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[イ・ジョンソク コラム] 迫害されるチョン・ジュヨンの最後の事業

登録:2011-02-23 12:47

原文入力:2011-02-21午後06:27:02(2076字)

←イ・ジョンソク 前統一部長官

韓国経済を象徴する人物を挙げろと言われれば、多くの専門家がためらうことなく故チョン・ジュヨン ヒョンデ(現代)名誉会長を先ず挙げる。彼は勤勉と情熱だけでなく時代を見抜く洞察力と企画力を持った、まれに見る先駆者であった。彼は未来を見通し世界最大の造船所を建設し自動車を作った。早い時期に海外建設市場に飛び込んで経験を蓄積することにより、1970年代末に巻き起こった中東建設ブームの最大受恵者となった。 このようなヒョンデの成功は取りも直さず韓国経済の成功と脈を同じくするものであった。

しかし唯一、彼の生涯最後のプロジェクトであった対北朝鮮事業は正当に評価されずにいる。 チョン・ジュヨンは、冷戦体制が解体された暁には敵性国だった中国など社会主義圏が新しい経済パートナーとなり、北朝鮮が結局市場経済を受け入れざるを得ないだろうということを本能的に知っていた事業家であった。 彼は南北対決を越えて北朝鮮の安い労働力を活用することにより高賃金に悩んでいる韓国産業が復興できる機会を作り、韓国の企業が北朝鮮の豊富な地下資源を活用し、韓国に住む人々が同じ祖国の山河である北の地を見に行くことのできる時代を作ろうとした。そしてそれを通じて北朝鮮に住む人々の生活も良くなり、北朝鮮も市場経済を知っていくことになると確信した。

チョン・ジュヨンは1989年1月北朝鮮を訪問して金日成主席と面談し、金剛山(クムガンサン)観光事業関連合意書を締結し、紆余曲折の末に1998年11月、東海(日本海)の北方境界線(NLL)を越えて金剛山観光船を出航させた。 2000年8月にはキム・ジョンイル国防委員長に会い、北朝鮮の社会間接施設、基幹産業施設、観光などに対してヒョンデ(現代)が30年間事業独占権を持つという合意書を締結した。 彼は金剛山(クムガンサン)事業の過程で積み上げた信頼の上に4億5000万ドルの現金を乗せてこの事業権を獲得した。

金剛山(クムガンサン)観光と開城(ケソン)工業団地など彼が推進した対北朝鮮事業を振り返ってみれば、“国民の政府”時代に南北の和解協力の時代が開かれたのはキム・デジュン大統領の政策と企業家チョン・ジュヨンの対北朝鮮進出戦略とが意気投合して生まれた産物であったという気がする。 もちろんチョン・ジュヨンの対北朝鮮事業の底辺にはヒョンデ(現代)グループの経済的利益が敷かれていただろう。 しかしヒョンデの対北朝鮮事業は単なる個別企業の利益を越えて分断の壁を崩すという国家と民族の利益まで発生させたのであり、それを通じてチョン・ジュヨンは単なる企業家を越え分断の壁を崩した先駆者の隊列に上ったのである。

チョン・ジュヨンが難関を突破して対北朝鮮事業を推進してから13年が過ぎた今日、私たちは彼の先見の明と判断の正確さを随所に確認することができる。 多くの人々がそもそも北朝鮮のように統制された共産国家と経済協力をすることが可能だろうかと首を横に振ったけれども、2003年6月に初めてショベルが出動した開城(ケソン)工業団地は短期間に黒字構造に転じた。 10年前には北朝鮮を経済協力の対象とは思いもしなかった中国の企業が自国内の高賃金を避けて北朝鮮進出を模索しており、中国政府は後れている吉林省の経済発展のために羅津先鋒(ナジンソンボン)の港をはじめとする北朝鮮北部地方との協力を前提とした数百億ドル規模の発展計画を立てている。 生活が豊かになった中国人の北朝鮮観光も急増している。北朝鮮経済の中国従属を心配する人もいる。
 
ところで中国政府や企業の対北朝鮮経済協力事業は、多くの場合ヒョンデ(現代)との合意なしには原則的に不可能だ。ヒョンデがすでに事業独占権を持っているからだ。実際のところ、ヒョンデの対北朝鮮事業がまともに行なわれさえすれば北朝鮮経済の中国従属は心配する必要もない。 だがヒョンデの対北朝鮮事業独占権は、チョン・ジュヨンが育てた人物と言われるイ・ミョンバク大統領によって座礁の危機に瀕している。 金剛山(クムガンサン)観光はパク・ワンジャ氏射殺事件以後 現在まで2年6ヶ月間中断されており、開城(ケソン)工業団地は政府の統制下に置かれてやっと延命している状態だ。 対北朝鮮事業中断の長期化により、ヒョンデは北朝鮮に対しますます事業独占権を主張しにくい立場に追い込まれている。

逆説的なことに、チョン・ジュヨンの対北朝鮮事業は、いろいろな面で彼から恩恵をこうむった人がとりわけ多いイ・ミョンバク政府によって排斥されている。 感情的理念的偏見を越えた彼の知恵と洞察力を彼らが伝授され得なかったことが、かえすがえすも残念だ。

原文: https://www.hani.co.kr/arti/SERIES/229/464460.html 訳A.K