イランがホルムズ海峡を通過する船舶に約200万ドル(約3億2000万円)の「通行料」を課し始めたと伝えられる中、仲介国を通じた米国とイラン間の水面下の停戦交渉では、ホルムズ海峡の自由航行問題が主要な争点として浮上している。イランでは通行料課徴制度の導入が検討されており、これをめぐり国際法違反という論争も起きている。
AP通信などによると、イランはすでに一種の「トールゲート」(料金所)を設置し、金銭を受け取っている。海外メディアは、海運専門データ企業「ロイドリスト・インテリジェンス」の話を引用し、13日以降複数のグローバル船舶会社がイラン革命防衛隊に貨物、船主、目的地、乗組員名簿などを記録した詳細書類を提出し、海峡通過の承認を得たと報じた。ロイドリスト・インテリジェンスによると、少なくとも2隻の船舶が人民元で通行料を支払ったという。
承認された船舶には固有コードが付与され、革命防衛隊の護衛の下、海峡中央の通常航路ではなく、ララック島とケシュム島の間を通る北側航路を通過している。このルートはイランの海岸線により近い。ブルームバーグ通信は「イランによって『承認された航路』とみられており、イラン当局はこの地域の支配権を強化している」と報道した。
■法制化されれば、年間1000億ドルの収入の見込み
イランは「通行料」の制度化作業にも着手している。現在、イラン議会でこの法案が作られており、船舶ごとに約200万ドルの通行料を徴収する案が検討されている。27日、イランの準官営の「タス二ム通信」は、船舶通行料で年間1000億ドル以上の収入が見込まれると推計した。イラン戦争が始まる前、1日あたり約120隻の船舶がこの海峡を通過していた。
一方、イランのこのような措置には国際法違反の可能性があると指摘されている。国連海洋法条約は、公海に面した領海において公共の秩序を損なわない限り、自由な航行のための「無害通航権」を保障している。米国キャンベル大学のサルバトーレ・メルコリアーノ教授(海洋史学科)は「国際法のどこにも通行料徴収所を設置して船舶から金を脅し取っても良いという規定はない」と述べ、「イランは自らが持つ唯一のカードであるホルムズ海峡の支配権を行使している」と語った。 湾岸協力会議(GCC)のジャセム・モハメド・アルブダイウィ事務局長も、イランの通行料徴収は「国連海洋法条約違反」だと非難した。ただし、イランはこの協定に署名しただけで、批准はしていない。
ホルムズ海峡が事実上閉鎖された状況下で、海上輸送量は戦争前のごく一部にまで減少し、イランと関係する船舶だけが出入りしている。市場調査機関「ケプラー」によると、イランのカーグ島では3月の1カ月間、1日平均160万バレルの原油が出荷されており、これは戦争前の月間出荷量と大きく変わらない水準だ。イランは開戦以来、中国やインドなど友好国の一部の船舶だけを選んでホルムズ海峡を開放してきた。
現在、イラン政府から船舶航行許可を取得したと公式に発表している国は、タイ、マレーシア、パキスタンなどだ。
■ルビオ国務長官「違法、容認できない…世界にとって危険」
ホルムズ海峡通行料の徴収問題は、米国・イスラエルとイラン間の停戦交渉における重要な争点に浮上した。米国ドナルド・トランプ政権がパキスタンを通じて提示した15項目の停戦案には、核プログラムの全面廃止やウラン濃縮の禁止に加え、ホルムズ海峡の自由航行を保証する旨が盛り込まれていた。一方、イランはホルムズ海峡に対するイランの主権行使を必ず保証する旨の公式回答書を米国側に送った。
米国の停戦条件である「ホルムズ海峡の自由航行」の保証は、イランの通行料徴収体制と正面から衝突するため、この問題を解決するのは容易ではないとみられる。マルコ・ルビオ米国務長官は、27日パリで記者団と会見し、解決すべき課題としてイランの通行料徴収制度導入の可能性に言及し、「これは違法であるだけでなく容認できない事態であり、全世界にとって危険なことだ」と批判した。