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2千キロを飛ぶ自爆ドローン、おとり作戦…イランのドローンはいつまで通用するか

登録:2026-03-10 03:05 修正:2026-03-10 07:48
ウクライナ戦争初期の2022年10月、ウクライナの首都キーウに飛来したロシア軍のイラン製ドローン「シャヘド」/AP・聯合ニュース

 米国とイスラエルがイランへの空爆を開始した先月28日(現地時間)、アラブ首長国連邦(UAE)やバーレーンなどの中東の空は、バイクが疾走するようなごう音に覆われた。エイのような形をしたイラン製の無人機(ドローン)の群れが目標に急降下した際に鳴り響いたエンジン音だ。ドローンは地上から発射された迎撃ミサイルとの数秒間の追跡戦の末、空中で爆発したり、防空網を突破して軍事基地や高層ビルに突き刺さったりした。SNSには、驚がくする市民の叫び声とともに撮影されたドローンの爆発映像が続々と投稿されている。

3日、イラクのアルビルの米国領事館と空港付近。上空でイラン軍のドローンが防空兵器に撃墜されている/EPA・聯合ニュース

 ドローンの恐怖が、ウクライナに続いて中東を襲っている。イランは欧米の軍隊に対する通常空軍力の劣勢を覆す「非対称戦力」として、さまざまなドローンを開発してきた。米国およびイスラエルとイランとの戦争ではそれらを、ミサイル攻撃に対する報復攻撃の要として用いている。米軍のドローン撃墜用防空兵器が底をつくのが先か、イランのドローン発射能力が底をつくのが先かが、この戦争の勝敗を分けるものとして浮上している。

■イランの自爆ドローンは6千機

 イランは世界で自爆ドローンを最も多く保有している国のひとつだ。米国に本部を置く「米国家安全保障ユダヤ研究所(JINSA)」の先月の報告書によると、イランはイスラエルと米国がイランの核施設を空爆した昨年6月の「12日間戦争」前の時点で、数千機の各種ドローンを保有していた。12日間戦争で一部を消耗したものの、今年1月に1千台を増備し、損失分のほとんどを補充している。報告書は「イランは現在も攻撃能力を多様化、拡大するためにドローンの数を増やしている」と評している。

 イラン軍の主力ドローンは、エイのような形をした「シャヘド-136」。2021年末に初公開されたこのドローンは30キロの爆薬を積み、最大2500キロメートルを飛行して自爆する。速度は時速180キロで、巡航ミサイルや航空機よりも遅い。しかし滞空高度が4000メートル以上に達するため、目標の近くで高度を下げる前に携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)や個人用の火器で撃ち落とすのは難しい。

イラン革命防衛隊は地下トンネルの映像を2日に公開。かなりの量のドローンやミサイルなどが備蓄されている=ファルス通信のテレグラムをキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 趣味用の一人称視点(FPV)ドローンのようにリアルタイムで映像を見ながらシャヘドが操縦されることはまれ。「スターリンク」のような衛星インターネットに接続されていない限り、操縦者から100キロほど離れると映像が送信できない。対してイラン軍やロシア軍は、巡航ミサイルの発射と同様、目標の座標を入力するだけでシャヘドを発射している。

 そしてイラン軍は、このドローンを巡航ミサイルよりも一度に多く発射できる。シャヘドの1発あたりの価格は約2万ドル(約320万円)で、長距離飛翔体の中では最も安価な部類に入るからだ。フランス日刊紙「ル・モンド」は複数の軍事研究機関の話を引用し、イラン軍のシャヘド保有数は4千~6千機にのぼると分析した。

 イラン軍はミサイルを発射して帰還するドローンも運用している。「カマン-22」は最大飛行距離が2000キロで、射程200キロの巡航ミサイルを発射する。シャヘドのような形をしたおとりドローンもある。木の板などで作られたおとりドローンは、爆薬を積まずに複数で群れて飛び、敵に防空兵器を浪費させる。

 イラン軍は、高速巡航ミサイルや各種ドローンを様々な高度で同時に飛ばすというやり方で相手を悩ませている。ブルームバーグ通信によると、イラン軍は開戦後の最初の48時間でUAE、バーレーン、ヨルダン、クウェート、カタールに対し、ミサイル385発とドローン881機を発射した。

4日、イスラエルのエルサレム上空で、イスラエルの防空網「アイアンドーム」が飛翔体を迎撃している/EPA・聯合ニュース

■100倍高価なミサイルでドローン迎撃

 イランがドローン開発に依存しているのは、敵国イスラエルに比べて戦闘機などの通常空軍力が著しく劣っているからだ。仏紙「ル・フィガロ」によると、イランは戦闘機を140機あまり保有しているが、F-4、F-5、F-14などの1990年代以前の旧型の米国製機種が大半を占めている。F-14は1986年の映画「トップガン」で俳優トム・クルーズが操縦していた戦闘機だ。

