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「東アジア対立解消するには韓中日『常識ある市民』連帯必要」

登録:2012-10-02 16:49 修正:2013-01-29 10:56

原文入力:2012/09/27 20:32 修正:2012/09/28 20:29(3891字)
←姜尚中日本東京大学教授(右側)と韓相震(ハン・サンジン)ソウル大学名誉教授が27日午前、ソウル冠岳区中民社会理論研究財団で東アジアの未来について話を交わしている。 キム・テヒョン記者 xogud555@hani.co.kr

「東アジア領土紛争」関連
韓相震-姜尚中教授対談


独島と尖角諸島をめぐる韓国・中国・日本の間の対立がいっそう激しくなり、東アジア全体が荒波に落ちている。東アジアは果して、どうやってこの問題を乗り越え、新しい未来を作ることができるのだろうか? 27日、ソウル冠岳区にある中民社会理論研究財団で韓国の社会学者である韓相震(ハン・サンジン)ソウル大名誉教授が東アジア共同体構想を鍛えて来た在日韓国人政治学者の姜尚中東京大学教授に会い、これに関して話を交わした。中民社会理論研究財団の招きで訪韓した姜教授は、26~27日、財団とソウル大アジア研究所のセミナー・講演に参加した。

韓相震ソウル大教授

国家対立はあるが、「意識ある」市民は数がかなり多い
市民社会 定期的な集まりを通じて組職化を


姜尚中東京大学教授

安部晋三-朴槿恵浮上から見えるように
両国共に強い「国家中心的思考」克服至急


←韓相震ソウル大教授

韓相震(以下、韓) 現在、東アジアに立ち込めた暗雲が容易に集まることになりうるか? 一次的な原因は、アジアで近代化に先に成功した日本が、近代化の過程に伴ったおびただしい国家暴力の問題をきちんと認識していないということにある。そこに韓国の李明博大統領が独島訪問、日王謝罪要求発言などで引き金を引き、連鎖的な波長効果が生じている。東アジアの未来に、それでも頼れる手があるとすれば、国家権力の次元ではなく「常識を備えた市民たち」がお互いに理解して励まし、国家権力を自国中心ではなく東アジアという広い枠内で解釈するよう、協力することだと思える。

姜尚中(以下、姜) 韓・中・日3国の近代化過程には、国家中心主義の意識が深く根付いている。東アジアの場合、市民社会を基盤として国家が形成されたのではなく、外部からの圧迫に応じて国家を形成することを先に行い、その上に市民社会と民主化が入って行ったからだ。東アジアの市民社会は、かなり弱い。

←姜尚中東京大学教授

 韓国と日本の間には、すこし差がある。韓国では力強い学生運動を経験した世代が社会に進出し、改革を好む立場を示しており、インターネットのような水平的・双方向疎通革命とかみ合っている。大衆の脱政治家現象が市民社会の力で克服されている過程だ。現在、与党と李明博政権に嫌悪を感じながらも、民主党を支持しない懐疑的な中間大衆がおり、彼らが脱政治家されると非常に危なくなる。 したがって代案を捜そうとの必死の動きが市民社会から出ており、それが「安哲秀効果」として現われていると思う。

 日本では8月25日、安倍晋三が最大野党である自民党総裁に選出された。韓国では「保守対リベラル・改革」という明らかな戦線があり、戦線を中心にして与野党が競争するが、日本政治ではリベラル・革新・進歩などと呼べる勢力が非常に弱体化している。したがって、韓国では「過去の歴史をいかに乗り越えるか」、「今と違う新しいフレームを組むか、そうではなければ、従来のフレームを維持しようか」などの幅広い選択が可能な一方、日本では「もう少し成長するのが可能だろうか」、「市民たちが安心して暮すことができようか」のような、同じ国家を中心軸におく狭い選択肢のみがある。

 姜教授は、日本の保守的な政治勢力が大衆の不満を利用して「戦後体制から脱しよう」との動きを促し、これが憲法改正や集団的自衛権強化につながる可能性を憂慮している。しかし、日本の「常識を備えた市民」が、そのような試みを支持するだろうか? 最近、私は、ソウルと北京にいる市民を相手に実施した調査で、日本の過去の歴史の清算と原子爆弾被害に対する認識を関連付けてみた。日本が間違ったからアメリカの原子爆弾使用は正当だと見る「懲罰的正義」視線と、これと反対に日本は間違ったが原子爆弾の使用は不当だったと思う「無条件思いやり」の視線が現われた。懲罰的正義の見方を持った市民がもっとも多かったが、無条件の思いやりの見方を持つ市民たちも少なくなかった。国家間に対立があっても、市民の立場で原爆に受けた傷を理解・配慮し、それを治癒する過程に参加することができる潜在力を持つ東アジア市民が少なくないという事実に非常に励まされた。

