本文に移動

[ニュース分析]韓国人の期待寿命に“急ブレーキ”、なぜ?

登録:2019-12-18 21:43 修正:2019-12-19 14:41
[ハンギョレ21]2018年82.7歳で、前年水準にとどまる 
肺炎増加、記録的猛暑、自殺率増加などの影響と推定
ソウル市鍾路区のタプコル公園で過ごす高齢者たち=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 “82.7歳”

 大韓民国の期待寿命増加が止まった。統計庁が調査を始めた1970年(62.3歳)以後、初めてだ。統計庁が発表した「2018年生命表」資料によれば、昨年生まれた子供の期待寿命は82.7歳で、2017年出生児の期待寿命(82.7歳)と同じだった。性別では、男子は79.7歳まで生き、女子は85.7歳まで生きると予想された。

寒波の影響で肺炎死亡率が3倍に

 「昨年冬の気温が1973年以来最も低くなるなど、寒波が激しかった。高齢化で死亡率が高まる傾向に加えて、昨年は特に寒波の影響が大きかったと見える」。統計庁は、2018年1月、2月の死亡者数が前年同月比で21.8%、9.3%増えたことにより、期待寿命の停滞原因として厳寒の“天候”を挙げた。肺炎による死亡確率の増加も原因に挙げられた。2018年の主な死亡原因のうち、肺炎は10%と把握され、10人に1人が肺炎で亡くなったことが分かった。2008年(3.2%)と比較すると、3倍以上に増えた。がんや脳血管の疾患で死亡する確率が減ったのとは対照的だ。

 2018年の期待寿命の停滞は、マスコミには大きく注目されなかった。統計庁の説明によれば、今年は寒波が再び起きない限り、韓国人の期待寿命が再び伸びると見られるためだ。「期待余命」は、特定年齢の人口が今後生存すると期待される平均生存年数を意味するが、該当年齢人口の死亡者数、生存者数、死亡確率などを利用して算出する。年齢が“0歳”の出生児の期待余命を「期待寿命」という。

 韓国の人々は、期待寿命が今後も伸び続けると信じている。学界と政府も持続的な期待寿命増加を予想してきた。英国のインペリアルカレッジ・ロンドンと世界保健機構(WHO)は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の期待寿命を分析して、2030年に生まれる韓国女性の期待寿命が90.82歳を記録し、初めて期待寿命が90歳を突破すると予想した。韓国は、世界で最も急速に長寿に接近している国家と見られていた。

 ところが、突然期待寿命の増加が止まった。当局では寒波による一時的停滞と説明したが、学界からは“衝撃的”という言葉が出てきた。

 韓国国内の期待寿命と不平等問題の専門家であるソウル大医学部のカン・ヨンホ教授(医療管理学校室)は、「韓国はOECD加盟国の中で期待寿命の増加速度が最も速かった。米国と英国で最近期待寿命が減って注目されたが、これらの国は変化の幅が大きくなかった。だが、0.2~0.4歳ずつの増加幅を数十年にわたり記録してきた韓国の期待寿命が増加を止めたというのは大きな問題だ」と話した。

韓国の期待寿命と健康寿命の変化=資料:統計庁//ハンギョレ新聞社

英国も停滞「深刻な保健危機」

 カン教授は、期待寿命増加の停滞と関連して、肺炎死亡が重要な要因であることは事実だが、これは苛酷な冬の天候のような気候の問題だけでなく、「社会不平等」と関連が深いと説明した。肺炎死亡者の増加は主に75歳以上の人口で起きるが、相当数の高齢者が療養病院のような療養機関に集まっているケースが多い。患者が集まった中で感染したり、脳卒中を病んで横たわっていて気管支や肺に異質が入る吸引性肺炎による死亡も多いことが報告されている。療養保護者数が足りない施設できちんと保護されない患者の肺炎死亡率が高い。カン教授は「社会経済的要素と期待寿命を同時に調べてみると、高齢で所得水準が低いほど肺炎で亡くなる人が多かった。肺炎は期待寿命を低くすることに寄与するだけでなく、期待寿命の不平等にも寄与する」と話した。

 それでもまだ疑問が残る。10年間着実に伸びてきた期待寿命の伸びが止まったことを肺炎死亡率で説明できるだろうか?

