「京都の桜もワシントンのポトマック川辺の桜も韓国産」
韓日関係が冷え込んだ4月には決まってこうした記事が溢れる。独島(ドクト)問題が高じた2011年、慰安婦問題がこじれた今年も同じだ。
韓国と日本だけでなく米国など世界の路や公園に多く植えられる桜(厳密には王桜、日本名はソメイヨシノ)の原産地が済州島の漢拏山(ハルラサン)で、これが日本をはじめとして世界へ広まったとする主張は1960年代に生まれた。植物分類学界の元老パク・マンギュ元高麗大教授が東亜日報1962年4月17付に載せた文で「王桜は済州島の漢拏山で自生し日本に渡って彼らに愛され、米国にまで嫁ぎ愛されている」とし、1908年にフランス人神父タケ、1932年に日本人学者の小泉が漢拏山で王桜を採集し自生地を確認したことを根拠に挙げた。その年にパク元教授が率いた漢拏山の踏査では韓国人では初めて王桜3株を確認する成果をあげた。
現在まで発見された漢拏山で自生する王桜は約200株に達する。すでに半世紀以上にわたり「済州原産地論」が主張され、少なくない証拠まで提示されてきたのに論争が終わらない理由はなんなのか。そこには他の種類の桜と簡単に交配し、起源を明らかにするのが難しい桜の特性だけでなく、科学的な糾明を疎かにしたまま声高に主張ばかりする学界や政府、マスコミの責任が大きいとの指摘がある。
日本は韓国起源説に対抗してソメイヨシノの自生地を探しだすため全国をくまなく訪ねてみたが失敗し、誰かが交配して作った栽培種と結論づけた。ソウルの汝矣島(ヨイド)と慶尚道道の鎮海(チンヘ)を含む韓国の桜祭りの主人公は、すべて日本が園芸種で作ったソメイヨシノだ。一方で漢拏山の王桜は野生種だ。日本と韓国の王桜とソメイヨシノは形態は同じだが、自生地が漢拏山にしかないなら、済州の王桜は日本のソメイヨシノの元祖だと言うのに値する。ところが、こうした単純論理は科学的に多くの弱点がある。
なにより比較対象となる二つの桜の正体が完全に明らかにされていない。漢拏山の王桜の正確な起源もまだ分かっていない。日本のソメイヨシノにしても江戸彼岸と伊豆半島固有種の大島桜を数百年前に交配して作った種という有力な仮説があるだけだ。その上、種がそれぞれ独立して似た形態に進化した可能性もある。したがって韓国のものが日本に行ったのか、もしくは両国でそれぞれ誕生したのか簡単に結論を出す段階にはない。
最近になり、漢拏山に野生する王桜の誕生起源を明らかにした注目する研究がされた。成均館大生命科学科博士課程のチョ・ミョンスク氏と同大のキム・スンチョル教授は昨年11月、米国の権威ある『アメリカ植物学会誌』(American Journal of Botany)に載せた論文で、済州の王桜が江戸彼岸を母系にし、桜または山桜を父系にする自然雑種で誕生したことを核遺伝子と葉緑体分析を通じて明らかにした。
これで済州の王桜が日本からきた可能性は希薄になった。また、まだ断定はできないが済州の王桜が日本に渡った可能性もあると主張した。現在進行中の漢拏山王桜の父系が正確にいかなる種なのか、また、日本のソメイヨシノの両親種はどこから始まったのか明らかになれば、原産地論争は新たな段階に入り込むだろう。
キム教授は「韓国の研究者は韓国の王桜と日本のソメイヨシノが同種なのかどうかにだけ重点を置き、まだ一度も日本のソメイヨシノの両親種を含む研究をしてこなかったことが理解が出来ない」と話す。また、キム教授は「科学的な糾明と検証は粗雑にしておきながらマスコミの扇情的な報道ばかり目立つ」と批判する。
原産地を糾明する前に、日本がソメイヨシノを世界的な園芸種として開発する間、韓国は何をしていたのかというチャン・ジンソン ソウル大山林科学課教授の指摘も考えさせられる。
韓国語原文入力:2015-04-03 19:30