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[ハンギョレ21] 日本ある公務員の死 ミステリー… 「スパイだった」 主張も

登録:2014-02-11 20:21 修正:2014-09-05 17:26
福岡近海で遺体で発見された日本内閣府職員
米国に留学し韓国に来た彼は なぜゴムボートに乗ったのか…
ソウルのあるボート業者では香港出身だと
日本NHK放送画面キャプチャー

"小さなゴムボート1隻が漂流中、中に人がいるようです!"

1月18日午前9時45分頃、日本 福岡県 北九州の近海。 悪天候の中、海釣りに出た船舶から海上保安庁に申告が入ってきた。 管轄区域の海上保安庁巡視艇が緊急出動した。 10時を若干過ぎて到着した巡視艇乗組員は赤いゴムボートの中に人1人がひっくり返っているのを確認した。しかし気象条件のために接近できなかった。 風速12mの風と高さ2~3mの波、強風注意報と波浪注意報が同時に下されていた。 その時、ゴムボートが突然ひっくり返った。 中の人は水中に投げ出された。

ボート業者には香港出身だと偽り

 二日後に海上保安庁は水深7mの海中から遺体を引き上げた。 背丈175cmの20~30代男性、外傷はなかった。 当初は身元を確認できる持ち物はなかったと伝えられもした。 真冬にゴムボートに乗って釣りに出た一人の男の遭難程度と思われた。

 ムードが一変したのは2月1日からだ。 日本の一部言論が、死亡者が内閣府所属の職員だと報道してからだ。 遺体発見当時の状況も伝えられた。 身元確認の端緒となった持ち物はクレジットカードであった。 現金もあったが、韓国通貨25万3200ウォン(25,000円相当)だった。 彼が着ていたジャンパーにはハングルのタグがついていた。 韓国が登場した。

 2月3日、日本政府の公式発表が出された。 海上保安庁は1月22日死亡者の解剖検査当時、死後1~2週ほど経過していることを把握したと明らかにした。 死因は低体温症または溺死だとした。 発見当時、ボートの付近から韓国産のエンジンが発見されたという事実も明らかになった。

 同日、菅義偉 官房長官は、この職員が1月7日韓国に滞留中だと内閣府に報告してきたが、以後連絡が途絶えたと話した。 1月8~10日、ソウルで開かれたアジア-太平洋社会科学学会(APSSC)に参加するとして内閣府の承認を得て‘出張’に来たという。 言論が彼の行跡を追跡し氏名も明らかになった。 東大出身S(30)氏は2010年内閣府に採用されシンクタンクである経済社会総合研究所で勤務した。 昨年7月には政府の支援を受けて米国ミネソタ大大学院修士課程に2年間の予定で留学中だった。

 米国に留学し学術会議を理由に韓国に来た彼は、なぜゴムボートに乗って福岡近海まで流れてきたのだろうか。 日本のメディアが伝える彼の行跡は怪しいことこの上ない。

 S氏は昨年12月初め、APSSCの主催者に連絡し大学院生の身分で参加申請を行った。 登録費250ドルもあらかじめカードで決済した。 彼は日程について詳しく尋ねる情熱を見せた。 大学訪問時、大学の博物館に行き近代経済・歴史などに関する資料を収集する機会があるかというなど、非常に具体的な質問だった。

 1ヶ月後の1月3日、S氏は韓国に入国した。 ソウル北倉洞(プクチャンドン)の○ホテルで先ず一泊した後、翌日にはソウル駅前の厚岩洞(フアムドン)にあるKゲストハウスに宿を移した。 S氏はそちらに1月4~11日の間(7泊)泊まるとしてインターネットであらかじめ予約し部屋代の支払いも済ませていた。

 二日後の1月6日、S氏はソウルのあるボート業者を直接訪ねた。 黒のジャンパーにマスク姿で、釣り用ゴムボートと船外機(モーター)を買った。 S氏は香港出身の‘アレックス フォー’(Alex Po)だと自身を紹介した。 「釣りが好きだが、香港では小さなボートでの釣りができない」として、希望のモデルを特定した。 一部の替えなかった品目は釜山(プサン)で買うと話した。 昨年11月から旅行中で、品物は1月8日に釜山(プサン)のあるホテルに配送して欲しいと頼んだ。

ボートをどうやって海に運んだのか?

