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[社説] 朝鮮半島安定が最優先だ

原文入力:2011/12/19 23:09
金正日委員長死亡のあと

  北朝鮮の金正日国防委員長が死亡した。重病説が出回ったが最近回復気味を見せた彼の急な死亡は衝撃的だ。北朝鮮だけではなく朝鮮半島及び周辺情勢全般にも深刻な波紋が立つように見える。北朝鮮は金委員長の死亡発表と同時に後継の金正恩体制への権力承継を強調することで体制安定に対する疑問にくいを刺した。北朝鮮が以後事態の展開をきちんと統制できると誰も断言できないが、権力の空白による急変的な事態がすぐにおきるほどは体制がもろくはないようだ.。それゆえに朝鮮半島情勢の安定的管理と、危機をチャンスに変える賢い対処が必要だ。

  金委員長の死亡とそれがもたらす朝鮮半島及び周辺情勢の変動は1994年 7月の金日成主席死亡時に比肩しえる。当時北朝鮮は、社会主義体制崩壊後の国際情勢下で極めて困難な時期にあり, 核危機によって朝鮮半島は戦争の一歩手前まで行く危機的な状況を迎えていた。以後 17年間北を統治して来た金委員長は、経済危機や自然災害がおきた北朝鮮体制を再建して、国際的な孤立から脱するために全力を注いだ。二回の南北首脳会談を行なったし、金鋼山観光と開城工団の建設も受け入れた。悪の枢軸と規定して体制存立を脅かした米国のジョージブッシュ政権に対立して核兵器も開発した。しかしその代償はむごく、彼が約束した強勢大国は人民を食べされることさえ難しい事態になった。

情勢変動の政略的利用を警戒

  金委員長死亡後の状況はある面では金主席死亡時より劣悪だ。昨年公式化した金正恩の後継体制は、長期間権力承継の授業を受けた金委員長の時とは違ってまだ固まらず、 経済状況も根本的に改善することができなかったうえ、 大量の脱北者発生の事態で分かるように体制の緩みの兆候まで明らかになった。南北関係はさらに行き詰まり、周辺情勢も 17年前に劣らない激変期を迎えている。北の体制の不安定性はそれだけ、もっと大きくなっている。

  こんな緊迫な時期に南北関係が17年前よりさらに行き詰まっているというのは極めて深刻だ。現政権になって以後の南北関係は、二度の首脳会談で成果を挙げた以前の姿に戻ってしまっている。昨年の天安艦・延坪島の事態以後は、ほぼ全面的な断絶の中で緊張だけ高くなった。金委員長の死亡発表まで南側がどんな異常兆候もキャッチできなかった現実が、このような現況を象徴している。このような中で南側が北の情勢変動に関して用いられるカードはほとんどない。そのことこそが、このような緊迫した時期に最大の危険要素でありえる。 北に圧力をかけて屈服させることや、体制崩壊を通じた吸収統合までを念頭に置いた南側の強硬論者たちがこのような切迫した状況で事実上なすすべがないのは彼らの主張がいかに近視眼的で無責任で危ういものか改めて見せつけられる。

  われわれは当然アメリカ、中国、日本、ロシアなどの周辺国の動向を綿密に注視して、彼らと協議、協力しなければならないだろう。 しかし独自的に使えるカードが極めて制限されている以上、その状況をわれわれが主導できずに引きずられるのがおちで、これも非常に憂わしい事だ。来年の総選挙と大統領選挙も控える私たちの流動的な政治状況も不安材料だ。政権レベルでこのような状況を利用しようとするもくろみを徹底的に警戒しなければならない。そうなると自分たちだけでなく民族全体に致命的な損失をかける深刻な事態を呼ぶこともありえる。さらに中国の急浮上とアメリカの相対的な衰退の中で東アジア情勢が根本的に構造変動しているうえ、特に来年はこれら主要国の政治状況が同時に変わることもある権力交代期だ。このような移行期に内外の政治勢力が、金委員長死亡が触発する情勢変動を政略的に利用しようとする危険な行いをしないという保障はない。

南北対話修復して危機を好機に

  政府はこのような点をあまねく考慮して民族全体の将来を念頭に置いて冷静に対応しながら情勢変動の主導権を握っていかねばならない。まさに危機を好機に変える知恵が必要だ。

  これまでの対北戦略を見直しながら北との対話のパイプをできるだけ広げなければならない。私たちが北朝鮮との関係を強固にしておかなければ、急な情勢流動化は外部勢力の介入を呼ぶのがおちだ。これを阻むためには南側が主導的に北との対話通路を修復して、必要ならば戦略的な支援を通じて北体制の安定的な移行につくさなければならない。当面の政策目標の優先順位をここにおく必要がある。そうして南北関係を回復させて、さらに一歩進展させる、災い転じて福となす機会にしなければならない。 北の動向を綿密に見詰め、軍隊の過剰な展開などは自粛して、北を刺激する不必要な言動を慎まなければならない。弔意の表明も積極的に検討しなければならない。17年前南北関係を凍りつかせた弔文論難を半面教師にして、むしろこれを解氷する機会と成す知恵を発揮する必要がある。これは廃棄処分した 6・15 共同宣言と 10・4 合意精神をいかす道でもある。

  そして危機を誇張して北をもっと揺さぶって崩壊・吸収統合の機会にしようとする保守右派の一部の危ない冒険主義を受け入れてはいけない。ややもすると北の危機を朝鮮半島の全面的危機として増幅させるかも知れない彼らの浅はかな見方は必ず断ち切らなければならない。
原文:https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/510894.html  訳T.W