<花ハルモニ>, クォン・ユンドク 作・絵/四季・1万500ウォン
<非武装地帯に春がくると>, イ・オクペ 作・絵, /四季・1万500ウォン
<へいわってどんなこと?>, 浜田桂子 作・絵、パク・ジョンジン 訳/四季・9800ウォン
<京劇が消えた日>, 姚紅(ヤオホン) 作・絵、チョン・スジョン 訳/四季・1万500ウォン
<ぼくのこえがきこえますか>, 田島征三 作・絵、ファン・ジニ 訳/四季・1万500ウォン
<平和の価値入れた絵本>,12冊完成目標に意気投合
<5冊目出版日 一堂に集まり>, “私たちが政策を変えることはできないが 平和の声を知らしめることはできる”
「戦争は決して過ぎ去ってしまった過去のことでない。いつでも、また起きかねない、今現在の問題だ。絵本もそのような気持ちで作った。12冊すべてが完成されても戦争がなくなりはしないだろう。しかし、互いに会い、よりよく理解することになれば、状況が良くなるのではないか。7年前、初めてソウルに来て平和絵本の企画を提案した時は、半信半疑で確信できない点もあった。だが、今は私たちが本当に友情で一つになった。このように共同作業を続けていけば、(いつかは)戦争がなくなると信じている」(田島征三)
「良い企画だった。このような事態(最近の韓中日領土紛争と戦争危機)が起きないよう願っていたが。今、私たちの力は弱い。しかし、作業を続けていかなければならない。どれくらいできるかは分からないが、続けていかねばならない。私たちが行うことは、政府の政策ではできない、人の心を変える事を可能とすると思う。戦争問題は国家の次元のことだから解決しにくいが、人々の心を少しずつ変化させていけば、道が開かれるだろう」(姚紅)
「各国の事情が異なり、衝突する問題は1、2種類ではないが、私達で相談すれば、うまくできるという確信があった。お互いの問題を知るようになり、意見を調整しながら、どうにか本を作り出せるよう努力してきた。私たちの作業の意味はごく小さいと思われるかも知れないが、決してそうではない。本が出版されれば、多くの子供たちが見て、呼応するようになるでしょう。そのような彼らが育てば、多くの問題を解決できることになるだろう」(クォン・ユンドク)
2005年10月、近代日本の東アジア侵略と清算できない過去の歴史を恥じる日本の作家4人が、平和の価値を盛り込んだ絵本を韓中日3か国の作家が共に作ろうと、韓国の作家に提案した。2年後の2007年、中国・南京に集まった3か国の作家は、1週間の討議の末に史上初めてのその作業を推進することに合意した。それ自体だけでも大変な成功だった。
しかし、現実は決して平坦ではなかった。何回もの出会いと討論、数えられないほどの電子メールでの議論を経た後の2010年、13才の時に性的奴隷(日本軍慰安婦)として引きずられて行き、50年ぶりに地獄の苦痛を吐き出したシム・タリョン ハルモニの話を盛り込んだ初の作品「花ハルモニ」が出版され、引き続いて、休戦ライン付近を徘徊する失郷民のおじいさんの恨と希望を盛り込んだ「非武装地帯に春がくると」が出た。昨年には日本の作家の浜田桂子が描いた『へいわってどんなこと?』 、中国の作家の姚紅(ヤオホン)の『京劇が消えた日』のハングル翻訳本が出版された。
そして9月20日、戦場に出て行き死んだ兵士の魂の絶叫を盛り込んだ田島征三の『ぼくのこえがきこえますか』が全12巻が予定されている平和絵本の5番目として韓国で出版された。
ちょうどその日、今までに出版されたこれら5冊の作者と出版を控えている『チュニというあかちゃん』のチョン・スンガク、『ともろこし』のキム・ファニョンなど7人の作家が、ソウル南山の‘文学の家’で四季出版社が主催した平和絵本ブックコンサートを開いた。
