国際通貨基金(IMF)が韓国政府に対し追加財政支出を勧告した。米国が主導する保護貿易主義の深化と12・3内乱事態が触発した政治的不確実性の拡大が経済成長を制約する要素として作用するだけに、追加財政支出など政策基調の変化が要求されるということだ。事実上、早急な補正予算の編成を勧告したものと解釈される。さらにIMFは、相続税緩和と金融投資所得税廃止などに対して憂慮の声を上げた。
IMFが先日公開した「2024年韓国年次協議報告書」を9日に確認したところによれば、韓国の今年の経済成長率の見通しは2.0%とされながらも、「韓国経済の不確実性が高まり、下振れリスクが優勢」と繰り返し強調されていた。IMF協議団は内乱事態前の昨年11月に韓国を訪問して経済現況を点検したため、内乱事態の衝撃による成長率見通しの下方修正は保留するものの、不確実性に対する警告状を投じたものとみられる。実際、IMFは4月に発表予定の「世界経済見通し」を通じて、韓国の成長率見通しを大幅に下方修正するとの観測も出ている。これに先立って、内乱の衝撃による民間消費鈍化などを確認した企画財政部と韓国銀行は、各々1.8%、1.6~1.7%という経済成長率見通しを提示している。
IMFは通貨・財政政策調整の必要性をシナリオ別に区分して指摘した。内需が回復しない、あるいはグローバル半導体需要の弱化で経済成長が予想以上に低迷するシナリオでは、基準金利をさらに早く引き下げるか、一時的な追加財政支援がなされるべきだとIMFは勧告した。中東における対立の高まりで原油価格が急騰し、グローバル供給ショックが現れるシナリオでは、財政を拡大するものの基準金利の引き下げは勧告から外した。物価上昇のリスクを念頭に置いたためだ。報告書は「韓国の相当な短期財政余力(fiscal space)を考慮する時、脆弱階層支援と雇用インセンティブ、家計購買力強化のための一時的な補助金拡大を支援することができる」として、追加財政支出の事業まで指摘している。関税戦争が本格化する3番目のシナリオでは、通貨政策と財政政策が全て「緩和的」でなければならないと提案した。金利を引き下げ、財政も拡大しなければならないという意味だ。
ただしIMFは「追加財政支援をしても長期的な持続可能性も考慮しなければならない」と強調した。これは急激な高齢化で財政政策の基盤が崩れる危険が高まっているためだ。IMFはその方案として「年金改革、財政準則採択、財政収入動員力強化、支出増加の合理化」などを提示した。この間、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が「健全財政」基調を強調し支出抑制ばかりにこだわったのとは異なり、IMFは歳入基盤の強化も必須な財政改革の課題として提示したわけだ。
このような脈絡でIMFは、相続税緩和や金融投資所得税廃止など「減税を通じたバリューアップ」の試みに懐疑的な見解も明らかにした。報告書は「税制インセンティブが株主収益率に及ぼす長期的影響は不明だ」として、「税制インセンティブの潜在的利益(株主収益増大)と費用(財政の持続可能性と租税公平性)を考慮し、慎重な検討が必要だ」と明らかにした。