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少年は泣かない…少年囚のミュージカル挑戦記

登録:2016-12-01 02:44 修正:2016-12-01 07:45
金泉少年刑務所受刑者らのミュージカル「少年漂流記」公演 
一時は台本の内容理解できず、歌は難しいと抵抗 
出所後の悩みなど、少年囚のシーン入れてほしいとお願いも
金泉少年刑務所受刑者らが出演したミュージカル「少年漂流記」=写真パク・ヨンヒ提供//ハンギョレ新聞社

 28日、金泉(キムチョン)少年刑務所のミュージカル練習室。「俳優の少年たち」も「先生たち」も涙が止まらなかった。演出のタク・ホヨン氏(44)が「本当にありがとう。そしてとても憎い。君たちのように素直な子らと私が、なぜここで会わなければならないのか。棒があれば叩いてやりたい」と涙声で話した。その瞬間、少年たちも泣き出した。少年たちは泣いたが、悲しみの涙ではなかった。少年は泣かない。

 これに先立つ22日、19人の受刑者の少年たちは、刑務所の大講堂で親など260人の観客の前でミュージカル「少年漂流記」の舞台に立った。2013年に開始した少年受刑者の教育教化のための「ゼロキャンププログラム」の一つとして行われた公演である。4月から7カ月間汗を流した結果は、「少年たちも満足する公演」で幕を閉じた。29日、パク・ヨンヒ芸術監督(41)に製作の裏話と受刑者の芸術教育について聞いた。

 「200人ほどの受刑者の少年たちの中で、腕力で1、2、3位に上がる子らが皆入ってきました。最初のリーディングをする時、『お先真っ暗だ、大変なことになった』と思いました。国語の本のように読むうえに、会社員の役割、溶鉱炉の労働者の役割を全く理解できなかったのです。15歳の時から刑務所に出入りした上、暴力団や性売買斡旋のような仕事をしていたから当然です」

「少年漂流記」の製作を総括したパク・ヨンヒ芸術監督=写真パク・ヨンヒ提供//ハンギョレ新聞社

 台本は、恵化洞(ヘファドン)1番地6期の同人である作家のソン・ギョンファ氏が書き、少年たちの意見を受け入れて公演台本に少しずつ発展させた。舞台は出勤バスから始まる。分別のない青少年4人はバスの事故に遭遇し、訳も分からぬまま、大海原の真ん中に落ちる。そして、事故直前に救おうとした赤ちゃんを思い出し、どこかで漂流している赤ちゃんを探そうと孤軍奮闘する。

 「『グッドモーニングバス』という歌を見せたら、少年たちが本当にちゃんとできるのか自ら疑っているのです。自信がないためトイレに行く時も腕力でボス格のチョン○○(20)が合図したら行くような子たちでした。『歌は良いけれど、できない』と1カ月間ずっと抵抗していたので、私は「(諦めるのは)絶対にだめだよ」ときっぱり言いました。「毎日1センチずつ進めよう。ゆっくり進めば3カ月もすれば歌になるでしょう」と。そして少年たちの言葉を耳を傾けて聞きました。そうしてやっと少年たちが心を開いたんです」

 練習終盤の10月中旬には、1カ月分の練習計画を1時間単位できっちりと整理して少年たちに見せてあげた。「先生、本当に大変ですね」と少年たちがついて来た。これまでボス格のチョン○○がリードして練習について来たとすれば、もう中間級、最年少級まで共感するようになった。腕力序列4位のチョ○○(19)はタク演出に「先生は私の父と同い年だけど、他の子らが先生の言うことを聞かないとむしゃくしゃします」と言った。目もまともに合わせなかったその子が、その日、初めて目を背けなかった。

 ミュージカルの前半部と後半部には、イム○○(19)が出演する少年囚のシーンがある。少年たちが「自分たちの話」を入れてほしいとお願いした内容だ。最初の場面は出所を控えて2通の手紙を受け取るのだが、一つは暴力団の先輩から、もう一つはバリスタのロースティングマスターからだ。刑務官がどこに行くのか尋ねる。最後の場面ではバリスタを夢見てロースティングマスターを訪ねて原州(ウォンジュ)に向かう。ミュージカルを通じて出所後を考えるようになったのだ。

 パク監督は「受刑者に文化芸術教育が役立つというのはみんな感じています。少年同士の暴力・窃盗のような事故が減り、再犯率が著しく下がります。少年院や不登校の子どもたちのためのプログラムにまで拡大すれば良いと思います」と語った。今年3月、英国のBBCは、昨年12月研究結果を引用して「チーム・ロビンズの(米国カリフォルニア州刑務所)演技授業に参加した収監者たちの刑務所内の規則違反率、刑務所内のけんかが89%減少したという結果が出た」と報道した。文化芸術教育が必ず必要な理由だ。

 22日の公演が終わった後、チョン○○は「ここまで来るのはとても大変でしたが、諦めずに来られたのは両親のおかげ」とし、チェ○○(20)は「生まれ変わっても母さん、父さんの息子でありたいです」と話した。ハン・サンホ所長は「これまで矯正行政を行いながら、今日ほど感謝の言葉をたくさん聞いたことがない」とした。

 パク監督は少年たちと約束した。「私は約束を守る人、正直に答えられる大人として生きて行く。君たちが出て来たら私がチキンとビールをおごってあげる」

ソンジュンヒョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr) 写真パク・ヨンヒ提供
https://www.hani.co.kr/arti/culture/music/772645.html 韓国語原文入力:2016-11-30 21:10
訳M.C(2217字)