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全州国際映画祭、開幕作に在日家族を描いた『焼肉ドラゴン』上映

登録:2018-05-04 10:15 修正:2018-05-04 18:27
第19回全州国際映画祭の開幕作『焼肉ドラゴン』 
在日同胞3世の脚本家・鄭義信の演出作 
苦しさの中でも希望を忘れない在日家族を描く 
「何度も演劇で公演した作品だが  
より多くの人たちに見てほしくて映画化」
全州国際映画祭の開幕作『焼肉ドラゴン』のワンシーン=全州国際映画祭提供//ハンギョレ新聞社

 「映画表現の解放区」をスローガンに掲げた第19回全州(チョンジュ)国際映画祭が3日に開幕し、10日間の大長征に突入した。全世界から46カ国240本(長編196本・短編44本)が観客を迎える今回の映画祭で、最も大きな話題を集めた作品は、開幕作である『焼肉ドラゴン』。日本の代表的な劇作家であり脚本家である在日同胞3世の鄭義信(チョン・ウィヨン)が自身の同名の演劇(2008)をスクリーンに移した作品だ。鄭監督自身の幼少時代の経験をもとに、韓国と日本、そのどこにも属しない在日韓国人たちの困難な人生と哀歓を繊細な筆致で描き出したという評価を受けている。全州では早いうちから完売を記録するなど、観客たちの熱い関心を集めた。

 『焼肉ドラゴン』は日本の高度成長期の1969年、関西地方の郊外の朝鮮人部落で「龍吉さんちのホルモン焼き(焼肉ドラゴン)」を営み、たくましく生きる在日韓国人家族の人生を取り上げる。

 主人公龍吉(ヨンギル)は太平洋戦争で左腕を失い、朝鮮戦争では妻を失った。故郷の済州(チェジュ)島へ帰ろうとしたが、「4・3事件」で、親兄弟をはじめ村人たちまで皆殺しにされて故郷も失った。その後今の妻に出会い、前妻との間で生まれた二人の娘と妻の連れ子の三女、妻との間に生まれた末の息子など4人の子どもを育てほそぼそと生きていく。しかし、事故で足が不自由な長女、結婚して1年で離婚の危機に面した次女、日本人の既婚男とつき合う三女、そして日本の学校でいじめを受け苦しむ息子まで、龍吉の家族はだれもが平凡に生きられない。悪いことは重なり、日本人から買った食堂まで国有地の不法占拠という理由で強制撤去させられる危機に追い込まれながら、家族の基盤は根こそぎ揺さぶられる。

全州国際映画祭の開幕作『焼肉ドラゴン』のワンシーン=全州国際映画祭提供//ハンギョレ新聞社

 映画は、欠陥だらけでそのために傷つきふらつく家族を暖かくユーモラスな視線で見つめる。「在日は矛盾のかたまり」、「片手には金、片手には涙」など、境界人であるしかない在日の身分の苦労を表現する台詞も多い。開幕作試写会後に開かれた記者懇談会で、鄭監督は「日本には在日という人たちが暮らしており、自分もそのように生まれ育った一人なので、一番うまくできる話だと思った。(このような素材を)よく知らない人も多い。だが、今記録しなければ忘れられる話だ。演劇ですでに何度も公演した作品を映画化した理由も、より多くの人にこの作品に触れてほしいという願いだった」と明らかにした。

 「小さなセットで撮影をして、演劇舞台を見るように家族の交流を身近にディテールまで見せたかった」という監督の意図にもかかわらず、演劇そのままをスクリーンに描いたような動線の少ない演技と演劇的な台詞はやや惜しい。だが、俳優たちの熱演が映画をいかしている。特に、龍吉役を演じた俳優キム・サンホの繊細な演技が光る。既婚者の男の子どもを持つ三女に「俺の分まで幸せに生きろ」と結婚を許し、現代史の屈曲を全身で受けてきた自分の生々しい人生について淡々と打ち明ける10分あまりの「ワンテイク」シーンは圧巻だ。キム・サンホは「他の(日本語の)台詞は短いので瞬発力と記憶力で解決したが、このワンシーンだけは7時間撮影した。『オーケー』の声に一人で歓声を上げた。本当に気を揉んだシーン」だと説明した。

 映画はいじめに耐え切れなかった末っ子が自ら命を絶ち、強制撤去で生活の場が崩れると、父龍吉が「無理やり戦争に連れて行ったんじゃないか、土地を奪うならこの腕を返せ、この腕を返せ。そして俺の息子を返せ」と泣き叫びハイライトを迎える。彼の涙を後にしてはじける万国博覧会の花火は、苦悩に満ちた在日の現実をいっそう哀しく映し出す。

 結局家族はばらばらなるが、映画は最後まで希望を語る。掘っ立て小屋の屋根の上に雪のように桜が散る中で、龍吉が言う。「気持ちいいな。こんな日は明日を信じられる。たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとええ日になる」と。

全州/ユ・ソンヒ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/movie/843171.html韓国語原文入力:2018-05-03 21:06
訳M.C

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