 この日午後4時頃、西小門(ソソムン)派出所に行きパスポート ケースの紛失申告を実名で行った。 同時に自身が宿泊している所ではない別のホテルに荷物カバン3個を預けもした。 この時は仮名‘アレックス’を使った。 荷物を預かったホテルでは、パスポートを見て日本人であることに気づいた職員が日本語で話しかけたが、英語で話を続けようとしたという。 後で明らかになったが、荷物カバンにはコンピュータとカメラが入っており、パスポートとクレジットカードもあった。

 夜には友人として知られた韓国人男性に電子メールを送り "ソウルに来たので会おう" と書き、翌日午前10時から夜9時まで一緒に市内観光をした。 S氏は友人に 「留学中は日本に帰れず米国生活に悩んでいる」と打ち明けたと伝えられる。

 翌日の1月8日は学会の開幕日だった。 主催側はS氏は参加しなかったと把握している。 彼はこの日午後、釜山市内でエンジン、バッテリー、ケーブルなどの関連部品と防寒服などをカードで購入したことが分かった。 釜山でもS氏はマスクと帽子をかぶり、英語で香港出身だと話していた。 ソウルで注文したボートとモーターは予定どおりこの日の夕方、釜山のあるホテルに配達された。

 確認された彼の行跡はここまでだ。 1月10日Kゲストハウスの防犯カメラ(CCTV)に彼の姿が撮影されているという国内言論報道があったが確実ではない。 ゲストハウス側は1月11日までの部屋代を先に支払った彼が、退出の手続きを別に行っておらず、いつまでいたのかは分からないと話した。

 残る疑惑は無数に多い。ボートをどのようにして海まで持っていったかも謎だ。長さ230cm、重さ34kgのゴムボートとエンジン、および各種の部品を一人で運ぶのは容易ではない。 果たして日本に行こうとしたのかも分からない。 釜山から最も近い対馬まででも約50kmの距離だ。 S氏が用いたエンジンの燃料事情などを勘案すれば、長く持っても7kmしか進めないだろうと言う。 釜山から出発して、どこかから漂流したのであれば、なぜ福岡で発見されたかも不思議だ。 気象専門家たちは最近の海流の流れから見て、はるか北側の島根県や鳥取県に到着しなければならないと説明している。 大きな船で近くまで接近し、ゴムボートに乗り移ったという観測もある。これを根拠にS氏が実は中国・北韓・韓国などに雇用されたスパイではないかという主張も日本のネチズンたちの間からは出ている。

米国に戻るつもりはなかったという意

 彼が1月から始まる新学期の登録をしていなかったということも怪しい部分だ。米国に戻るつもりはなかったという意だ。 ソウルに残していた荷物は、ソウルに帰ってくる計画、またはソウルにいるフリをするための偽装意図という推測がある。 S氏は政府の支援で留学中なので、相当な理由がなければ帰国もできない状況だった。 その代案として韓国の学会を口実にゴムボートでの密入国を試みたとすれば、それほど急迫した事情が何だったかも疑問だ。 女性問題のような個人的事情と連係させる人々はこのような背景からだ。

 日本政府は2月6日インターポールを通じて韓国に共助捜査を要請してきた。 ミネソタ大学に共に留学中であるまた別の内閣府職員は、同僚であるS氏の死亡の便りに当惑感を隠せなかった。 「なぜこんなことになったのか、さっぱり分からない。 平凡な青年だったのに。」

キム・ウェヒョン記者 oscar@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/623612.html 韓国語原文入力:2014/02/11 17:24
訳J.S(3253字)