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[朴露子ハンギョレブログより] 資本主義、まるで赤ん坊のような

登録:2011-10-24 09:06
http://www.britannica.com/EBchecked/topic/321703/Nikolay-D-Kondratyev

原文入力:2011/10/21 01:42(3140字)


朴露子(バク・ノジャ、Vladimir Tikhonov)ノルウェー、オスロ国立大教授・韓国学


最近育児休職を取りいつもより遥かに多くの時間を家で子供たちと一緒に過ごしている私には、推理小説もアクション映画も何一つ必要ありません。十か月の娘と過ごす一瞬一瞬がすべて最高のアクションです。何も知らない赤ん坊が長男(9才)のマンガを裂いてその紙を食べようとするので、やや高めのベッドに置いたらそこに這い上がろうとするのですが、そこから転落したら怪我しそうなので、掃除機を振って座らせようとするものの、今度はその掃除機に当たって大怪我でもするのではないかと、ハラハラさせられる「スリル」満点の瞬間瞬間を過ごしています。映画や小説からの刺激をまったく必要としないほどです。考えて見れば、十か月の赤ん坊も私とまったく同じ人間ですが、一応周辺環境に適応し自己保存の能力を養うだけの適応力、認知力などがないうえに腕力が微弱であるため、こうなるわけです。大人が常に側に付いていることがその生命保存の唯一の担保なのです。

ところが、私たちに「見えざる市場の手」として自己調節能力を完全に備えたもののように誤解されている資本主義も、考えて見れば十か月の赤ん坊と本質的にはまったく同じです。本当は基本的な自己保存能力などまったくないのです。資本主義の保存・長期持続を保障するのはその「保護者」としての国家の政治力と軍事力、経済調節能力であり、「市場」そのものは窮極的に自己調節に完全に失敗せざるを得ません。その理由は簡単です。資本主義とは基本的に利潤追求による資本の持続的な拡大再生産を意味するものの、利潤率は持続可能なはずがありません。コンドラティエフ()という20世紀初頭のロシアの経済学者によって描かれた「長期波動」(約70~80年)の間、その利潤率が次第に低下するのですが、特にコンドラティエフ波動の後半期(現在は1973~1980年以降)は製造業などの利潤率が急激に落ちているため、製造業主要部門の危機が促進されます。それでは「見えざる手」はそれについてどのように対応するのでしょうか。概して次のような対応策が見受けられているものの、これらすべては窮極的に一つの体制としての資本主義の危機をより一層深める逆効果を生まざるを得ません。


1、低賃金労働の過剰搾取による超過利潤収奪。この方法は、中国やベトナムなどのかつての「現実社会主義」国家だった社会へ資本が侵透し低賃金労働力を無差別搾取することと、核心部/準核心部(特に韓国やスペインのような、労働者保護が整っていない社会で)でかなり多くの労働者を非正規化させ、その賃金搾取を強めることなどを総称するものです。しかし、この方法は資本増殖を一時的に加速化させる効果があるとはいえ、結局「壁」にぶつかってしまいます。低賃金国家の労働者たちの闘争に弾みが付きその賃金は結局かなり上がり、核心部/準核心部の非正規化した労働者の購買力が減り消費市場の危機が訪れるのです。一時的な利潤極大化の効果はあっても結局長期持続は不可能なやり方なのです。


2、技術革新による新商品開発、新しい商品市場の創出。ここではコンピューター、インターネット、ソフトウェア、携帯電話が代表的な事例になりますが、新市場の利潤は初めは良くても結局過剰生産、過剰競争によって削られ窮極的に危機に直面するのです。10余年前にアメリカを含む多くの国々で「ドットコム」株価(インターネット業社の株)が一斉に暴落するなど、インターネット企業のバブルが弾け経済危機に直面したかと思ったら、イラク侵略などの特需で一時的に挽回し軍需産業のリードにより株価全体が上がったのをよく覚えていらっしゃると思います。新商品市場の不可避的なバブル形成と危機を兔れる対価は、爆弾・砲弾・銃弾・手榴弾の炎の中で惨めに殺され、疾病・栄養失調で死んで行った約60~70万人のイラク人の命だったのです。もちろんこの体制では非西欧人の命などは基本的に「人命」と認められないため、イラク侵略を主導したブッシュなどの戦犯たちは今も多くの国々にのこのこ出かけて行っては自画自賛を重ねています。「元大統領」という名の凶悪犯を捕まえるられる根性のある司法体系はどこにもないのです。まあ、凶悪さにおいてはアメリカの現大統領でも元大統領でも、歴史の中の如何なる大統領でも、概して似たり寄ったりで五十歩百歩なのです。


3、産業部門から金融部門への資本の流出。住宅担保貸出、家計貸出の未曽有の活性化により不動産バブルが生じては弾け、家計負債のピラミッドの下で窮極的に債務不履行者たちは神のみが知る苦痛を経験し、消費市場は結局萎縮します。今の韓国の場合は、可処分所得に対する家計負債の比率は146%くらいですが、これは既にアメリカ、日本を遥かに上回る水準です。今までは家計負債を大いに増やすことで金融資本はかなりの所得を上げていたものの、まもなく破産者が大量に発生し金融資本も危機に陥ることになるでしょう。もしかしたら家計負債のバブルは韓国型新自由主義の危機の口火になるかもしれません。金融化のもう一つの特徴は、原材料と資源、特に石油などへの投機を繰り広げ所得を上げる手法が発達しているものの、そのおかげで今のような異常に高い水準(バレル当り100ドル以上)を維持しているのです。その結果萎縮するものは?産業部門と消費者たちです。結局、利潤の最大化を狙う投機資本は、経済全体の収益性を殺してしまうのです。間違って高いところに登ってしまい、結局そこから転落死しかねない十か月の子供といったいどこが違うというのでしょうか。


4、非市場部門の市場化。これは何より医療と教育の市場化を意味します。国内では、たとえば「医療観光客」の極端な誘致政策などは、まさに余剰資本が医療部門に進出しまくっている状況と直結しています。私立大の実質的な営利企業化と授業料の殺人的な急騰もその傾向の一環です。学生たちから騙し取り非正規教員たちから騙し取り、清掃労働者たちからも騙し取らなければ、大学資本が建設資本に発注し必要のない新しい建物を建てたりして土建資本主義の基本枠を維持することはできないのです。結果は?多くの学生たちが貧民に転落してしまうのですが、これも ―その非人間的な側面はさておいても― 窮極において資本主義的な消費市場の長期持続にまったく寄与しません。消費市場にとっては余裕のある顧客たちが必要なのであり、授業料もろくに払えない苦学生たちを必要とするわけではありません。


利潤率が常に下がりつつある状況で余剰資本がどこに行こうが、結局その結果は数百、数千万、数億人の死ぬほどの苦しみと爆死、病死、戦死、そして窮極の経済の致命的な危機と恐慌の到来です。資本の負債を国家が引き受けても、結局国家が破産の危機に陥ってしまうのです。そうだとすれば、資本主義を生かす工夫をするより、むしろ「資本主義後」の社会を想像した方がましではないでしょうか。この殺人的な体制は修正資本主義になろうが他の如何なる資本主義になろうが、結局は苦痛と社会的な危機しか生み出し得ないことは自明なのです。


原文: http://blog.hani.co.kr/gategateparagate/38255 訳J.S