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‘封印解除’された天安艦、何が真実か

原文入力:2010-10-20午後06:13:03(2877字)
<封印された天安艦の真実>ハンギョレ出版・1万2千ウォン
20ヶのキーワードで天安艦事件を暴き
21日から毎日キーワード 一つずつ紹介

←封印された天安艦の真実

‘天安艦疑惑’を総整理した書籍<封印された天安艦の真実>が出版された。ハンギョレ記者らと市民団体・軍事専門誌・言論専門誌記者と活動家らが‘遮られている天安艦の真実’を探すために天安艦最終報告書発表後にも依然消えない疑惑を整理した。
国防部が去る9月13日に出した最終報告書は2010年3月26日夜に起きた‘天安艦事件’を "北韓の小型潜水艇が発射した重魚雷が水中爆発を起こし、天安艦を撃沈させた事件" として整理した。だが、最終報告書には国防部のこういう主張を後押しする証拠が珍しいと言って良いほどに含まれていない。

最終報告書は重魚雷を撃ったという‘北韓の小型潜水艇’がどんなものか特定できず、その重魚雷の爆発力(TNT換算時 350~500kg)と事件当日に発生した地震波の爆発力(リヒター規模1.5でTNT換算時 140~260kg)の矛盾も解明できなかった。さらに水中爆発時に必ず発生する高さ100m以上の水柱と関連した証言では‘操作’の臭いまで漂う。水柱を見ていないと主張する人の証言を、あたかも水柱を見たかのように変えたためだ。

天安艦最終報告書はこの他にも各種の矛盾でいっぱいだ。天安艦を両断するほどの魚雷が爆発したとすれば、乗務補助員らが "弾丸のように跳ね飛ぶ" という民軍合同調査団諮問委員の証言があるにも関わらず、最終報告書は‘ムルソー(※小説”異邦人”の主人公の比喩)’だ。爆発は天安艦の左舷で起きたが、スクリューは左側ではなく右側が曲がったことに対しまともに説明できない。船体についた吸着物は爆発物質でないという主張が出てくるかと思えば、閉回路テレビ(CCTV)は国防部が主張する事故時刻少なくとも4分近く早く切れた。事件発生場所に対する論難も絶えない。

国防部が‘北韓魚雷説’の決定的証拠と出した錆ついた魚雷推進体はより一層多くの問題を抱いているようだ。合調団がこの魚雷推進体のものだとし5月20日に発表した実物設計図がにせ物であることが明らかになり国民を驚かせたが、それは始まりに過ぎなかった。<ハンギョレ>が特ダネ報道したロシア、天安艦報告書要約によれば、ロシア調査団はこの推進体が「6ヶ月以上、水中にあった」と判断している。2ヶ月間 水中にあったと判断した国防部とは差がとても大きい。

いくら調べても国防部が出した天安艦最終報告書には "北韓がやった" という主張はあるが、その主張を裏付けるに足る証拠は極めて貧弱だ。別の表現をすれば、国防部は天安艦が北韓によって攻撃され沈没したという仮説を出したが最終報告書でもこれをきちんと証明できないわけだ。一言で言えば、天安艦と関連した真実は相変らず‘封印’されていると見られる。

それでも、李明博政府は仮説段階の‘北韓魚雷説’を既定事実化しながら、対内外政策を繰り広げている。対内的には‘北風追求’をして6・2地方選挙で勝利しようと思い、北韓に対しては開城工業団地以外の経済協力を全面中断させた。また、米国と西海で大規模軍事訓練を行うなど、明確に米国一辺倒の外交政策を繰り広げる。こういう姿に中国は警戒心を示しながら、山東半島で大規模正面対抗軍事訓練を実施することもした。中国に進出している韓国大企業らは中国政府が各種許認可を遅らせている現象が天安艦事件以後のわが政府のこういう偏向した外交政策と関係がなくはないと判断している。

現在の状況では天安艦が韓半島の安定を急激に揺さぶる要因になり得る。天安艦事件の‘真実’を巡り、韓半島周辺国らが他の解釈を出したことが大きい。さらに去る9月、ソウル大統一平和研究所が発表したアンケート調査によれば韓国国民も32.5%だけが政府の‘北韓魚雷説’を信じていることが明らかになるほど、この事件を眺める認識差が国内外を問わず大きい。

こういう認識差を示す一例が去る9月29日、国連総会に出席中のパク・キリョン北朝鮮外務省副相の発言だ。彼は「天安艦事件を利用して米国と韓国が韓半島とその周辺地域で大規模武力を利用した軍事的威嚇を行っている」と批判した。パク副首相はまた「南朝鮮当局は事件の真相に対する科学的で客観的な確認のために被害当事者である我々が提起した検閲団の現地派遣を頑強に拒否している」と天安艦事件に対する検閲団の受け入れを再度促した。だが、韓国は「北韓が天安艦を撃沈させた」という主張を公式化しており、北韓に対する大規模支援など政策変化を‘北韓の天安ハム攻撃謝罪’と連係させている。天安艦と関連して両者の間には決して越えることのできない川が流れているようだ。
このように認識差が狭まらなければ、何よりも葛藤が深刻化された時に仲裁に達するのが難しい。韓半島情勢が‘韓-米-日’と‘北韓-中‐露’の対立構図に組まれている中で、韓国、北韓と米国・日本・中国・ロシアが自分たちの利益を極大化するための行動をしながら、これを自分たちの天安艦解釈にあわせて正当化するためだ。多くの人々が天安艦事件の最大受恵者だと目星をつけている米国の歩みをこういう視角で説明している。中国もまた大きく変わらない。だが、お互いが利益を望む心を天安艦の封印に寄り添って隠すこういう構造では紛争と葛藤は必然的だ。

したがってこの本の企画意図の一つは、天安艦の‘真実’を確認する端緒を提供することにより、天安艦と関連した認識の間隙を減らし、それを通じて韓半島の不安定性が除去・緩和されるようにしようということだ。

本は3部に分かれる。まず1部では去る3月26日の天安艦沈没事件以後の国内外の流れを<ハンギョレ>記事を土台に継続的に調べた。1部記事を通じ、韓国、北韓と周辺強大国、そして韓国内市民団体に至るまで、天安艦と関連した活動主導者がどのように動き、また、どのような立場の変化があったのか大きな枠組みで把握できるはずだ。

第2部では国防部が発表した天安艦最終報告書の矛盾を本格的に集中解剖する。韓国政府が‘北韓魚雷説’等、まだ仮説に過ぎない主張を真実として通用させようと考え、どんなことが広がっているのか探ってみた。第3部では天安艦事件という大きな疑惑の中心で取材活動をしてきた筆者らの取材文を入れた。
ハンギョレe-ニュース部では今後<封印された天安艦の真実>で扱っている20ヶのキーワードを一つずつ要約紹介する予定だ。各種情報が乱舞する状況で、天安艦事件に対する一つの道案内となることを期待する。 /ハンギョレ出版・1万2千ウォン.

キム・ポグン<ハンギョレ>スペシャルコンテンツ部長

原文: https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/444730.html 訳J.S