大運河事業に投資するという意向書(LOI)を持ってきた。150億ドル(約14兆ウォン)程度を投資する意向があるという話を聞いた」と話した。

セマングム・松島・釜山新港湾も‘ドバイ幻想’

1ヶ月後のその年の9月、MBとハンナラ党指導部が全北,扶安のセマングム現場を訪ね最高委員会議を開いた。この日、最高委員会議場の壁面には‘セマングムをドバイのように 経済大統領イ・ミョンバク’というスローガンが掲げられていた。MBは「セマングム開発計画を国際化しなければならない。外国資本と外国人たちも入ってきてこそ、この事業ができる」と強調した。全州放送など地域4大報道機関招請対談では「セマングムに中東のオイルダラーを導入する問題を具体的に検討している」と話した。その年11月、済州を訪ねたMBは済州を香港やドバイに劣らない名実共に国際都市にすると公約した。

MBのドバイに対する愛情は大統領当選後にも続く。2008年5月、MBは業務報告のために全北道庁を訪問した席で「ドバイからも(セマングムに) 30億ドルの投資を準備するという公式的な連絡を受けている」と明らかにした。MBはその年9月、セマングム研究団体発足式に送った祝辞で「セマングムが‘東北アジアのドバイ’を越え、世界の人が感心するメッカに成長するようにして欲しい」と注文した。

MB精神を受け継ぐ後継者たちも次から次へと出てきた。アン・サンス仁川市長は仁川,松島新都市を‘韓国のドバイ’にすると公然と明らかにした。ホ・ナムシク釜山市長も釜山新港湾を‘韓国のドバイ’にすると強調した。民間でもドバイ模倣は続いた。ロッテが蚕室に112階規模で作るという第2ロッテワールドはドバイ熱風のまた別の姿だ。龍山駅勢圏の150階規模ドリームタワーとソウル,上岩洞の133階ソウルランドマークビルなど超高層建築計画が次から次へと出てきた。

投資意志を明らかにしたという‘ドバイ ファンド’の正体は?

だが昨年9月米国で金融危機がさく烈した後、ドバイはフラフラになった。製造業の後押しがなく外部からの投資で支えたドバイは世界金融危機の直撃弾を受けた。投資家は引き潮のように抜け出た。資金梗塞を呼び起こし1年で不動産価格が半値になった。‘砂漠の奇跡’が‘砂漠のしん気楼’だったことが明らかになった。

保守論客のイ・サンドン中央大教授(法学)は昨年12月、自身のホームページに掲げた‘MBのモデル ドバイ, ついに崩れるか’で「イ・ミョンバク大統領が自身と共に‘世界的な卓越したCEO’と語ったドバイ統治者の雲をつかむような金賭けに世界がだまされた」として「大統領はもちろん全国の政治家と事業家,そして言論がドバイを見習おうとわめきたてた国は恐らく我が国しかないだろう」と批判した。

MBがドバイ投資誘致に努めているが、金融界内外ではドバイ ファンドの実体に疑問を提起している。匿名を要求したある金融専門家は「投資自由地域であるドバイの私募ファンドは、実体が不明な投機的金融資本に属する」と話した。英国の金融会社であるバークレイズもアブダビ王家の投資社のインターナショナル ペトロリアム インベストメント コープ(IPIC)の‘食い逃げ’に困惑している。今年6月<ファイナンシャルタイムズ>はバークレイズの中東最大株主の一つであったIPICが35億ドル相当のバークレイズ保有持分を売り、相当な投資収益を上げたと報道した。昨年IPICがバークレイズに投資した当時だけでもシェーク マンスール ウィーン チャイェドゥ アルラヤンIPIC会長が“長期的な戦略的投資”と明らかにした。投資家たちはバークレイズが中東で魅力的な条件で新規資本を調達したとし熱狂したが、IPICは7ヶ月という短期間で撤収してしまった。

キム・ビョングォン‘新しい社会を開く研究院’副院長は「砂漠ばかりの土地に世界最高の建築物を造り、不動産ブームを起こしたドバイの成長動力は自由化と開放化だった。一方ではあふれ出る資本を西欧から引き込み、他方ではアジアからあふれる安い労働力を輸入し、大規模不動産建設を起こした」と話した。キム副院長は「金融と建設が‘誤った出逢’を通じバブルを起こせば、危機がやってくるというのがまさに‘ドバイの教訓’だ。イ・ミョンバク政府が推進する金融ハブと財政赤字を甘受しながらも推進する4大河川事業に対しても反面教師としなければならない」と強調した。

ドバイ危機説が出回った今年初めから全羅北道はセマングム企画書からドバイという用語を除いてしまった。この間、道庁講堂建物に懸かっていた‘ドバイ垂れ幕の絵’は他の垂れ幕に交換された。‘セマングムで第2のドバイを創り出そう’という市内バスのドバイ広告も消えている。

言及回避し‘ドバイ消し’モードに

ドバイは11月25日(現地時間)事実上破産した。ドバイ財務部は「最大国営会社のドバイワールドと子会社ナキルの債務償還を来年5月30日まで猶予してくれることを債権団に要請した」と話した。事実上、国家財政が滅びたということを屈辱的に明らかにしたわけだ。ドバイワールドの借金は590億ドル、我が国通貨で約68兆ウォンに達する。ドバイの全体借金800億ドルの74%に相当する金額だ。

11月30日、MBは大統領府でハンナラ党最高委員たちと朝食会の会合をしながら「ドバイではじけた問題がヨーロッパとアジアに飛び火しそうで不安だ。来年上半期までは危機管理方式で行かなければならない」と話した。大統領選挙当時、ドバイを韓国のロールモデルとして強調した雰囲気はもはや見当たらなかった。

チョン・ヒョクチュン記者june@hani.co.kr

原文: http://h21.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/26278.html 訳J.S