今の経済状況は家計負債危機が発生せざるを得ない条件を完ぺきに満たしている。負債規模が手のほどこしようもなく急増した中で、インフレーションが本格化しながら金利引上が避けられない状況になってしまった。金利引上に直撃弾を受けることになる変動金利付住宅担保貸出は家計負債危機の雷管だ。電撃的に行われた先週の韓国銀行による基準金利引上はこの敏感な雷管に触れた。都市銀行らは直ちに住宅担保貸出金利を上げ始めた。まだ僅かな水準だが基準金利が金融危機以前の年5%水準まで上がれば状況は一変する。現在、年4~6%水準の住宅担保貸出金利が今後2~3年内に年8~10%まで上がりかねない。利子負担が2倍に増えれば、それに耐えられず破産する家計が続出するだろう。
家計負債危機は李明博政府の経済政策の失敗が呼び起こした必然的な結果だ。
2008年9月、世界金融危機が本格化するや韓国銀行は年5.25%だった基準金利を2%まで低くした。当時としては避けられない措置だった。問題はこういう低金利をあまりに長く続けたという点だ。金融危機がある程度落ち着くなりオーストラリアは2009年10月から金利引き上げを始めた。だが、高成長に執着したわが政府は2010年7月に基準金利を0.25%上げた。長期間の低金利は家計が利子負担なしで貸出を増やすのに良い土壌となった。昨年8・29不動産対策で総負債償還比率(DTI)規制を緩和したことも貸出の拡大を招いた。家計負債の危険性に対する警告どころか政府が率先して借金を増やすように煽ったわけだ。
借金が多くても金利が低ければそれほど大きな問題ではないこともある。だが、今は金利を引き上げないわけにはいかないインフレーション局面に入った状況だ。経済が生き返りながら金融危機当時に大挙放出したお金がすばやく回り始め、原油価格がバレル当たり100ドル台に肉迫するなど国際原材料価格が急騰している。こういう傾向は今後より一層険しくなるだろう。さらに政府は成長を優先視しながら‘出口戦略’をずっと先送りし、輸出拡大のための高為替レート政策を維持することにより物価不安を加重させた。金利を引き上げないわけにはいかない条件を政府自らが作ったのだ。
結果的に政府は家計が目いっぱい負債を増やすようにしておき成長中心政策で物価が不安になるや金利引き上げに出て負債危機を自ら招来する自縄自縛式経済政策を展開した。政府が負債危機を憂慮して金利引上を自制することもできるだろうが、そうすればインフレーションというさらに恐ろしい虎とぶつからなければならない。政府は虎の代わりに経済的弱者の家計を犠牲羊とする可能性が高い。
家計負債危機はもう避けられなくなった。すでに雷管に火が燃え移った。金利引き上げに合わせて負債危機の衝撃を最小化できる非常対策準備にすぐに着手しなければならない。家計破産が始まった後ではすでに遅い。家計貸出の拡大を抑制することはもちろん、既存貸出に対する構造調整も急がなければならない。変動金利付貸出を固定金利貸出に切り替え、借金の満期を延ばすなど多様な方案がありえる。
家計負債の構造調整は軟着陸が何よりも重要だ。2003年のカード事態の時も当時の未熟な経済チームがあまりに急に金脈をつかみ事態を悪化させた側面があった。最悪のシナリオは負債危機が李明博政府の経済政策の失敗によったものであることを認めまいとし、任期末まで適当に覆い隠して進むことだ。これは韓国経済を奈落に落とす無責任な行動だ。最小限そうすることはないだろうと信じたい。
チョン・ソック先任論説委員 twin86@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/459191.html 訳J.S