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歌曲 歌った口で “闘争”…闘士となった声楽家たち

原文入力:2009-04-15午後01:33:58
7年間 70万ウォン給与…‘歌う喜び’で耐えて来たが
ユ長官 “外国で事例がない” 嘘ばれて ‘恥さらし’
一部で “側近人事にともなう政治的犠牲羊” 指摘

パク・ジョンチャン記者,キム・トソンPD

←合唱団解体当日の3月31日、国立オペラ合唱団がソウル駅前でロウソクのあかり公演をお披露目している。 映像キャプチャー. キム・トソン ディレクター

ハンギョレ時事ドキュメンタリー<ハンキュー>がまた ‘キュー!’ しました。<ハンキュー>は私たちの社会を熱い雰囲気にするニュースの現場と率直な人生の現場にカメラが出動します。‘社会と人’が滲み出る映像で私たちの ‘今日’ をあれこれ、こまかく照らします。

<ハンギョレ時事ドキュメンタリー>‘解体決定 ’国立オペラ合唱団最後の舞台

“変わることがあるでしょうか。どこかでずっと歌っているでしょう”

花冷えの寒さが鋭くソウル駅広場に吹いていた。激しい風の中で掲げた‘ロウソクのあかり’のいくつかが危なっかしく揺れた。その前で分厚いジャンパー姿の男女声楽家たちが‘郷愁’ ‘愛しています’ ‘祝杯の歌’等の耳慣れたオペラ曲を合唱していた。広場に歌声がいんいんと響いた。

派手な照明も熱い客席の喝采もなかった。先月31日付で解体された国立オペラ合唱団の最後の舞台はそんな風に寂しく侘しかった。しかし現実に近づいた解雇に合唱団員たちはまだ凛々しかった。ソプラノ チョ・ウンヘ(32)氏は「解雇が実感できない」として「また復職して舞台に立つことができるという希望があるからそんなに心配はしていない」と話した。テナーウ・ピルミョン(34)氏も「私たちが解雇される最後の日だが、できることは歌しかない」と笑うだけだった。

オペラ合唱団最後の公演に涙を流す人々は別にいた。彼らを応援しようとロウソクのあかりを掲げた解雇労働者たちだった。ソン・某(40・ソウル江南区,開浦洞)氏は「解雇初日のまっ暗な記憶が思い出されて胸が痛かった」として「あの人々は明日すぐにどこへ行くのだろうか」と涙声で話した。

歌しか知らなかった人々が ‘路上の闘士に’

解雇される前までオペラ合唱団団員たちはどこででも歌を歌った。先月25日訪ねたソウル,瑞草洞のオペラ合唱団練習室。‘スローガンの代わりに歌いたい’という大字報に合唱団員たちの切実な心情がそのままにじみ出ていた。

練習室に団員たちが1,2人と集まってきた。2人集まればすぐ歌だ。誰かがピアノの鍵盤をたたけば一団となって和音を合わせた。テナー チェ・ジェヒョク(30)氏は「歌を歌えば慰めになり、舞台に立てば力が出る」として「私たちは音楽がなければ一日も生きられない人間」と話した。

一生舞台の上で歌ばかり歌う筈だった彼らが今は ‘路上の闘士’ に成っていく。見慣れない腕拍子も闘争歌ももう馴染んだ日常の風景になった。ある合唱団員は練習室の大字報にこういう文を書いた。「“不当解雇で大人に成っていくようだ。人を理解して他の人が処した現実を暖かい気持ちで眺めることができるようになった。」

“規定にないから解雇しただけ?”

発端は昨年7月、イ・ソヨン団長が新しく赴任した時からだった。イ団長は昨年12月「オペラ合唱団を解体する」と電撃宣言した。2002年から職制規定に存在しないオペラ合唱団を運営し膨大な人件費を支給してきたし、国立合唱団を活用して十分にオペラ公演が可能だという理由であった。7年間、‘70万ウォン練習生’として過ごし「正式合唱団員になることができる」という夢は散り散りに砕けた。年間60余回、大小のオペラ公演を消化し名実共に世界水準のオペラ合唱団に成長したという成果と ‘国立’ という自負心も一瞬にして崩れた。

キム・ソヨン団員は「声楽を専攻したことからして、勉強をしたことからして誤った選択ではなかったかと思いました」と当時を回想した。声楽家としての30年の人生は徹底的に正当でなかった。労働組合は生活の基盤の舞台に戻るための最後の選択だった。

←国立オペラ合唱団団員チョン・チャンヒ氏が3月31日文化部前で合唱の途中涙を流している。 映像キャプチャー. キム・トソンPD



ユ・インチョン長官 “外国にはオペラ合唱団がない”

合唱団解体の理由はとうてい理解できるものではなかった。予算は今年18%もさらに増えたのに、‘予算たわ言’を言っていたのに突然だった。7年間オペラ団が必要で合唱団を運営しておいて、今になって‘規定たわ言’を言うのであきれた。主務部署である文化体育観光部ユ・インチョン長官は「外国にオペラ合唱団自体がない」と卑劣な言葉も吐いた。

