動物の自慰行為は、ケープアラゲジリス、ウマ、ハンドウイルカ、ウミイグアナ、アデリーペンギン、ニホンザル、チンパンジーなど、さまざまな動物で観察されてきたが、科学的な研究対象としては関心が低かった。自慰行為がタブー視されるテーマであるのに加え、人間や霊長類だけがそうした行動をとるという認識が作用しているためだ。しかし最近、オウムをはじめとする鳥類120種が自慰行為を行い、飼育下より野生でさらに頻繁に観察されるという研究結果が発表された。
英国ガーディアン紙は1日(現地時間)、英国ランカシャー大学のクロエ・ヘイズ博士らによる研究チームが、鳥類の自慰行為が野生と飼育下の双方で広くみられ、飼育環境のストレス反応ではなく、自然な行動だとする研究論文を発表したと報じた。今回の研究は同日、国際学術誌「Ecology and Evolution(生態と進化)」で公開された。
論文によると、飼い鳥の自慰行為は広く知られている現象だ。自慰行為は、総排出腔を木の枝やおもちゃなどの物体にこすりつけることで行われる。総排出腔は、鳥類が排泄、排尿、繁殖を同時に行う器官で、オスはそこを通じて精子をメスに渡し、メスは精子を受け入れて卵を産む。
これまで鳥類の自慰行為についての研究が不足していた理由は、総排出腔は神経束が少なく、感度が低いと考えられてきたためだ。これは、鳥類が哺乳類と似たかたちでオーガズムを感じることはできないとする推測を生み、鳥類が快楽のために性行為を行う可能性を排除する根拠になった。このため、これまで鳥類の自慰行為は、しばしば「問題行動」とみなされてきた。飼い主はこれを抑制するために、自慰行為に利用されるおもちゃやハンガーを除去したり、去勢手術を行ったり、薬やホルモンを処方してもらったりする手法で、飼い鳥を管理してきたという。
研究チームは、鳥がなぜ自慰行為をするのか、どの種にみられるのかを調べるために、飼い鳥の飼い主、鳥類学の専門家、鳥類飼育者、鳥類コミュニティの利用者を対象にアンケート調査を行い、先行の学術研究で報告された事例を調査した。その結果、自慰行為は、オウム、カモ、七面鳥、ニワトリを含む120種あまりの鳥類で広くみられ、飼育下よりも野生で多く観察された。オスの事例が若干多かったが、メスでも広くみられた。また、幼体と成体の間に大きな差はなく、自慰行為が性成熟前の交尾の練習だとするこれまでの仮説に反すると分析した。
ヘイズ博士は「オスは通常、ハンガーやおもちゃ、木の枝、あるいは、飼い主の手・足・肩などにからだを激しくこすりつける行動をとる一方、メスは尻尾を持ち上げ、身近な物体に背中を密着させる傾向があった」とガーディアンに述べた。このような行為は時に、羽ばたきとともに、普段は聞かれない特有の鳴き声を伴うこともある。研究チームは「自慰行為は鳥類にみられる性行動の一部であり、性的興奮を解消したり、交尾後の繁殖成功率を高める手段である可能性がある」と説明した。
共同著者であるマチルダ・ブリンドル博士は、今回の研究は、飼い鳥の福祉にとって重要な意味を持っていると主張した。ブリンドル博士は「従来の飼育ガイドラインでは、鳥の飼い主に対し、このような行動を抑制したり処罰したりするよう推奨することが多く、ときには手術やホルモン治療まで行われていることを考慮すれば、なおさらだ」と述べ、鳥類の自慰行為は自然な行動であることを強調した。