 一方、イスラエルはステルス機F-35など、戦闘機を340機保有している。米国から新たな戦闘機が買えないイランとしては、安く被害を与えうるドローンに注目したのだ。地中海戦略研究財団のピエール・ラズー学術研究局長はル・フィガロに、「重火器の確保が難しくなっているため、イランは(ドローンやミサイルなどの)空中・弾道戦力に集中している」と説明した。

 中東諸国と米軍は主に、迎撃ミサイルでドローンを撃墜している。地対空ミサイル「パトリオット(PAC)-3」が代表的なものだ。中東に駐留するフランス軍と英国軍は、戦闘機の空対空ミサイルでシャヘドを迎撃している。英国軍は、軽量ミサイル「マートレット」を装備したヘリコプター「ワイルドキャット」を2機、キプロスに送ってもいる。

 問題は、迎撃ミサイルがドローンよりもはるかに高価なことだ。PAC-3(約300万ドル)の価格はシャヘド(約2万ドル)の150倍ほど。ル・フィガロはジャン・ジョレス財団北アフリカ・中東研究所の話を引用し、2024年4月のイランによるイスラエル本土への空爆の際にイスラエルが短距離防空網(アイアンドーム)稼働に使った金額は、イランの攻撃への支出の7倍にのぼると指摘した。

 米カーネギー国際平和財団のシニアフェロー、ダラ・マシコット氏は「パトリオットは弾道ミサイルに対応するためのものだが、それをシャヘドの迎撃に過度に使用すると、在庫が深刻に減りうる」と指摘した。

2012年10月22日、イスラエルのハイファ近郊で作戦中の2台のパトリオットミサイル発射機/AFP・聯合ニュース

■ドローンと迎撃兵器、どちらが先に底をつくか

 さらに、イランのドローンの精度が予想以上に高いことも、防衛側を悩ませている。2日にサウジアラビアの米国大使館の屋根がドローンで損傷したのに続き、3日にはUAEのドバイの米国領事館のそばにドローンが落下し、火災が発生した。オランダ・ライデン大学のアンドリュー・ゴサフ教授は仏紙「リベラシオン」に「イランのドローンは12日間戦争でイスラエルに発射されたミサイルよりもはるかに精度が高い。米大使館への攻撃でそれが明らかになった」と指摘した。

 また「これまで中東諸国は長期的な結果を考慮せず、領土に飛来するすべての飛翔体を迎撃してきた。しかし(防空兵器の)備蓄量を節約しなければならなくなると、軍事や政府の重要施設の防衛に集中し、領土全体の防衛は諦めなければならなくなるだろう」との見通しを示した。

 米国は、ドローンに対する防衛のノウハウを蓄積してきたウクライナに支援を求めている。ロシアはウクライナ戦争の初期から、数千機のシャヘドを友好国イランから導入し、一日で最大800機を使ってウクライナを攻撃してきた。そのためウクライナは、MANPADSや低速の航空機による射撃、ミサイル、ドローン迎撃用ドローンなどからなる多層防衛システムを発展させてきた。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は5日、Xに「シャヘドからの中東防衛に対する支援を米国から要請された」と投稿した。

ウクライナの軍需企業「ワイルドホーネット」のドローン迎撃用ドローン「スティング」が飛行実験のために離陸する様子。スティングは最大飛行距離25キロ、シャヘドなどのロシア軍のドローンに突っ込んで落とす=ワイルドホーネットのユーチューブ動画より//ハンギョレ新聞社

 ウクライナのメーカーは、シャヘドに特化した追跡・破壊機能を備えた迎撃ドローンを開発している。英紙「ガーディアン」によると、価格は1000ドル(約16万円)で、シャヘドの20分の1。ただし、中東諸国の軍が新たな兵器に熟達し、自国の兵器システムと連携させるには数カ月かかる可能性があるとリベラシオンは指摘した。

 米軍はドローンやミサイルの発射機の破壊にも力を注いでいる。シャヘドは小型の一人称ドローンのようにその場で垂直離着陸するのではなく、発射レールから推進力を得る必要がある。発射機を破壊すれば、イランは一度に多数のドローンを飛ばして防空網をかく乱することが困難になる。

 米国のヘグセス国防長官は2日の記者会見で、それを「矢よりも弓兵を狙う」戦略だとして紹介した。ダン・ケイン米統合参謀本部議長は4日、イランの自爆ドローンの発射回数が戦争初日より73%減少していると語った。

 最終的に、米軍と中東諸国の防空兵器と、イランのドローンおよび発射機のどちらが先に底をつくかが、戦争の行方を左右するとみられる。防衛と攻撃のコストパフォーマンスも勝敗を分ける。ル・フィガロは「この戦争は単なる軍事衝突にとどまらない、産業と物流の戦争だ」と解説した。

チョン・ホソン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1248291.html韓国語原文入力:2026-03-09 05:00
訳D.K

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