原文入力:2011/11/25 09:49(2408字)
電気・ガス 民営化 猛烈な圧迫…料金規制したりすれば“ISDブーメラン”
チョン・ウンジュ記者
韓電40%・ガス公社30%まで外国資本許容
政府・自治体による公共のための料金政策 脅かす
鉄道補助金・地下鉄値下げも無力化
済州(チェジュ)・経済自由区域では営利病院 統制不可能
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去る9月15日、類例のない大規模な停電が発生した。 予告なしの停電でアパートのエレベーターが止まり工場が止まるかと思えば、病院では応急患者の手術を中断する危機に直面した。 電力の需要予測と供給の責任を負う電力取引所は、残暑の上に異常高温で予測がはずれたためだと表明した。
しかし、社会公共研究所のソン・ユナ研究委員は「根本的な問題は別にある」と指摘した。ソン研究員は「電力産業の発電部門を売却しようと2001年4月火力部門を5つに分け、互いに競争関係に変わった結果、保寧(ポリョン)・三千浦(サムチョンポ)・河東(ハドン)の火力発電所に各々問題が生じたという情報をお互いが共有できなかった。 結局、民営化のための分割・競争体制が有機的な対処を不可能にした」と診断した。
韓-米自由貿易協定(FTA)が来年1月1日に発効されれば、電力産業の民営化は急流に乗る可能性が大きい。 韓-米協定が韓国電力公社持分の40%、発電設備部門容量の30%まで外国人所有を認めたためだ。 特に火力発電5社の個別設備容量は10.1~11.7%に留まり、外国人投資家が30%限度内で2~3個の発電会社を買いとることができるようになった。 電気料金と直結した配電・販売部門も持分の50%まで外国人投資が許され、政府の電気料金規制が投資家-国家訴訟制(ISD)の対象になり得ることになった。 実際にアルゼンチン政府は外国人投資家のガス料金引上げを拒否して訴訟にまきこまれた経緯がある。
ガス産業もすでに小売り部門は完全に民営化された状況であり、安心はできない。 我が国は天然ガスを導入し始めた1983年から都市ガスの卸部門は韓国ガス公社が供給しているが小売り部門は民間事業者33ヶ所が全国を分割して民間独占で運営してきた。 米国資本が参加しているGSカルテックスなども民間事業者として参加するが、都市ガス料金は地方自治体条例で決定されるので勝手に上げられないでいる。
都市ガス料金は人口規模や配管網により差別的に決められる。 首都圏など人口密集地域は普及率が高くて料金が安くなるが、地方中小都市は普及率が低くて料金が高くなっている。 先月10日現在のソウルの基本料金(住宅用)は㎥当たり840ウォンだが、江原道(カンウォンド)春川市(チュンチョンシ)は950ウォンに達する。 このような地域間不均衡を解消するためには地方自治体の役割が重要だ。 だが、韓-米協定が発効されれば地方自治体の料金調整政策まで脅かされることが予想される。韓-米協定の第16章(競争)を見れば、民営指定独占企業は料金を「もっぱら商業的考慮によってのみ」決定するよう原則を定めているためだ。 特にイ・ミョンバク政府は一部卸部門を民営化して外国人の持分を30%まで許容する都市ガス事業法改正案を国会に提出した状態だ。 ウ・ソッキュン韓-米FTA阻止汎国民運動本部政策諮問委員は「韓-米協定が発効し都市ガスの卸・小売り産業に外国資本が進出することになれば、現在のような料金体系や都市ガスの地方拡大政策が事実上不可能になるだろう」と展望した。
鉄道産業に導入された公共サービス義務補助金(PSO)も論議の的だ。 義務補助金は鉄道が輸送サービスを義務的に提供すれば政府がこれを補償する制度で、セマウル号とむくげ号などに適用されて鉄道利用者は40%程度の料金割引特典を受けている。 韓-米協定により2005年7月1日以降の建設・運営路線に外国資本が進出すれば、この制度が無力化される恐れがある。 また、民間資本投資による地下鉄がすでに存在するために、原価以下で運営するソウル メトロ、都市鉄道公社、大田(テジョン)・大邱(テグ)・釜山(プサン)地下鉄も低い料金を維持すれば競争の原則に外れるという理由で外国投資家に提訴される可能性がある。
←去る9月15日、予告なしの大規模停電でソウル市汝矣島(ヨイド)一帯のアパート団地が闇に沈んでいる。 電力産業と鉄道など各分野で外国人持分所有を認める韓-米自由貿易協定(FTA)発効を来年1月1日に控え、公共性を阻害するという憂慮の声が大きくなっている。 イ・ジョンア記者 leej@hani.co.kr
米国が投資した営利病院が済州(チェジュ)と経済自由区域6ヶ所にひとたび許容されれば、医療費過多引き上げなどの弊害が現れても、巨額の補償金を与えない限り韓国政府が政策を思うように撤回できない。 米国医療界は「韓-米協定により米国医療機関と実務者の権利が一層強化され、韓国の立法者や行政家が国内法を変更して米国の利益を除去するのは難しくなった」と評価した。
外国資本の力は完全に民営化されたKTの事例でもうかがえる。 外国人持分が49%に達するKTは通信費引き下げや設備投資には関心がなく、莫大な利益を外国人配当として分けている。 KTの新しい労組のイ・ヘグァン委員長は「根本的な解決策は再公有化なのだが、韓-米協定の逆進防止条項に引っかかって民営化を元に戻すことができなくなった」と指摘した。
チョン・ウンジュ記者 ejung@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/507093.html 訳A.K