原文入力:2012/05/25 20:51(2681字)
相対的貧困地域 米国 内陸
‘富者のための政策’共和党 支持
経済は隠して倫理イシューを掲げ
右派、‘文化戦争’に勝ったため
米国の進歩的歴史学者でありジャーナリストであるトーマス・フランクが投じたこの質問は韓国社会にもそのまま適用できる。 先日<ハンギョレ>世論調査で自身の政治指向を‘保守’と答え総選挙時にセヌリ党に投票した比率は自らも経済的‘下層’に属すると考える人々が中・上層よりはるかに高かった。
←<なぜ貧しい人々は金持ちのために投票するのか?>トーマス・フランク著、キム・ビョンスン訳/ガラパゴス・1万6000ウォン
1990年代以前まで進歩勢力と民主党の票田だった米国大陸中央部のカンザス州は今共和党保守右派の牙城になった。 カンザスでいったい何があったのだろうか? この質問が<なぜ貧しい人々は金持ちのために投票するのか?>の原題(What’s The Matter With Kansas)だ。 4年前、民主党候補バラク・オバマが大統領に当選したがカンザスは相変わらずだったし、米大陸中部を中心にした広大な内陸州で共和党が勝利した。 その結果、米国の地図は内陸の共和党(赤色)と東西沿岸部の民主党(青色)にはっきり分かれた。‘二つの米国’という言葉が再び広く知られた。 4・11総選挙後、韓国の地図もまた、セヌリ党支持の赤い東側と西側に2分された。
米国内陸州は相対的貧困地域だ。 なぜその地域の多数の有権者が減税と福祉縮小、民営化、規制緩和などで貧益貧富益富を助長する新自由主義政策信奉者集団である共和党を支持するのか? 彼らはなぜ見当違いの標的に怒りをぶつけるのだろうか?
それは中下層の難しい経済現実を隠して彼らが自分たちの階級的実体を裏切る階級的アイデンティティ、すなわち転倒した階級意識を持たせることに成功した共和党の‘文化戦争’のせいだと著者は分析する。 そして民主党の戦略失敗も見逃すわけにはいかない。
この本を見れば、ジョンソンカウンティとショーニー・ウィチタなど本来民主党の票田だったカンザス人口密集地域中、下層ブルーカラーが共和党支持に変わり始めた契機は堕胎反対運動だった。 共和党右派が引き込んだ保守キリスト教右派は堕胎反対、進化論教育反対、同性愛反対、幹細胞研究反対、生態主義と水道水フッ素化反対などのイデオロギー攻勢を繰り広げ、これは中下層の経済的困窮という現実を彼らの脳裏から消して米国社会の争点を道徳・倫理論議に追い込んだ。 ラッシュ リンボのような極右放送人と<ウィークリースタンダード> <フォックス> <ワシントン タイムズ>等のネオコン宣伝紙だけでなく<ニューヨーク タイムズ> <ワシントン ポスト>等の主流新聞・放送も加勢した。 この媒体に登場した論客、彼らに資料や論拠を提供した数多くの研究所と財団・シンクタンク・大学・雑誌・新聞・出版社を共和党右派は1960年代から大企業の資金を大挙動員して文化戦争の武器として集中支援して育てた。
紡織工と製鉄所労働者、美容師のような普通の人が、菜食してワインと‘ラテ コーヒー’を飲み新しいファッションを先導する名門大出身の批判的知識階層を優秀なフリをするいけ好かない自由主義者(リベラル)と認識して、階級の敵と誤認することになったのもこの文化戦争のためだ。 彼らは自分たちをビールも飲み銃器を所持して教会に熱心に通う愛国的で素朴で善良な米国人と規定した。 右派が注入した典型的な共和党員マインドだ。 彼らは若干は快楽主義的で退廃的なハリウッド流文化とカバンのひもを長くした者たちを社会の寄生虫と見なし彼らとの戦争を義務と感じた。
自らを迫害される犠牲羊として設定したこの保守反動戦士らは左派から習った手法、すなわち“経済抜きの左派世界観”で武装し‘聖戦’を行っているということだ。 リベラルの批判的リアリズムを無神論や自由主義的偏見と罵倒する反知性主義が広まった。 すぐに‘従北’と‘アカ’を持ち出すわが国の社会保守反動の戦略もこれと似ている。 重要なことは、右派が権力を奪還するために昼夜を通して新しい戦略・戦術開発に資金を注ぎ込み現場に走って行ったということだ。 今や多数の労働者は自分たちの富を奪っていった資本家と医師・弁護士・牧師を友軍と感じている。 大企業は国立公園を競売にかけ、高速道路・鉄道の民資化を推進し、水道水など公共事業の民営化まで押しつけている。 彼らの貪欲を制御した‘ニューディール体制’はほとんど解体された。 私たちの社会もこれを模倣するように似通ってきている。
企業と保守巨大教会の癒着は中下層の暮らしが不安で富益富貧益貧の両極化が進行されるほど、文化が堕落すればするほど、さらに強固になり、より一層大きく繁盛する構造だ。 暮らしが疲弊されるほどに人々は慰安を求めるために教会に走って行くのであり、教会が繁盛すれば彼らと手を握った大企業も繁盛する。
これに対し対策なしに傲慢に振る舞った民主党とリベラルは伝統的支持者との適切な関係を結ぶことに失敗した。 ブルーカラー有権者を捨てた彼らは代わりに自由主義的指向のホワイトカラー専門家たちを引き込むことに力量を集中し、企業らに熱心に求愛した。 彼らが労働組合より多くの選挙資金を出したためだ。 彼らは‘階級闘争’を忘れた。 共和党よりほんの少しだけ先んじていれば、どうせ他には行き場のない中下層労働階級が自分の側を離れはしないと見て二股をかけた。 ニューディール以来、数十年間の戦いを通じて積み重ねた進歩的価値と制度を守ることより、ひとまず権力をにぎることがさらに重要だったのだ。 そして彼らは高等教育を受けた都市の若い専門職従事者を示す‘ヤッピー族’らを得た代わりに、広範な伝統的支持者を失った。 民主党の二股かけで支持者はどこに並べばよいか混乱に陥り、1950年代に38%まで上がった労組組織率は9%台に急落した。
共和党の新自由主義政策が席巻した米国中西部内陸は今や民主党とリベラルだけが没落したのではなく、地域経済と社会が急速に壊れ一部では空洞化が進行しているとこの本は語る。
ハン・スンドン記者 sdhan@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/534719.html 訳J.S