原文入力:2010-09-24午前09:38:41(1816字)
キム・ポグン スペシャルコンテンツ部長
恐れていたことが起きた。去る13日、国防部が‘天安艦最終報告書’を発表した後からだ。何よりも証拠能力が貧弱な一つの‘仮説’を‘真実’と主張する国防部の態度のためだ。
国防部は最終報告書で 「北韓潜水艇が重魚雷で水中爆発を起こし、去る3月26日 天安艦を撃沈した」と主張した。だが、報告書を几帳面に調べても‘北韓魚雷説’と呼ばれるこの仮説を真に確定することは難しく見える。この仮説が真実になるには①北韓潜水艇が②重魚雷で③水中爆発を起こし天安艦を撃沈したということを証明しなければならない。
先に③から調べよう。この時、国防部は水中爆発の時に必須である高さ100~200mの水柱を証明しなければならない。報告書は28ページに「ペクリョン島海岸哨兵が2~3秒間、高さ約100mの白色閃光を観測した」としこれを証拠に提示している。だが、これは‘操作’に近い。その哨兵は、自述書等を通じて何回も白色閃光は水柱ではないと主張しているためだ。さらに閃光の方向も天安艦とはかけ離れたところだ。水柱関連証言が全くないと見るや、こういう我を張ったことだろうが、これは報告書に対する国民の不信感を高めるだけだ。
②と関連した内容も不十分だ。これを立証しようとすれば、まず事件発生50日後の去る5月15日にはえ縄漁船が回収した魚雷推進体の腐食程度が2ヶ月ぐらい経ったものであることを明らかにしなければならない。だが、当初あまりに錆びており天安艦とは関係ないという内部意見があったにも関わらず、国防部は5月20日「裸眼で見れば腐食状態が2ヶ月程度経ったもの」と主張した。当時、国防部は科学的な方法で腐食時期を6月末までに明らかにすると言ったが、最終報告書には関連内容が見られない。
さらに天安艦を攻撃したという北韓魚雷の爆発力はTNT350~500㎏程度だが、当時感知された地震波はせいぜいTNT140~260㎏規模に過ぎない点、爆薬成分が魚雷推進体からは検出されていない点等も②を真実として受け入れることを迷わせる。
①と関連して国防部は5月20日、魚雷を撃った主体として‘北韓が新しく開発したサケ級潜水艇’を指定した。だが、最終報告書にはこの‘新製品’を発射主体として明示しなかった。‘新製品’が実際に存在するのかに対する疑問が起きるのは当然だ。
この程度であれば北韓魚雷説はまだ仮説と見なければならない。社会が仮説を受け入れるには‘検証’過程を経なければならないが、まだその段階を越えられていないという話だ。それでも国防部はこういう矛盾だらけの仮説を真実として通用させようと考えている。国防部はすでに去る8月末、教育科学技術部に公文書を送り、学生たちが天安艦を見学することができるよう広報することを要求した。また、平沢第2艦隊にある天安艦を龍山戦争記念館に移し、広報を強化するだろうという話も聞こえてくる。国防部はその広報の現場を訪ねた子供たちに‘魚雷説’という仮説をあたかも真実のように説明するだろう。
こういうごり押しは大きな社会的費用を招くだろう。仮説を真実として認める私たちの社会の受け入れ体系を大きく揺さぶるためだ。維新と全斗煥独裁時期がこれを証明する。当時、国民は貧弱な仮説あるいは偽りを真実として受け入れることを強要されたが、政府発表を信じないことにより対応した。政府が真実だと発表することが真実でない可能性が高いためだ。当時、政府の公式発表は‘ゴミ’扱いを受け、いわゆる‘流蜚通信’が氾濫した。これは結局、国家の発展動力を蚕食する。そのような不信時代の再現、これが国防部の天安艦発表を見ながら感じる恐れの正体だ。
秋夕連休の後、本格活動に入る国会に注目するのもこういう恐れと関連がある。国会が国政調査活動により天安艦事件と関連した仮説と真実を切り分けることにより、そのような不信時代の再現を避けることができたらと思うわけだ。今回の‘不信’が韓半島の運命とも深い関連を結んでいるために、より一層そうだ。 tree21@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/440709.html 訳J.S