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映画「82年生まれ、キム・ジヨン」100万突破…多くの「ジヨンの家族」たちの共感

登録:2019-10-28 06:39 修正:2019-10-28 08:54
「男女の問題ではなく社会全体の問題」 
 
「公開前に評点テロ・悪質なコメントなどが議論にも 
女性差別を解きほぐした『家族映画』に 
性別を超えた共感・口コミが増えて大ヒット」 
 
「葛藤助長? 理解を求める話」 
一部の先入観に「省察すべき」との声 
原作小説も販売冊数が増えて、再び関心
映画『82年生まれ、キム・ジヨン』が公開5日目の27日に観客100万人を突破し、大ヒットの突風を起こしている。この日午後、ソウル広津区ロッテシネマ建大入口店で観客が上映館に入っている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 「私の子、金のような私の子、玉のような私の子…」

 母(キム・ミギョン)が娘のジヨン(チョン・ユミ)を抱きしめてこう言った瞬間、劇場内のあちこちから涙ぐむ声が聞こえた。27日、ソウル永登浦区(ヨンドゥンポグ)のCGV汝矣島。比較的早い時間帯である午前11時に始まった『82年生まれ、キム・ジヨン』の上映館では、3分の2を超える席が埋まっていた。観客のAさん(46)は「観て、強く共感した。名節(お盆や正月に家族で過ごすとき)の時のシーンが特にそうだった。映画を観て、単なる男女の問題ではなく、社会全体の問題だと思った。私たちの世代は不平等でもそういうものだと思って暮らしたが、高2の娘はより良い世の中で暮らしてほしい」と話した。

 映画『82年生まれ、キム・ジヨン』が公開5日目であるこの日、観客100万人を突破して大ヒットの突風を起こしている。作家のチョ・ナムジュ氏のベストセラー小説を原作にした映画は、開封前から「評点テロ」に遭い、主演俳優たちが悪質なコメントに苦しむなど、話題と議論を同時に呼んだ。ネイバーのネチズンの評点は、大部分が1点または10点に分かれた。この日時点の平均は6.06だが、性別で見ると、男性2.21に対して女性9.50と大きな差を示している。しかし、開封後は映画に対する好評と支持が続き、評点テロを軽やかに越えた。映画を見た人だけ参加することができるネイバー観客評点は、この日時点で9.59であり、男性9.53に対して女性9.62と、ほぼ同水準である。

 女性が経験してきた日常の差別と悲しみを縮約したように見せてくれる映画であるだけに、女性の観客が強く共感している。CGVが公開日からこの日までに入った観客を分析した結果によると、女性が77%、男性が23%である。年齢別では20代38%、30代32%、40代19%、50代10%の順だ。20~30代の女性の観客が特に大きな反応を示すという話だ。彼女らは単に映画を観ることにとどまらず、周りに積極的に勧める動きも見せている。両親に映画チケットを買ってあげたり、SNSを通じて知人に観賞を勧める手法である。観客のチョン・ヒョチョンさん(29)は、「母の世代はひどい差別を経験しても認識さえできなかったことが残念だ。それで両親にも映画を見せてあげようとした」と語った。ツイッターでは、映画の宣伝文をリツイートすれば抽選で前売り券をプレゼントするイベントを一般人が先頭に立って主催することが、流行のように広がっている。

映画『82年生まれ、キム・ジヨン」の一場面=ロッテエンターテイメント提供//ハンギョレ新聞社

 女性差別というテーマを普遍的な家族の話に解きほぐしていったことも、大ヒットの要因に挙げられる。観客のキム・ジョンウンさん(34)は、「祖母、母方の祖母、実家の母、姑、小姑など、平凡ながらもそれぞれの時代と立場を象徴する女性の話が、大きく迫ってきた。父が弟だけをかわいがるエピソードも印象深かった。このような家族の話には、誰もが共感するようだ」と語った。大衆文化評論家のキム・ソニョン氏は、「原作小説を大衆映画の文法に合わせ、家族映画の感じで上手に作った。初めは女性だけが観る映画という先入観もあったが、家族映画としても感動的という口コミが出て、男性の観客も多く入っている」と説明した。

 原作より多くを純化して暖かい視線で描いたのにもかかわらず、一部の激烈な反対が出る社会の雰囲気を省察すべきだという声も出ている。コラムニストのイ・スンハン氏は、「映画はありふれた普遍的な話を入れた。あなたが男なのに周りにはそんな人生を過ごした女がいないと感じたのなら、周りの女性たちが、あなたのことを『話してみても理解できない人』と思って話をしなかった可能性が高い。信頼しない人に自分の苦痛を打ち明ける人はいない」と指摘した。評論家のキム・ソニョン氏も、「対立を引き起こす話ではなく他者の理解を求める平和主義的な話なのに、受け入れることができない状態になったということは、それほどバックラッシュ(社会・政治的変化に対して現れる反発心理と行動)が強いという意味」だと指摘した。SNSでは、この映画によりボーイフレンドと摩擦が起きる事例に関連して、「ボーイフレンドとずっと付き合うか別れるかを選ぶ尺度になる映画」であるなどの言及も少なくない。

 映画に対する関心に力づけられて、原作小説も再び高い人気を得ている。小説はインターネット書店のアラジンで週間ベストセラー第1位に上がった。去年3月以来1年7カ月ぶりである。イエス24でも週間第1位に上がり、教保文庫では第3位に上がった。本を出版した民音社は、「映画公開確定後から販売冊数がさらに増えて、累積123万部ほど売れた」と伝えた。24日にソウル広津区(クァンジング)陵洞(ヌンドン)のある書店で『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んでいた50代の会社員女性は、「映画が公開されるからとのことで、本を先に読みに来た。主人公は私より年齢は若くても、私と似た人生を過ごしているようで、共感した」と話した。

ソ・ジョンミン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/movie/914745.html韓国語原文入力:2019-10-27 21:55
訳M.S

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