 まだ精密な研究結果は出ていないが、いくつか注目すべき内容がある。第一は記録的猛暑だ。2018年には、寒波だけでなく猛暑日数も31.5日で、1973年以降最高を記録した(第1288号「2018年猛暑死亡者は48人でなく160人」参照)。高温が心血管と呼吸器疾患に悪い影響を及ぼすという。

 2018年は自殺率が再び増加傾向に転じた年でもある。国際通貨基金(IMF)外国為替危機以後、2011年に10万人当り31.7人で頂点に達した自殺率は、2012年の自殺予防事業の拡散以後、着実に減ってきた。2017年には24.3人を記録したが、2018年に26.6人になり、2.3人増えて再び反騰した。2018年の自殺統計で目につく部分は、若年層で自殺が増えたという事実だ。年齢帯別に見れば、80歳以上を除く全年齢層で増加したが、特に10代で前年対比22.1%増え、30代(12.2%)、40代(13.1%)でも大きく増えた。

 2014年(78.9歳)から2017年(78.6歳)まで3年連続で期待寿命の減少を経験した米国でも、自殺率の増加が注目された。米国家庭医学会(AAPF)は、2018年に発刊した資料で「薬品の誤・乱用と自殺」を期待寿命減少の原因として説明した。学会は「2017年の一年間に7万237人が薬品の誤・乱用で死亡し、前年対比9.6%増加しており、自殺率は10万人当り13.5人から14人に増え、期待寿命の減少に寄与した」と明らかにした。

 産業化以後の100年間に期待寿命が急速に伸びたが、2011年から期待寿命の増加が停滞した英国では、早くから期待寿命が保健医療界の関心事に浮上した。2000~2015年の出生児の期待寿命は、女性は5年ごとに1年、男性は3.5年ごとに1年増えるほど急速に増加したが、2015年以後は鈍化した。英国統計庁の資料によれば、2016年から2018年の間に期待寿命で男性と女性がそれぞれ4.7週、3.1週の増加に終わった。これを英国のある学者は「第2次世界大戦以後、最も深刻な保健危機」と呼んだ。

 英国では、期待寿命の増加停滞と関連して、社会経済的原因が注目されている。ロンドン保健大学院のルシンダ・ヒアム研究教授は、英国日刊紙「ガーディアン」のインタビューで「英国の期待寿命増加停滞は、緊縮財政実施(2010年)以後に始まった」として「2008年のグローバル金融危機以後の保健福祉予算の減少が期待寿命の減少を招いた可能性がある」と主張した。英国政府はこの指摘を反映して、地域別の健康格差と貧富格差にともなう期待寿命の差を調べて解決策を検討している。

病気をせずに生きていく健康寿命は持続的に減少

 韓国では、期待寿命の増加停滞も問題だが、健康寿命の持続的減少も大きな問題だ。健康寿命は、病気の治療期間を除いて“健康”に生きる期間を意味するが、2012年から隔年で把握している。2012年に65.7歳だった健康寿命は、継続的に減って、2018年には64.4歳を記録した。期待寿命統計と比較すれば、2018年に生まれ85.7歳まで生きる女性は、20.8年間は病気を病んで生きなければならない。

 こうした脈絡から、期待寿命の増加停滞の原因を「記録的寒波」と「肺炎死亡者増加」に限定して説明することでは不十分だ。期待寿命の増加を遮る問題と、健康寿命の減少の根本的原因を把握しなければならない。

イ・ジェホ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
http://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/921283.html韓国語原文入力:2019-12-18 16:42
訳J.S

関連記事