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7年間 精魂込めた路地裏商圏、多国籍企業の前では沈没

原文入力:2011/10/04 20:49(1861字)
ファン・イェラン記者


新村(シンチョン)26㎡‘タコ’店の向かいに米国企業‘タコベル’が開業…
顧客を奪われ売上30%↓
零細飲食店 保護装置なくFTAが始まればSSM規制も水の泡


←チェ・ウジン社長が4日午後、ソウル、新村の名物通りにある中小自営業者チョイスタコ売場で注文を受けた料理を作っている。(左) この店の向い側に開店した米国系多国籍企業タコベル売場に開業を知らせる大型横断幕が懸かっている。 イ・ジョンア記者 leej@hani.co.kr


ソウル、新村の名物通りにはメキシコ路上食品‘タコ’を売る店二ヶ所が狭い道路を挟んで向かい合っている。世界最大のメキシコ食品ファーストフード店の‘タコベル’がよりによって7年間にわたり新村に店を構えてきた‘チョイスタコ’のすぐ向い側に先月開業したためだ。タコベルはピザハットとKFCで有名な米国系多国籍企業‘ヤムブレンド’の子会社で、米国だけで5600店の売場を率いている。26.4㎡の小さな店のチョイスタコとは比べものにならない存在だ。

去る3日夕方、チョイスタコ社長のチェ・ウジン(54)氏は薄いトルティーヤ(小麦センベイ)の上に刻んだ牛肉と野菜を載せる度に時折苦々しい表情で窓の外を見た。店の窓の向こう側ではタコベル売場が見える。‘○番のお客様、ご注文が上がりました’というタコベルのアルバイト職員の声が聞こえるほどに近い距離だ。チェ氏は「数年前からタコベルがこちらに市場調査に来ていた」として「7年間精魂を込めて積み上げた商圏を多国籍企業が目と鼻の先で横取りされた」とため息を吐いた。


実際、タコベルが開店した後、この店のお客さんははっきりと減った。毎日12時間ずつ営業しても売上は20~30%ほど減った。反面、タコベルは一日1000人以上の訪問客が訪れるほど人気を呼んでいる。


昨年韓国に進出したタコベルはソウル市内の既存売場4ヶ所の他に追加で3ヶ所を年内に開店する計画だ。タコベルコリア関係者は 「新村売場は会社所有の建物でありその場に開業しただけで、(チョイスタコを)意識したわけではない」と話した。


チェ氏は千里眼(韓国の草分けネット企業)の開発チーム長を務め、有望ベンチャー企業を創業した事業家出身だ。2003年ベンチャーバブルが消え会社が潰れ大きな借金をした後、彼は米国出張の度に好んで食べたタコを思い出した。メキシコまで行きタコを作る秘法を習ってきたチェ氏は盆唐の露天商から始めて新村に店を開き、国内にはまだ珍しかったタコはいつのまにか地域の名物になった。ところがタコベルの登場で再び崖っぷちに立たされたのだ。


それでもチェ氏のように飲食店を営む中小商人を保護してくれる制度的な垣根はない。町内小売店を脅かす国内大企業らに対しては中小企業庁や地方自治体の事業調整制度を通じて‘企業型スーパーマーケット(SSM)一定距離内開業禁止’等を要求できる。製造業分野では中小企業適合業種制度を利用して‘大企業は事業から手を切れ’と主張してみる余地もある。しかしそれらもタコベルのような多国籍企業の前では力を発揮できない。


韓-米自由貿易協定(FTA)が発効すれば、状況ははるかに深刻化する。韓国政府が‘制限なき完全市場開放’を約束したためだ。 チェ氏のように多国籍企業に対応無策で商圏を奪われる中小商人がさらに増えるという意味だ。その上、国内大企業を相手に適用されてきた中小企業適合業種や企業型スーパーマーケット規制方案なども自由貿易協定規定と衝突するという理由で無用の長物になる運命だ。キム・ギョンベ全国小商工人団体連合会会長は「国内大企業が中小業種を踏みにじるだけでは足りなくて、政府が事前準備・対策もなしに多国籍企業にすべての路地裏商圏を渡そうとしている」と批判した。


通商法専門家のソン・ギホ弁護士は「国家間で調整しなければならない権限を個別商人と企業に渡したため」とし「韓国政府が‘経済的需要審査’を通じて中小商人を保護する業種が何なのかを問い詰め、生存権侵害を防ぐ内容を自由貿易協定交渉に含まないことが問題」と指摘した。


ファン・イェラン記者 yrcomm@hani.co.kr


原文: https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/499267.html 訳J.S