「昨年4月、『京劇が消えた日』『非武装地帯に春がくると』『へいわってどんなこと?』の3冊の日本語版が日本で同時出版された。3・11東日本大震災と福島原発事故の直後だったが、大きな関心を集めた。新聞と雑誌など日本全国の60以上のメディアに記事が掲載された。珍しいことだ。平和絵本の企画自体に対する関心が大きかったし、出版された本に対する読者たちの反応も良かった。好意的な批評も多かった。 個人的に多くのインタビューと講演要請も受けた」(浜田桂子)
日中戦争が起きた1937年、‘南京大虐殺’の野蛮が強行された中国・南京の秦淮河の川岸に住んでいて被害をこうむったお母さんと隣人に関する記憶を、当時、砲火の中に消えて行った京劇に結び付けられた思い出を通じて描き出した『京劇が消えた日』の作者の姚紅は、『へいわってどんなこと?』が中国でも出版されたと述べた。「中国でも反応が良かった。インターネット掲示板などに書き込まれた書評や討論文などが上位にランクされた。『京劇が消えた日』は文学賞を受ける慶事まで重なった」『花ハルモニ』は、本の中に入っている挿絵(‘日本軍慰安所が確認された所’)の慰安所の分布地図が公式地図と違うとの理由で中国当局が修正を要求したために、まだ出版できていないと述べた。
『花ハルモニ』は日本でも、まだ出版することができてなかった。2010年に出版される時から、他の11冊はわからないが、この本だけは日本での出版が難しいとの話を聞いた。この本を出版することにした日本の出版社は、日本軍性的奴隷という敏感なテーマを扱ったこの本が日本で出版される場合、右翼のテロの標的になるかも知れないとして、最後に保身を図った。最近、領土紛争と、これを契機に日本軍性的奴隷は事実でなく虚構だと主張している右翼政治家の安倍晋三元首相が再び野党第一党の自民党の総裁に選出され、同じく右翼の橋下徹大阪市長の‘日本維新の会’の勢いが強力な今、事情はさらに難しくなっている。もしかしたら『花ハルモニ』のこのような受難こそ、近代の誤りを清算できないまま新しい危機へと突き進んでいる東アジアの混沌と愚かさを示す、もう一つの指標かもしれない。
しかし、そうであればあるほど、平和に向けた作家の意志は、かえってより一層固まり、作業には速度がいっそう加わるようだ。
「今、国家の論理、政治の論理が正面から衝突している。私たちの一人一人は、それぞれ国家に属しているが、平和絵本の企画を通じて平和を愛する市民として会っている。これが今のような国家間の対立の中に、より大きな意味を持たせられないだろうか。私たちが国家の政策を直接変えることにはできないが、他の声があることを知らせることはできる。それが私たちができる仕事で、またするしかない。平和を愛する様々な数多くの人々がいることを、見せるしかない」(イ・オクペ)
」過去6年ほどの間、平和絵本の作業をしてきた。民族と国家を前面に出してはならないということを、その短くない期間を通じて理解することになった。作業を通じて、お互いにもっとよく分かり合えるようになり、共に成長するでしょう」(キム・ファンヨン)
「沸きかえった雰囲気に巻きこまれてはいけない。こうした時であるほど、自分の目で冷静に事態を眺めなければならない。 私たちの作業は戦争の苦痛をなくさなければならないということに共感する人々が、一人でもより多くなるようにすることだ。歴史を直視しなければならない」(浜田)
「5年前に初めて会った時は、互いによく分からなかった。頻繁に会うにつれ、だんだん暖かくなった。だが、そうはいってももう一方では友人関係がこわれないだろうかと、いつも緊張して心配していた。簡単ではないことをうまく進めてきたクォン(ユンドク)先生の役割が重要だ。私たちが語る平和は、(国家や政府のような)他の領域では不可能かも知らないが、私たちが協力すれは、やり遂げることができる」(姚紅)
ハン・スンドン記者 sdhan@hani.co.kr
韓国語原文入力:2012.09.28 19:23