米国のトランプ大統領が、イランとの戦争を終結させるための了解覚書(MOU)暫定合意案について、核物質の処理とホルムズ海峡の開放に関する文言を強化するよう指示したことで、大詰めを迎えていたかにみえた交渉は再び調整局面に入った。
ニューヨーク・タイムズとアクシオスは30日(現地時間)、米国政府の複数の関係者と事案の報告を受けた人物の話を引用し、トランプ大統領が前日にホワイトハウスの状況室会議で、米国の交渉チームがイラン側と調整してきた合意案に複数の修正意見を述べたと報じた。トランプ大統領は、イランの保有する約440キロの高濃縮ウランを米国がどのように確保するか、またその時期やホルムズ海峡の通航再開の条件などを合意案に明示するよう指示したという。トランプ大統領はこの日のFOXニュースとのインタビューで、イランは核兵器を開発しないと約束したものの、大統領自身が「核兵器を購入した場合はどうなるのか」と問いただし、最終的に「いかなるかたちであれ核兵器を購入してはならない」という条項を合意案に追加したことを明かした。
ニューヨーク・タイムズは、トランプ大統領が合意案の一部にイランの資産の凍結解除が含まれていることにも懸念を示したと伝えた。トランプ大統領は、オバマ政権が核合意の過程でイランの資産の凍結を解除したことを強く批判してきた。実際にイランの諸メディアは、合意を条件に120億ドル規模の資金が凍結解除されると主張している。
イランはトランプ大統領の修正要求に反発している。最高指導者の軍事顧問を務めるモフセン・レザイ氏はこの日のソーシャルメディアXへの投稿で、「米国大統領の外交への裏切りは3度目」だとし、「海上封鎖を維持したまま交渉で過度な要求を追求することで、自身が交渉に適した人物ではなく、別の目的を追求していることを証明した」と述べた。
現在、両国は大枠では合意に近づいているが、敏感な争点の順序や表現をめぐって大詰めの駆け引きを繰り広げているとみられる。米国とイランの交渉に直接関与したアラブ圏の高位情報筋は28日、NBCに対し「合意はすでに3日前にカタールのドーハでまとまっている」と語った。この情報筋は、現在双方が相手の譲歩を待つ「ニワトリが先か、卵が先か」というゲームを繰り広げているとして、現状について「もどかしい」と表現した。
米政府の高官はアクシオスに「合意はなされるだろう」と述べつつも、「大統領は望むものを得るために待つ準備ができている。1週間かかることもありうるし、それより短くなることも、長くなることもありうる。週が変わるころには何かが出てくることを願っている」と語った。続けて「イランの回答を得るまでに三日ほどかかる可能性がある」とし、「彼らは文字通り洞窟の中にいて、eメールは使わない」と語った。
トランプ大統領は急がないとの姿勢を強調している。トランプ大統領はこの日のFOXニュースのインタビューで、原油価格を下げるために急ぎたいが、急げば良い取引ができないとして、「合意を急ぐことはない」と語った。また、完璧な合意を望むとの意向を示しつつ、「我々が望むものが得られなければ、別の方法で終わらせる」と述べ、軍事的圧力を改めて強める可能性を示唆した。さらに「イランの海軍と空軍は完全に破壊したが、イラン正規軍はやや穏健だと考えて放置している」と述べた。
両国の間では軍事的緊張が続いている。米軍はこの日、海上封鎖網を突破してイランの港へ入ろうとしていたガンビア船籍の貨物船「リアン・スター」号に対し20回以上警告し、その後、ヘルファイアミサイルを発射してエンジンを破壊し、同船を航行不能にした。これに対しイラン革命防衛隊は、自国の領海の上空で米軍の無人機「MQ-1」を撃墜したと主張した。
米国は金融的な圧力も同時に強めている。米国のベッセント財務長官は、交渉の遅延局面にあってイランの資金源を遮断するため、約10億ドル規模のイランの暗号資産を差し押さえたと発表した。同長官は、米国はイランに関係する暗号通貨のウォレットを「そっくり確保した」と説明しつつ、凍結し差し押さえた資産はイラン国民から奪われた資金だと主張した。
ホルムズ海峡の封鎖の長期化が及ぼす世界経済への影響に対する懸念も高まっている。世界銀行、国際通貨基金(IMF)、国際エネルギー機関(IEA)は各機関の長の名による28日の共同声明で、夏のエネルギー需要が本格的に高まる前にホルムズ海峡を通じた海上輸送が正常化しなければ、世界的なエネルギー安全保障、市場環境、経済の回復力に深刻なリスクが生じうると警告した。彼らは、世界の原油の約5分の1が通過するホルムズ海峡の航行が制限されていることにより、世界の石油在庫が記録的な速さで減少しており、農繁期を前に肥料価格も急騰していると指摘した。