青年ハン・ドゥルホは、9級公務員試験に取り組んで3年目になる就職活動生だ。美大に行きたかったが不合格となり、相談心理学科に入学した地方大学は理事長の不正で閉校に追い込まれた。今日も母親の小言を振り切ってマンションの廃品回収所に行くと、近所のおじいさんがまたタバコを吸っている。我慢できずに「ここは禁煙エリア」だと抗議すると、返ってきたのは罵声とビンタ。それを動画に撮ってユーチューブにアップしたら視聴者が怒ってくれ、おじいさんは「どうか動画を削除してくれ」と訴えてくる。ユーチューブのチャンネル登録者数はいつの間にか千人に達している。
路上で出会った無名の俳優コ・ボスルは、ハン・ドゥルホのファンだと言って一緒にやろうと提案。2人は近所で起きている無神経な迷惑行為を撮影してユーチューブにアップし、爆発的な反応を得る。登録者数も1万人を超える。さらに、ソウル大学ロースクール在学生のチェ・レミンと元柔道選手の配達ライダー、チョン・ガラムが加わり、4人は南漢山城(ナムハンサンソン)にあるチョンニャン山で桃園の誓いを立てる。彼らは迷惑をかける人々の容姿を特定し、「ムソ人」と名付ける。ユダヤ人(韓国語でユデイン)の「ユ(有)」を「ム(無)」に、「デ(大)」を「ソ(小)」に置き換えたものだ。彼らは「ムソ人を追い出そう」というスローガンを掲げ、政治闘争を開始する。
どこかで聞いたことのある話だ。そうだ。ハン・ドゥルホはドイツのナチス指導者アドルフ・ヒトラー、コ・ボスルは宣伝・扇動戦略家ヨーゼフ・ゲッペルス、チェ・レミンはナチス突撃隊司令官エルンスト・レーム、チョン・ガラムは第2次世界大戦を遂行したドイツ空軍総司令官ヘルマン・ゲーリングと重なる。彼らは、ソウル城北区(ソンブック)のソウル演劇創作センター・ソウルシアター202で現在上演中の芝居「マッピングヒトラー」(4月5日まで)の登場人物だ。マッピング(mapping)とは、ある値を別の値に対応させる過程を指す用語だ。この芝居は、100年前のナチス・ドイツと今日の韓国の状況を「マッピング」する。ヒトラーを全国的な有名人にした「ミュンヘン一揆」はハン・ドゥルホを登録者数500万人のユーチューバーにした「国会議事堂箒(ほうき)暴動」に、ヒトラーが獄中で書いた『我が闘争』はハン・ドゥルホがソウル東部拘置所で書いた『我が福音』に置き換えられている。
28日にこの芝居を見て、今の現実ととても似ていることに驚いた。劇中では中国が台湾に侵攻し、それに伴って全世界が大恐慌に陥る。現実では米国とイスラエルがイランを攻撃し、それに伴って原油価格が急騰し、株価が暴落している。混乱に乗じて大統領選に出馬したハン・ドゥルホは、当選後の計画を次のように立てる。まず北朝鮮を挑発して局地戦を引き起こす。それを口実に戒厳を宣布し、反対勢力を一掃。そして全面戦争を起こし、北進して満州の地まで占領する。「変人」の妄想として片付けるには不気味すぎる。平壌(ピョンヤン)への無人機侵入と戒厳宣布は、2024年に実際に起きた出来事だ。現実を反映して脚本を書いたのだろうか。作者のチェ・ヤンヒョンさんは「3年前に書いた作品なのに、偶然にも予言のようになってしまった」と言って苦笑した。
さらにぞっとするのは、ハン・ドゥルホが大物政治家になるまでの過程だ。最初にユーチューブを始めたのは善意によるものだったが、大衆の支持と力を得るにつれ、次第にゆがんだ信念、憎悪、差別、排除を武器とする怪物になっていく。「毛色の異なる」者たちはせん滅すべき敵だ。ありきたりだが効果的な分断という手法で、登録者数は爆増する。近ごろ猛威を振るう政治系ユーチューバー、とりわけ極右ユーチューバーとそっくりだ。フェイクニュースや陰謀論を拡散して大衆を扇動したり、裁判所に乱入して暴動を引き起こしたりといった彼らの行いは、100年前の極右ファシストと変わりない。チェさんは「近ごろのソーシャルメディアの偏向を見て既視感を覚えた。ヒトラーを今の時代に当てはめたのはそのため」だと説明した。
内乱事態後、尹錫悦(ユン・ソクヨル)は罷免され、李在明(イ・ジェミョン)政権が発足したが、「ユン・アゲイン」と叫ぶ者たちはいまだ横行している。保守野党「国民の力」は「絶尹(尹錫悦との絶縁)」を宣言したにもかかわらず、今も「ユン・アゲイン」勢力と絶縁できていない。内乱擁護発言をしたコメディアンかつユーチューバーのイ・ヒョクチェが、国民の力の広域議員の比例代表青年候補の選抜オーディションで審査員を務め、物議を醸したのは象徴的だ。
芝居は最後にハン・ドゥルホが大統領となって幕を下ろす。芝居はその後を描かずに終わるが、私たちはヒトラーの末路を知っている。2026年、大韓民国という芝居の結末はどうなるのだろうか。歴史の教訓だけでは足りないのなら、この芝居を見てじっくり考えてみることだ。
ソ・ジョンミン|文化スポーツ部長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )