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[イ・ジョンソク コラム] 統一税論議、なぜ適切でないのか

原文入力:2010-08-16午後09:25:36(1752字)

←イ・ジョンソク前統一部長官

李明博大統領の8・15祝辞の中の統一・外交分野を見れば、あまりに現実とかけ離れ自己矛盾的という気がする。現政権が始まって歴代政府が積み上げた南北共存の枠組みが壊れ、対中協力関係が崩れたことは皆が知る事実だ。にも拘らず、それに対する反省や具体的代案提示もなく、南北間に対決でなく共存を語り、停滞でない発展を話して対外的には互恵的パートナーシップを強調するのが正直なものか理解できない。

統一税新設を議論しようという主張もそうだ。すでに政府は南北和解と経済協力を通じて平和を増進し南北共同発展を企図し統一時代の基盤を積みあげていこうと毎年1兆ウォンを越える南北協力基金を国会から承認を受けている。ところが李明博政府は国民の税金で支出される一種の統一費用といえるこの基金を、2008年は18.1%、2009年は8.6%しか支出しなかった。純粋事業費 1兆1200億ウォンが策定された今年は6月末までに334億ウォンしか使わなかった。統一の礎石となる統一部の対北韓協力事業は事実上オールストップ状態だ。民間の基金使用要請はいつも棄却されている。対北韓政策が対決一辺倒に疾走した結果、こういう状況が発生したのだ。

このようにすでに造成された南北協力基金さえ使うつもりがない政府が、統一税を云々するとはあきれる感じだ。統一が差し迫って統一費用を支出すれば、天文学的費用がかかるが、常に南北関係を発展させ統一の条件を造成して行けば、はるかに少ない費用で済むだけでなく、韓国主導の統一情勢をむかえる可能性が高いというのが専門家たちの共通した意見だ。南北協力基金は窮極的にこのために造成されている。

もちろん北韓の突然の崩壊に備えるために統一税が必要だと主張する人々もいる。こういう主張は、北韓が崩壊すれば韓国が吸収統一することができるという前提に基づいている。果たしてそうだろうか? 北韓が崩壊しても110万人の北韓軍がどんな形態であれ存在し、解体されてもその途方もない武器を手に握った武装集団や人々は存在するという点を知らねばならない。韓国軍や米軍を投じた北韓状況管理は、北韓が願わない限り不可能だという話だ。

ここで重要なのは、北韓住民や新たに割拠する北韓新指導層の考えだ。彼らが韓国での吸収統一に負担を感じないほどに対南依存心理や信頼がある時にのみ韓国の北韓状況管理が可能だ。これは粘り強い南北関係改善と和解協力が累積してこそ可能だ。今日のように南北対決状態が持続し北韓住民の対南敵対意識が高まっている状態ならば、自国体制が崩壊したからと言って韓国を見つめるはずがない。代わりに彼らは中国を見つめるだろう。

中国は北韓が崩壊したとしても北韓を属国とする意図はないように見える。しかし北韓が要請すれば、その戦略的地位を考慮し北韓の安定化と新たな体制樹立のために積極支援するだろう。対決的な南北関係がこれを容易にするだろう。結局、北韓が中国東北の4番目の省のようになる状況は中国の意志よりは北韓の対南不信が彼らをその方向に追い込む中で発生しうる。これは対北韓対決政策を駆使する限り、北韓崩壊に備え統一税をおさめるとしても使い途がないことを示唆する。

李明博大統領は現在に対し責任を負わずとも良い未来学者ではない。去る在任2年6ヶ月間、南北協力基金を10%も使わないでおきながら、統一税を語るのは現在の責任を負わずに未来に備えようという無責任な主張だ。今、李明博政府に必要なことは統一税論議ではなく、莫大な分断費用がかかる敵対的対北韓政策から抜け出し、平和と協力の対北韓政策に切り替えることだ。それが統一費用を減らす道でもある。この政策転換を通じて国会で用意した南北協力基金をきちんと使うことが先だ。その後、さらに必要ならば南北協力基金を大きく膨らませるなり、統一税を論議するなりすることが順序だろう。

イ・ジョンソク前統一部長官

原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/435310.html 訳J.S