 日本はドイツと異なり、「被害者」という認識から脱することができなかった。ドイツは1960年代の高度成長期に、若者を中心に歴史に対する問題認識を大きく育てながら、これを乗り越え、このために「敗戦、すなわち解放」という認識でノルマンディー上陸作戦記念日を連合国と一緒に祝う。しかし日本では、敗戦は相変らず「屈辱の日」だ。戦後東京裁判にはアジアが参加することができず、植民地支配に対する異議申し立て行われるようにはできなかったし、60年代の高度成長期にも、新マルクス主義を掲げた左派の動きが、過去の歴史克服より先に進んだ。また、戦争の記憶が徐々に社会的教育の段階へと移行につれ、記憶を捏造して改め直す現象まで生じた。

 今日の日本が形成された過程にはさまざまな要因があるが、 構造的にはアメリカの政策、特に冷戦政策があまりにも大きな影響を及ぼしたと思う。ソ連を牽制して日本に独占的な影響力を行使したがったアメリカの政策は、東京裁判で帝国主義犯罪が言及されることを不可能にしたし、日本を力強い連合国にするために、保守勢力の立地を強化させた。こんな状況の中で、日本政治はますます保守化され、中国の浮上を迎え、周辺国との認識の格差がますます広げられている状況だ。

 東アジアでアメリカのヘゲモニーが弱体化するにつれ、韓国は「アメリカ・中国と共に手を取り合い、国家安保と経済成長を同時に追い求める」と思うほどに選択の幅が広くなった。このような状況は、市民社会が冷戦・反共イデオロギーから脱するのに影響を与えた。一方、国家と個人の距離によって人間の価値が決まる日本では、「サイレント・マジョリティー」の声が表面化されない。国家の誤った電力政策により民間人が大きな犠牲を払ったのに、強い反対も抵抗の声も出ない福島原発事故が代表的な事例だ。東アジアの内部で女性の人権に対する問題意識がより強くなり、多くの国々の共同の調査、証言の採取などが行われ、これを通じて東アジアの戦争の記憶に対して、各国がお互いを理解するきっかけが作られなければならない。国境を越えた市民社会の連帯が必要だ。

 全面的に同意する。保守集権体制は市民の生活とほとんど無関係なイデオロギーや領土などの問題を、政治的アジェンダと見なさせる。これと異なる市民社会的アジェンダの設定のためには、他国の「常識を備えた市民」または「サイレント・マジョリティー」がいかなる人々で、どんな考えをしているのか、お互いに理解しなければならないようにする必要がある。韓国・日本・中国の3国の市民がお互いに、どんな考えをして相手をどう眺めているのか定期的に調査してキャンペーンに結び付けさせる「東アジア市民バロメーター」のようなことを一緒につくってみるのはどうだろうか?

 おもしろい提案だ。しかし、国家と政府が市民社会を活性化するか、阻害するか、市民社会に入って来て市民社会たちを序列化するとか、系列化することはないか、注目しなければならない。日本で自民党総裁になった安倍晋三の外祖父は岸信介であるように、韓国の大統領選挙候補である朴槿恵の父親は朴正煕だが、それぞれ日本と韓国で国家中心主義に土台を置いた戦後体制を形成した中心人物だった。もちろん岸・朴正煕の政治が今日また繰り返されることはないが、安倍と朴候補から彼らの遺伝子(DNA)が感知され、相変らず韓国と日本では国家中心主義的思考が強い。

 「常識を備えた市民たち」は政治的に大きい影響を及ぼすことができないとしても、粘り強く進化している。政治的に表現されない彼らのエネルギーを組職化できず、適切な呼び方をできないのが問題だが、その潜在力ははっきりすると思う。「東アジア市民バロメーター」はそれを組織して名づけようというのだ。

 故金大中大統領は「行動する良心」と言った。韓教授が言った「常識ある市民」は、まさに彼の行動する良心を示すのではないかと思う。一人一人が「行動する良心」を持った人として、正確に自分の意思を表現して行動したら、あと市民社会の発展する可能性があると思う.

整理/チェ・ウォニョン記者 circle@hani.co.kr

韓相震(ハン・サンジン)ソウル大名誉教授は、ソウル大社会学科を卒業後、アメリカ南イリノイ大学で社会学博士の学位を得た。ユルゲン・ハーバーマスのような批判社会理論に精通した社会学者として、中間階級の力量と申し立てに注目した「衆民理論」を出した事がある。 2010年ソウル大を停年退任した後、「中民社会理論研究財団」を導いている。

姜尚中東京大学教授は在日韓国人2世で、日本早稲田大で政治学博士の学位を得た。1998年大韓民国国籍者としては初めて東京大学教授になり、幅広い著述活動と大衆講演で日本で最も注目される批判的知識人に挙げられている。著作に「オリエンタリズムを越えて」「在日姜尚中」「悩む力」などがある。

原文:https://www.hani.co.kr/arti/culture/religion/553756.html 訳 M.S