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"脱北住民越境は移住ではなくコミュニティ内移動"

原文入力:2012/04/24 20:53(2285字)

←中国延辺と韓国を行き来する朝鮮族の話を扱った映画<黄海>(左側)と豆満江(トゥマンガン)沿岸を背景に北韓離脱住民と朝鮮族の耐え難い現実を扱った映画<豆満江>。 キム・ソンギョン聖公会(ソンゴンフェ)大人文韓国(HK)研究教授は北韓住民の移住には政治的・経済的要因だけでなく、同一文化・言語を土台にした‘民族文化空間’という要因があると解説した。 <ハンギョレ>資料写真

聖公会大東アジア研' 移動のアジア’フォーラム

キム・ソンギョン教授、文化要因 指摘
脱北者ら 中国滞留選好は
境界地域共同文化のため
"南韓移住、冷戦理念が妨害"

 <義兄弟> <黄海> <豆満江> <茂山(ムサン)日記>等、何年か前から韓国映画に在中同胞(朝鮮族)と北韓離脱住民たちが主人公として多数登場している。 特に‘同胞’という形式的な血統関係を越えて、‘境界上に立った人々’として彼らに光を当てようとする試みが目立つ。

 北韓と中国の境界地域を長い時間をかけて形成された‘民族文化空間’と見て、北韓住民の移住にはこの間指摘されてきた政治的・経済的要因だけでなく、こうした文化的要因が大きな影響を与えていると見る研究結果が出た。去る20~21日、聖公会大東アジア研究所が開いた‘移動のアジア’という題名の国際学術大会で、キム・ソンギョン聖公会大人文韓国(HK)研究教授は‘経験される境界地域と移動経路‐北韓離脱住民の境界越え、あるいは境界作り’という発表を通じてこのような内容を主張した。

 キム研究教授は「北韓住民の移住の性格と原因を政治的あるいは経済的要因だけで説明するには、いくつか解けない疑問点がある」と指摘した。

 彼が指摘した疑問点は、1990年代中盤の大飢饉以後に始まった北韓住民の脱北移動は30万人から100万人までと推定されるが、彼らの中の大多数の人々は韓国への移住を選択するよりは中国に滞留したり北韓に自発的に戻ることを繰り返しているという点、移住民の大部分が咸鏡北道(ハムギョンブクド)出身だという点、北韓離脱住民の中で70%近くが女性という点などだ。

 政治的・経済的要因の代わりに彼は文化的要因、すなわち北韓と中国の境界地域という空間に文化的・言語的に同じコミュニティが永く位置していたという点に注目した。 「北韓住民の‘境界越え’という他国への移住(migration)である前に、日常生活の奥深いところで作動してきたコミュニティ内の移動(mobility)と理解することが妥当だ」ということだ。

 統一部資料を見れば、2008年まで北韓離脱住民の中で68%が中国との境界地域である咸鏡北道出身である反面、もう一つの境界地域である両江道(ヤンガンド)出身と慈江道(チャガンド)出身はそれぞれ5%と1%に過ぎない。

 これに対して咸鏡北道の場合、国境の向こう側に‘延辺(ヨンビョン)朝鮮族自治州’という日常的に作動する文化的・言語的コミュニティがある反面、両江道や慈江道には白頭山(ペクトゥサン)の険しい山勢と軍事施設の集中などでそのようなコミュニティが殆どないために起きた現象だとキム研究教授は分析した。 実際、北韓離脱住民たちとの深層インタビューでも父親との葛藤のために腹立ちまぎれに豆満江を越えるなど、国境で区分される境界地域としての性格ではなく、同一文化・言語地帯としての咸鏡北道地域・延辺朝鮮族自治州の性格があらわれるということだ。

 1990年代後半から国境警備と越境処罰が強化されながら同一文化・言語地帯としての共同体的文化が変化し、北韓住民の越境は国家に背を向ける行動にに変わった。

 しかし、一方では北韓離脱住民たちが依然として朝鮮族社会との協力関係を維持しながら多様な方式で同一文化・言語地帯を再構成する現象も観察されるとキム研究教授は明らかにした。 延辺で北韓離脱住民の女性たちが南韓へ経済移住した朝鮮族女性の空席を埋める役割を担当しているなどが代表的現象という。

 キム研究教授は弱まった国境を探して故郷を離れる北韓離脱住民にとって境界文化の存在有無が重要な生活条件だという点を強調した。

 北韓離脱住民の中国や東南アジア国家内での移動過程を見れば、朝鮮族教会または、韓国人教会などが「超国籍民族的空間であり境界文化の場」として大きな役割を果たしているという。 すなわち地理的に区切られた境界地域にだけ留まっているのではなく、韓国人と北韓人、朝鮮族が互いに競合して協力する新しい超国籍民族空間を作り出すなど「境界を拡張している」ということだ。

 問題はこのような超国籍民族空間を経験した北韓離脱住民の‘境界文化に関する経験’が韓国社会では認められないという点だ。 単に 「敵対国である北韓からきた」、「極限状況での仕方のない経験だ」等とだけ認識し、彼らが新たな移住文化と空間を作ることを妨害しているという指摘だ。

 その背景には今も韓国社会を支配している冷戦イデオロギーがあるという。 キム研究教授は何より‘北韓出身’という単純な認識を越えて、北韓離脱住民の超国籍経験と彼らの移動過程を貫く文化地理学的背景を理解することが必要だと強調した。

チェ・ウォンヒョン記者 circle@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/culture/religion/529783.html 訳J.S