‘国立合唱団と併せる’という方案はさらに現実性がなかった。純粋合唱とオペラ合唱とは音楽的領域が違うばかりでなく、国立合唱団が1年に30余回の公演をしながら、60回を越えるオペラ合唱団の公演まで耐えられる筈がないということだ。

国内外でオペラ合唱団解体に反対する世論が沸き立った。文化芸術界要人を含め1万 3千人余りが“解体反対”に署名をした。フランスからは‘バスチーユ’合唱団,‘ラジオ フランス オーケストラ’団員らの支持署名が飛び込んだ。オペラ<蝶々夫人>公演のために韓国を訪れたイタリア ‘トゥリエステベルディ劇場’ 所属声楽家と製作者たちがオペラ合唱団集会を訪ねて「オペラ合唱団はヨーロッパで一般的に存在して、イタリアだけでも13ヶがある」と証言した。ユ長官の卑劣な言葉が正面からひっくり返った。

差し迫っていた文化観光部 “オペラ合唱団 民間に転換”

差し迫っていたのは文化観光部だった。3月27日パク・スンテ芸術局長が記者たちを呼び集めた。パク局長は「社会的働き口事業として民間業者が運営する新しいオペラ合唱団を作る」として「既存合唱団員もオーディションを通じて新しい合唱団に新入として入ることができる」と明らかにした。文化観光部の発表は直ちに反発に直面した。合唱団員たちは「規定にないから解体すると言ったのに、民間合唱団を作って私たちにまた入ってこいという話か」と首を横に振った。ブリーフィングに参加した記者たちさえ「既存のオペラ団にあった合唱団をなくしてまた一つ作って世論を揉み消そうとするのではないか」と問い詰めた。

←合唱団解体前日の3月30日、国立オペラ合唱団団員たちが最後の公演に備えた練習をしている。 映像キャプチャー. キム・トソンPD



‘調子合わせ人事’の犠牲羊…“前任団長の影を消すこと”

オペラ合唱団を解体しようとする理由がすっきりと明らかにならなくて政治的背景に関心が傾いた。ユ長官が傘下団体長人事を巡って左派清算発言の真っ最中だった時、前任チョン・ウンスク団長が退いた。辞退の表面的な理由はオペラ劇場火災事件の責任を問うことだった。しかしチョン前団長がムン・イクファン牧師の嫁であり、ノサモを導いたムン・ソングン氏の兄嫁でノ・ムヒョン政府に近いということが交替の隠された理由ではないかという陰口が広がった。

チン・ジュングォン教授は<オーマイニュース>寄稿で「国立オペラ合唱団を解体しチョン・ウンスク前任団長の影まで消すという考え」として「これは不必要な連座制」と一喝した。

イ団長はチョン前団長とオペラ団に一緒にいる時、キャスティング問題で葛藤を生じさせ飛び出した前歴もある。こういう理由で合唱団内外から‘側近人事の犠牲羊’という言葉が公然と出ている。

ある合唱団員は「ユ長官がコード人事を前面に出して公共機関構造調整をゴリ押しする過程でオペラ合唱団が犠牲羊になった」として「政治を考えもしなかったし、政治色を浮かべたこともない私たちが政治の影響を受けて解体される運命になるとはくやしい」と吐露した。

“1%でも希望があれば最後まで戦う”

‘70万ウォン練習生’から‘解雇労働者’身分に変わって半月。オペラ合唱団は今も凛々しく元気に過ごしているだろうか? 労組対外協力部長を受け持っているイ・ジョンサン団員に近況を尋ねた。オペラ合唱団員27人は相変らず国立オペラ団に出勤闘争を行い、国会と文化観光部前で1人示威も行っている。市民たちと共にするロウソクのあかり文化祭の街頭舞台にも立つ。表面的に変わったことはない。しかし他の解雇労働者同様にイ氏と同僚たちも広くて果てしない生計の壁と向き合っている。

1ヶ月70万ウォン稼いでいたが、それすら無くなったので家庭がある団員たちは1ウォンでも惜しい。オペラ団が練習室を閉鎖し安心して歌える所もない。

イ氏は「実際に路上に追い出されてみると、7年間こういう目に遭うために声帯が破れろとばかり歌を歌ってきたのかという挫折感が募る」として「音楽も重要だが、それより先に人は生きていかなければならなくてお金のために芸術も人も死にかかっているのが現実」と話した。

それでも復職をあきらめる気持ちは毛頭ない。「歌を放棄できなくて後輩たちに練習生身分と解雇者というレッテルを譲ることはできない」という負けん気はさらに強くなった。「私たちは過ちもなく正当だから、ただの1%でも希望があれば最後まで戦う。」

芸術まで‘経済論理’で一方的に整理解雇してしまう時代、若い芸術家たちが立つ場所は冷たい街頭しかない。‘街頭オペラ合唱団’の‘愛しています’は今日も鳴り響く。

「懐かしいあなたの歌が あなた私の胸の内を歌った人 懐かしいあなたの歌が 私のために歌ったその歌が 私のために歌ったその歌が~”演出=キム・トソンPD kdspd@hani.co.kr文=パク・ジョンチャン記者 pjc@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/349879.html 訳J.S