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トランプ氏に胸ぐらをつかまれる経済学、拒絶する市場【コラム】

登録:2026-09-18 02:58 修正:2026-09-18 08:41
米国のトランプ大統領が今年5月、ホワイトハウスで行われたあるイベントで、連邦準備制度理事会のケビン・ウォーシュ議長に耳打ちしている/ロイター・聯合ニュース

 米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を引き上げた。トランプ大統領は、1カ月半後に迫る中間選挙の悪材料になることが明らかな利上げを阻止しようとしたが、できなかった。FRBは政治的圧力を跳ね返したようにみえるが、実際にはすでに上昇してしまっている市場金利への追随に近い。10年物国債の利回りが5.0%を突破し、19年ぶりの高水準となった後だった。もしFRBが金利を据え置いていたら、物価と戦う意志と独立性を市場に疑われただろうし、その代償はより急激な金利上昇となって跳ね返ってきていたはずだ。

 過去30年以上にわたり、中央銀行の金利決定は経済理論と市場が最も合理的に機能する領域であった。中央銀行は物価、成長、雇用をめぐって金融市場とコミュニケーションを取りながら金利を決定してきており、こうした決定が政治から独立しているように見せることに失敗してはいなかった。

 しかし覇権の規範が崩れゆく時代に、狭量な権力は、合理性という手すりにつかまって立っている経済学を激しく揺さぶる。トランプ大統領は通貨政策を決める会議を前に、金利据え置きどころか「利下げ」を迫っていたが、その根拠は「言いたい放題」レベルだ。「米国経済は非常に強いので、我々には世界で最も低い金利が適用されるべきだ」というのだ。国民経済全般に徐々に効果を発揮する通貨政策を、個人や企業が銀行から信用貸付を受けるかのように述べたのだ。ポール・クルーグマンは「経済が強いというのは金利を上げるべき要因であって、下げる理由にはなり得ない」と書いている。

 大統領だけでなく、バンス副大統領やマイク・ジョンソン下院議長も似たようなことを主張している。トランプ陣営が第1次政権時代からこのような「誤った」主張を続けてきたことについては、その意図を推し量りたくなる。ポスト・トゥルース(脱真実)の時代の特徴は、言葉の「真実の値」がぼやけること。哲学者ハリー・フランクファートは著書『ウンコな議論』で、うそはそれを言う人が少なくとも真偽について認識しているが、「ウンコな議論(bullshit)」は真偽と無関係に自らの目的のためにいい加減に吐き出された言葉だと述べている。トランプの利下げ主張は「経済学的なウンコな議論」だと言える。

 大統領のたわごとは通貨政策にとどまらない。「経済は過去最高」だという理由を、今度は財政緩和によるばらまきに用いている。中間選挙で共和党が上下両院の過半数を維持すれば、関税収入をもとに成人に1人当たり5000ドル(約690万ウォン)を「トランプ配当金」として支給するという。1兆2000億ドルにのぼる財源の確保もとうてい望めないが、通貨は緩和したうえに財政から大規模に現金をばらまくと、物価がどこまで跳ね上がるか分からない。

 関税についてもトランプ大統領は「米国の消費者は一銭も払わない。中国が我々に数十億ドルを支払っている」と繰り返し主張している。しかし、関税はほとんどが米国人に転嫁される。ニューヨーク連邦準備銀行は今年2月に、「トランプ政権発足後8カ月間の関税コストの94%が米国の企業と消費者に転嫁された」とする報告書を発表している。トランプ氏は今月初め、「金利を下げなければ、貿易赤字国との交易を停止する」とトゥルース・ソーシャルで述べている。通貨政策と貿易赤字がどう関係しているかについての説明はもちろんない。貿易をゼロサムゲームとみなし、自国の貿易収支の赤字と資本収支の黒字が表裏一体であることを無視する認識だ。

 権力で理論を押しつぶそうとした指導者はトランプ氏だけではない。トルコのエルドアン大統領は「金利を上げると、かえって物価が上がる」という非主流の理論を信奉していた。中央銀行に圧力をかけて利下げさせたが、物価は1年で85%以上も上昇した。耐えられなくなった彼は、2023年9月に政策金利を20年ぶりの高水準の30%にまで引き上げた。後に考え方を変えたものの、それは国民が大きな代償を払ってからだった。

 新自由主義が世界を支配していた時代、経済学はあらゆる学問の王として君臨していた。ワシントン・コンセンサスは全世界の政府に財政健全性と自由貿易、規制緩和を処方箋として押し付けた。その処方に逆らえば市場と国債金利、信用格付け機関からひどい目にあうことを、各国政府は経験として学んだ。経済学はそのようにして物理の法則のように振る舞った。

 今は米国の最高権力者が、その緻密な理論的、実践的枠組みを自ら破壊している。もちろん、まだ持ちこたえてはいる。FRBと債券市場はトランプ氏の「経済学的なウンコな議論」に対し、議論ではなく価格でこたえている。大統領に任命された議長でさえ、債券市場には逆らえなかった。しかし、トロイの城を落としたのは木馬という変則的な攻撃だった。でたらめな主張の波状攻撃についに経済学が陥落した時、「不都合な説明(理論)であっても、あった頃の方がよかった」と言われるかもしれない。

//ハンギョレ新聞社

イ・ボンヒョン|ハンギョレ経済社会研究院研究委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1278263.html韓国語原文入力:2026-09-17 14:10
訳D.K

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