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[土曜版] 舎堂洞(サダンドン)撤去民 家族、4代にわたる‘貧困の記録’

原文入力:2012/05/18 21:0(2129字)

←<舎堂洞(サダンドン)+25-貧困に関する25年の記録>チョ・ウン著/もう一つの文化社・2万ウォン

都市貧民 25年間 追跡 報告研究者までも研究対象として階級・ジェンダーなど社会学的省察

 ‘舎堂洞(サダンドン)’は‘上渓洞(サンゲドン)’と共に町内の名前としては国内社会科学論文に最も多く登場する。 撤去、都市再開発、住居実態などの関連語を見れば、その理由が‘貧困’にあることが分かる。 元来は京畿道(キョンギド)であった舎堂洞は忠武路(チュンムロ)、明洞(ミョンドン)をはじめとするソウル市内‘不良住居地’撤去民を定着させるために1965年ソウルに編入された。 しかしここに貧しい暮らしの場を設けた人々は1980年代中盤に再び都市開発により追い出され撤去民とならざるを得なかった。

 社会学者チョ・ウン東国(トングク)大教授は1986年頃、撤去・再開発研究プロジェクトを遂行するため舎堂洞に入ってきてチョン・クムソン ハルモニ一家に出会った。 北側から下ってきたチョン・クムソン ハルモニは中区(チュング)良洞(ヤンドン)に暮らしていたが追い出され撤去民として舎堂洞に定着した1世代住民だった。 チョ教授はチョン・クムソン ハルモニと息子イ・スイル氏、当時まだ子供であったソン・ヨンジュ、トクチュ氏と孫娘のウンジュ氏で構成されたこの一家が都市貧民の‘類型的事例’だと考えた。 撤去を控えたハルモニ一家が上渓洞の賃貸アパートに移ると根気強く彼らに会って追跡研究を始めた。

 当時7才だった末孫のトクチュ氏は今年33才になり、チョ教授は定年を迎えた。 <舎堂洞+25-貧困に関する25年の記録>は去る25年間、根気強く会ったこの家族に関する記録であり、研究者自身と社会学研究に対する省察的記録でもある。 現場研究助教の日誌と数多くのメモとインタビュー、録音、映像など25年間に重々積み上げられた記録が本の土台になった。 出会いが22年目になった年には<舎堂洞+22>という映像物も作ったことがある。

←再開発によって撤去される前の1986年頃に写真収められたソウル、舎堂洞‘不良住居地’の様子。チョ・ウン東国大教授はこの時、ここで会ったチョン・クムソン ハルモニ一家と25年間会うことによって貧困に関する研究を進め、その中で‘新しい社会学’を苦悩してきた。 もう一つの文化社 提供

 4代にわたるチョン・クムソン ハルモニ一家の話は‘貧困の相続’を再確認させる。 賃貸アパートに移った一家はまた別の貧困地域である上渓洞で依然として貧困と共に生きている。 フィリピンから来た妻を迎えたヨンジュ氏はテコンドー師範、ボイラー修理、肉体労働などを経て、今は環境美化員になる夢を見ている。 聴覚障害があるウンジュ氏は子供3人の母として決まった働き口を得られず借金に苦しめられる。 監房にも行ってきたトクチュ氏は偶然に得た‘スポーツTOTO’当選金を元金にしてヘルスクラブの運営に挑戦したが、未来がそれほど明るくは見えない。

 しかしこの本は単に貧しい一家に対する追跡報告書には留まらない。ハルモニ一家だけでなく、研究者、研究助教なども全てが研究対象だ。 チョン・クムソン ハルモニは自身の母親と、息子のスイル氏は自身と、孫・孫娘は自身の子供たちと同じ世代だが、チョ教授はその事実をかなり後になって新たに悟る。 彼はハルモニ一家が健やかに暮らすことを望みながらも劇的な事件がどうして起きないのかと悩む二律背反に自ら驚く。 客観的観察と介入の間で苦しんだりもする。 概して中産層である研究者らと、研究対象である貧困層一家の間にはあまりにも異なる階級・ジェンダー意識の差が今なお残る。

 著者はこのような分裂を縫い合わせたり統合せずに、一つの大きな‘風景’として見せるだけだ。 映像まで活用した‘現実の再現’と25年の時間を込めたのも‘分厚い技術’に執着したのもそのためだ。 人類学者オスカー ルイスがメキシコ貧民家族を追跡して出した<サンチェスの子供たち>を念頭に置いたという。 このような作業は既存社会学的方法では表わしえなかったものどもを表わす。 貧しい人々が自ら語る人生、研究者である自己の省察などだ。 著者は「人間と社会という人文学的対象を自然科学的方法で解説することができるかという悩みがこのような作業を可能にした」と語る。

 今後も世代を継いでチョン・クムソン ハルモニ家族との出会いを続けたいという著者は新しい貧困研究、新しい社会学の必要性を強調した。 また「そのような研究をするならば、その開始点は舎堂洞と上渓洞であるだろう」としながら舎堂洞と上渓洞が単純な地名を越えて一つの‘社会的記号’として席を占めなければなければならないと付け加えた。

チェ・ウォンヒョン記者 circle@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/533621.html 訳J.S