原文入力:2012/06/03 (3092字)
←3日午後ソウル市内のある在来市場で市場商人が行き来するお客さんを眺めながら思いに沈んでいる。 シン・ソヨン記者 viator@hani.co.kr
[ニュースの深層] 私債のドロ沼をさ迷う自営業者
去る4月18日から31日まで警察は不法私債業者に対する大々的取り締まりを行った。 取り締まりが真っ最中だった時、1億ウォンの私債を借りた焼肉店主と3000万ウォンの私債借金をした花屋の主人が命を絶った。 2人は当局に申告する意欲を持てなかった。 市場で会った商人は「私債なしには商いはできない」と語った。 そのような商人がいる限り私債はなくならないだろう。
先月26日、ソウル、江北区(カンブック)K在来市場一帯には普段はばら撒かれている日掛け金融業者の名刺が見られなかった。 名刺を無差別にばら撒くバイクの音も聞こえなかった。 「泥棒どもめ、この頃政府が取り締まると隠れてしまった」 ある商人が話した。
当局の私債業者取り締まりが始まった直後の去る4月26日、K市場で花屋を営んでいたキム・某(55)氏が亡くなった。 3000万ウォンの私債を借りて使って借金の督促に苦しめられたキム氏は自ら命を絶った。 商人たちに金を貸した私債業者は先月21日警察に検挙された。 私債業者は近所に秘密事務室を構えて去る3年間に江北区・道峰区(トボング)・蘆原区(ノウォング)一帯の個人事業者や零細商人を相手に金を貸した。 彼らは最高年600%の利子を稼いでいた。 被害者は50人余りに達した。
元利金が雪だるま式に増え
借金督促に命を絶つ商人ら
600%の高利を得ていた私債業者も
K市場で家電製品を商うハン・某(50)氏は「バイクに乗って行きかう人を見れば歯ぎしりが出る」と話した。 ハン氏も殺人的私債金利のドロ沼に落ちて10年かかってようやく脱出した。 1997年の外国為替危機の時、店の運営資金が足りなくて銀行に融資申請をしたが、担保がないという理由で拒絶された。 その時ちょうど私債業者を知ることになって100万ウォンを借りた。 一日1万2000ウォンずつ100日間返す条件だった。一日でも遅れれば「金を貸すからそれで返しなさい」として私債業者が強制的に貸し付けた。 借金が増えただけ利子も上がった。 延滞の度に金を借りて元金と利子の返済が繰り返された。 毎日毎日稼いだ金で借金を返すことは不可能だった。 10年が過ぎた時は追加で使った私債を含めて借金が1億ウォンに増えていた。 結局、3年前に自宅を売って返した。 「その後は‘日掛け’という言葉を聞いただけで眠れません。」ハン氏が話した。 毎日返していく私債を市場商人は‘日掛け’と呼ぶ。
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使いたくない‘日掛け’を使わざるを得ないことが市場商人には起きる。K市場で豚足屋を営むチョン・某(50)氏は「家賃や肉の値段が滞る時には誘惑を感じる」と話した。 チョン氏は「私債業者を取り締まると言っても、庶民が銀行で金を借りられないことが問題」として「苦しい時に銀行が資金を貸して、景気が良くなればその金を返すようになれば良いのだが」と話した。
現実は反対だ。 景気が良ければ銀行はマイナス通帳貸出限度を高めてくれる。 しかし景気が悪くなれば貸出を中止して償還を督促する。 金融委員会などによれば、低信用等級(7~10等級)に属する債務者1人当りの平均信用貸出残高が今年1月基準で2649万ウォンで、2009年の2657万ウォンに比べて0.3%減った。 反面、貸金業の融資規模は2009年の5兆9200億ウォンから昨年12月基準で8兆7175億ウォンへ、債務者数は189万人から252万人に増えた。
自宅を売ってようやく終わった返済
"初めはたった100万ウォンで始まり
日掛けという言葉を聞いただけで眠れない"
まだ正確な実態が把握されていないが、低信用等級に分類された債務者の相当数は中小規模の自営業者であると推定される。 最近、中小企業中央会が全国の自営業者300人を対象に調査した結果を見れば、調査対象者の84.3%が借金をしており、平均負債額は1億1364万ウォンと現れた。 昨年一般世帯の平均負債金額である8289万ウォンに比べて3075万ウォン多い。 自営業者たちの月平均利子費用は94万ウォンに及んでいた。 この内、貸金業を通じて金を借りたケースも13%あった。 自営業者10人に1人は私債業者を使っているわけだ。 自営業者の借金はますます増えている。 中小企業中央会による調査の結果、‘元金を返せず利子だけを払っていたり、他から借りて返済していて利子が増えた’というケースが70.5%に達した。 専門家たちは自営業の規模が小さくなるほど私債に依存する傾向はさらに高まると見ている。 小規模自営業者が資金を融通する方法が私債以外にはない。
ソウル、東大門区(トンデムング)N在来市場でも去る3月、ある飲食店の主人が私債のために自ら命を絶った。 それでもN市場の商人の相当数が依然として私債を使っていると推定される。 この市場の商人に‘日掛け’を貸し付けているキム・某(53)氏は「私が50余店に日掛けをしているが、また別の日掛け業者(私債業者)が70余店に日掛けを貸している」と話した。 全体で800余の商人の中で15%程度が私債を使っているわけだ。
私債の肩を持つ商人
“銀行からは借りられない以上
どこで借りろと言うんだ”
景気変動に敏感なのは私債業者であるキム氏も同様だ。4年余り前の1億5000万ウォンを種銭にして‘日掛け’を始めた彼は、一時は100余店を顧客としていた。 しかし2年前から景気が悪くなり廃業する店が続出した。「その時、大損をした」とキム氏は話した。 危険負担が高まるほどキム氏が商人から受け取る利子も上がる。
それで市場商人は私債業者をののしりながらも肩を持つ。「カード貸し出しは一ヶ月以内に返さなければならないが、日掛けは三,四ヶ月かけて少しずつ返せて商人が多く使わざるを得ない」とN市場でアクセサリー店を営むパク・某(52)氏が話した。 不法貸付業者を捜査した江北警察署キム・ジュギョン知能チーム長も「‘銀行は金を貸さないから急場には暴利を出しても私債を使わざるをえない’として市場商人が私債被害に対する陳述を拒否するので辛かった」と話した。 公然と私債業者の横暴を申告すれば急場をしのげなくなるかと思って商人が恐れているということだ。
銀行の手が及ばない市場で自営業者と私債業者は互いに絡み合う関係のように見えた。 当局は不法貸金業の取り締まり期間に6400人を検挙し168人を拘束したが、今後私債が消えると信じる市場商人はいなかった。 取り締まりが終わった6月初めの週末、私債借金に追われた花屋の主人が命を絶ったK市場には再び日掛け業者のチラシがばら撒かれた。「一日の利子200ウォン」「信用不良者でも可能」「無担保即日貸出」等の字句が記されていた。 貧しい市場商人にその条件で金を貸すのは私債業者だけだ。 イ・ギョンミ記者 kmlee@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/535897.html 訳J.S