記事登録:2012.02.17 13:13(1570字)
[レビュー] 演劇 ≪鉄路≫
椅子一つで行き来するロンドン・大邱(テグ)
鉄道民営化の悲劇がどっかと座ってる
事務室で使われるキャスター付きの椅子。ありふれたこの日常家具は演劇≪鉄路≫の舞台では随時他の用途の小道具に変貌する。
大邱(テグ)に住むある作家が英国の鉄道運営を取材するために飛行機に乗る時、椅子は機内座席になる。 「しばらく携帯電話の電源をお切りください」という、飛行機と劇場でお馴染みのアナウンスが流れる。次いで椅子は脱線事故で4人の命を奪ったロンドン北部の高速列車に変身する。 さらに椅子はインタビュー席に変わる。 鉄道事故で“死体6番”になって帰ってきた息子と向き合う母親、事故の背景を掘り下げ、費用削減のために安モノを使う鉄道事業の問題点を突き止めた彼女がインタビューの主人公だ。
英国高速鉄道・大邱(テグ)の地下鉄惨事を描き
民営化の問題点・遺族の悲しみに照明
2000年に起きた英国の鉄道脱線事故を扱った英国の劇作家デービッド・ヘアーの原作に、2003年の 大邱(テグ)地下鉄火災惨事を組み合わせ脚色した≪鉄路≫は、構図が独特だ。 節制された舞台の上で、鉄道民営化の問題点に対する冷たい説明と、鉄道(地下鉄)事故で愛する人を失った人々の熱い痛みが同時に表現される。 英国の話では生き残った者たちの訴えよりは民営化に対する批判の側に比重が置かれている。そうして作家が韓国に戻った日、椅子が事故当日の大邱(テグ)地下鉄内の椅子に変わるとともに、劇は事故の惨たらしさと残された人々のつらい物語へと焦点を変える。 演劇は192名死亡、151名負傷という乾いた数字でもって事故処理が終わったわけではないという点を明確に打ち出す。 「愛してる」というメッセージを残して痕跡もなく消えた誰かの声と、時が流れてもそのメッセージを消せずにいる人々の姿から、その一日が依然として続いていることを観客は感じさせられる。
≪鉄路≫は2008年ソウル演劇祭でリリースされ4年ぶりに公演される作品だ。 “民営化”という難解で複雑に見える政治的事案とそれにともなう変化が触発した社会的事件を“個人”の視線に移しかえて話を解いていくなかで、観客の感情を動かす。 劇中で民営化を主導した主役達は反省しない。 航空会社、銀行、鉄鋼会社の民営化を順に進めたというグローバル投資銀行家は依然として自信満々な表情だ。 英国財務部官僚は、列車と線路を切り離し諸会社に営業権を与えて競争を煽る“レールトラック”を企画したのは合理的な決定であって、「予想以上に利用客が増えたために問題が生じたのだ」と弁解する。
大邱(テグ)地下鉄事故後の補償および事故再発防止対策は遅々として進まず予算はむしろ削減されている。 さらに、官僚達は遺族が補償金欲しさで引き下がらないのだとさえ見ている。遺族たちは抗弁する。「金のためじゃないから。だから私は引き下がりません。」
鉄道事故で息子を失い鉄道網全体に安全な“自動保護システム”を導入せよと主張する英国の母親と、大邱地下鉄事故で妻を失い大邱市を相手にデモをしている夫のセリフだ。 このように演劇は、“立ち去らない”人々にもう一度、淡々と応援を送る。 翻訳チェ・ジョンウ、演出パク・チョンヒ. 俳優キム・ウンソク、パン・スング、キム・ジョンホなど。 26日までソウル東崇洞(トンスンドン)大学路(テハンノ)芸術劇場の小劇場. (02)889-3561.
パク・ポミ記者bomi@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/culture/music/519503.html 訳A.K