[ソン・デインの数字経済]‘GDP対比比重OECD 4位’巧妙な統計を前面に出して法人税率を下げなさい 圧迫…先進国よりはるかに低く、大企業が中堅企業より低く、むしろ上げるべき(3090字)
←昨年11月、ソン・ギョンシク大韓商工会議所会長など主要会長団が‘法人税率引き下げ’等の内容を盛り込んだ共同発表文を読み上げている。 全国経済人連合会などの‘先進国に比べて法人税が高い’という主張を、最近企画財政部とセヌリ党朴槿恵大統領選挙候補が復唱している。 写真ニューシス
あまりにも明白な事実を巡って論議を繰り返さなければならないイシューが韓国には本当に多い。 国際的に比較してみても結論が明らかなのに、既得権勢力の力と彼らを代弁するラッパ吹きの声が大きいために現れる現象だ。 代表的なものが‘福祉ポピュリズム’論議だ。 経済協力開発機構(OECD)国家の中で公共社会福祉支出が最下位水準の国に、どうすれば‘福祉ポピュリズム’のレッテルを貼れるというのか。 生活必需品もまともに買えない低所得層に対して贅沢するなというようなものだ。
高度成長で課税対象・所得が増えて
法人税論議も同じだ。 韓国の法人税率負担が世界的に非常に低い側に属するということは明白な事実だ。 ところが、一見するともっともらしい主張が出てきて人々をげん惑させている。 ‘韓国の国内総生産(GDP)対比法人税額比重がOECDで4位であり、企業の法人税負担を低くしなければならない’という主張だ。 全国経済人連合会(全経連)と傘下の韓国経済研究院が数年前から騒ぎたて、今や企画財政部とセヌリ党 朴槿恵大統領候補までがこのような根拠を前面に出して‘法人税引き下げ’を叫んでいる。 だが、このような主張は悪意的歪曲と深刻な論理的誤謬の産物だ。
調べてみよう。 GDP対比法人税額比重が上がる可能性には色々なものがあるが、大きく分けて 1)課税対象者が増えたり 2)課税対象所得が増えたり 3)税率が上がることなどだ。 だが、個別企業の立場から見れば、法人税負担が大きくなるケースは法人税率が上がること(税制上現れた名目法人税率だけでなく非課税・減免恩恵などが減って実質法人税率が上がることを含む)を言う。
ところで既得権勢力はGDP対比法人税額の比重が大きいという事実を国内企業らの法人税率が高いという主張と巧妙に等値させている。 だが、韓国のGDP対比法人税額比重が高いのは、税率が高いからというより 1),2)番の影響が大きいためだ。 実際、国税統計年報に収録された1982年以来2010年までに法人数は17.9倍増えた。 ところが、その間これら法人が手にした国民処分可能所得の持分は65.7倍に増えたし、法人税課税所得金額は83.9倍に増えた。 だが、課税金額は52.5倍増えるのに止まった。 その間に1法人当たりの課税所得金額は4.7倍増えたが、1法人当たり課税金額は2.9倍の増加に止まった。 すなわち、平均的に法人税課税所得が増えたことに比較すれば課税額は反対に相対的に減ったのだ。 去る約30年間に法人税額が増えたには韓国経済と企業が相対的に高度成長をして、課税対象者が増え課税対象所得が大きく増えたからであり、税率が上がったからではないという意味だ。
個別企業らの法人税負担を正確に表わしてくれる指標は文字どおり実効法人税率だ。 実効法人税率は国ごとに異なり、国際的に比較することは難しい。 だが、少なくとも名目法人税率は韓国がOECD平均より非常に低い。 2012年基準で韓国の名目法人税率は24.2%であり、OECD 34ヶ国中で税率が高い順に並べて21番目であり、低い方に属する。 韓国より法人税率が低い13ヶ国は資本を誘致してこそ暮らせるアイルランド・アイスランドのような都市型国家かハンガリー・ポーランド・スロベニアなど旧東ヨーロッパ国家が大部分だ。 法人税率が最も高い日本とアメリカなどの場合を見れば、むしろ先進国であるほど法人税率は高い傾向だ。
外国では個人所得でも韓国では法人所得扱い
名目法人税率はこのように低いのに、大企業に賦課される実効税率はこれよりもはるかに低い。 歴代政府が大企業を中心に各種税額控除恩恵を提供したおかげが大きい。 実際に<図>に見られるように国税統計年報の数値で分析してみた2010年基準の韓国の平均実効税率は名目税率よりはるかに低い16.56%に過ぎない。 しかも全経連や企画財政部、朴槿恵候補などの関心対象である課税所得5千億ウォン以上の42ヶの大企業の実効法人税率は、課税所得が数百億ウォン台の中堅企業の実効法人税率よりも低い。
このように韓国の個別企業が出す法人税負担は国際的に比較する時、逆に非常に低い方だ。 最近経済危機を経てOECD国家中で一部が景気振興のために法人税率を下げたことは事実だ。 かと言って当初より法人税率が低かった上に、特に経済危機の中でも史上最大の実績を続けざまに挙げた財閥大企業のために韓国が法人税率を低くする理由は全くない。 むしろ大企業の非課税減免恩恵を大幅に減らし、実効税率を高めて、名目法人税率を累進構造に一定上げる余地もある。 実際、課税所得5千億ウォン以上の法人42ヶの企業が数百億ウォン台の中堅企業水準の税金を出すだけでも、2010年基準で約9千億ウォンの税金を追加徴収できる。 この大企業が出さなかった税金分が国民のポケットから税金を納めたことになるわけだ。
そして見落とせない重要な事実は、GDP対比法人税額比重を比較する時に重要な陥穽があるという点だ。 韓国の場合、法人税として把握される相当部分の所得が、米国・ドイツ・フランスなど相当数の国家では個人所得として捕捉されている。 例えば米国の場合、パートナーシップ会社やSコポーレーション(S-corporation)という企業らの所得は個人所得税としてとらえられる。 ところがこのようなパートナーシップ会社やSコポーレーションなどの企業が数字では70%、税収比重では30~40%に及ぶ。 ところで韓国はこのような細かい会社区分がないために全部が法人税収としてとらえられている。
そのためにOECD比較統計で韓国のGDP対比法人税額が相対的に過大評価され、個人所得税額は過小評価される錯覚現象を起こしている。 もし米国やドイツと同じ方式で区分するならば、韓国のGDP対比法人税額順位は現在より大幅に下がるだろう。 (GDP対比法人税負担額の比重差が国家別に大きな差がないので、少しだけ比重が増えたり減ったりしても順位が大きく変わる)
全経連主張をそのまま復唱する大統領候補
結論的に‘GDP対比法人税額比重が高いから法人税率を下げなければならない’という主張は、事実関係を意図的に歪曲したり論理的誤謬を犯しているということだ。 また、国際比較統計上の盲点を全く考慮しない主張だ。 数年前から全経連などから出ていた主張を、今や企画財政部長官とセヌリ党大統領候補がオウムのように復唱している。 果たして彼らは国民の側なのか、財閥大企業の側なのか?
ソン・デイン経済戦略研究所長
原文: http://h21.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/32829.html 訳J.S