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裏切り者無間地獄に落ちた韓国保守【寄稿】

登録:2026-01-28 07:23 修正:2026-01-28 11:22
国民の力のハン・ドンフン前代表が14日、国会疎通館で党倫理委員会による除名決定について記者会見を行い、終了後、会見場を後にしている=ユン・ウンシク記者//ハンギョレ新聞社

 保守野党「国民の力」のチャン・ドンヒョク代表はなぜハン・ドンフン前代表を除名しようとしているのか。弾劾反対派と賛成派の対決だとの見方もあるし、二人の間の個人的な恨みが理由だとみる分析もある。しかし、私は「裏切り者フレーム」そのものから考えるべきだと思う。絶えず裏切り者を探し出してきた保守政治家ハン・ドンフンを新たな裏切り者としたのだ。次に裏切り者にされるのは誰か。

 民主進歩陣営でも裏切り者という表現が用いられてこなかったわけではないが、乱用されることはなかった。2008年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が対北朝鮮送金特検を受け入れた時、金大中(キム・デジュン)元大統領の支持者たちは恨んだだろうが、盧武鉉を裏切り者とは呼ばなかった。2017年に文在寅(ムン・ジェイン)、アン・ヒジョン、李在明(イ・ジェミョン)が大統領候補の座をめぐって激しく争った時も、覇権主義や野合という単語が出てきただけで、相手を裏切り者呼ばわりすることはなかった。むしろ民主党では、妥協的な政治路線を表す比喩的な単語として、「サクラ」や「スイカ」のような単語(日和見主義、民主党内部の隠れ保守支持者を指す)が、裏切り者よりよく用いられた。一方、保守陣営では裏切り者という言葉が乱用される。単語の使用だけでなく、裏切り者へのアレルギー反応が示されることが多い。なぜだろうか。

 右翼権威主義研究によると、保守右派は政府や指導者に対して高水準の尊重と服従を示すとともに、権威によって定められた規範に違反する集団に攻撃的な態度を取る。朴正熙(パク・チョンヒ)大統領のような権威主義的指導者に対する郷愁が強いのにも理由がある。脳科学研究によると、保守的性向は進歩のそれに比べて恐怖と不安を司る扁桃体(へんとうたい)が活性化している。脅威に対する恐怖心が強いため、変化よりも現状維持と社会的秩序を重視する。道徳心理学者のジョナサン・ハイトの研究によると、人間には6つの道徳基盤があり、進歩派はそのうち配慮、自由、公正の3つだけが働くが、保守にとってはそれに加えて忠誠心、権威、高貴さも重要となる。つまり保守にとって、権威にたてつく者はシステムを破壊する者であるため、容認できない。

 これに韓国的特殊性が加わる。「裏切り者」という単語が保守政治に本格的に登場したのは2015年。朴槿恵(パク・クネ)大統領がセヌリ党のユ・スンミン院内代表(当時)を名指しして「裏切りの政治」を審判してほしいと言った時だ。政治家朴槿恵は、父親がキム・ジェギュに暗殺されるのを見たのだから、内部の裏切り者ときたら身の毛もよだつ思いだったことだろう。しかし、この一言がもたらす後遺症は、朴槿恵本人も知らなかったはずだ。

 朴槿恵、尹錫悦(ユン・ソクヨル)両大統領の弾劾を経て強硬支持層は、保守の没落は裏切り者のせいだという確信を持つようになった。国会議員が民主党と野合さえしていなかったら、2人の指導者が弾劾されることはなかったという主張だ。彼らは2020年4・15総選挙で103議席にとどまった未来統合党の歴史的敗北をめぐっても、新たな解釈をはじめる。同党のファン・ギョアン代表(当時)が裏切り者を無差別に受け入れ、アイデンティティーが不明確だったから敗北したというのだ。これにこたえるかのように、ファン・ギョアンは2023年3月に党代表選挙への出馬を宣言した際に、記者会見でこのように述べた。「かつて4・15総選挙を控えて自由右派の大統合が絶対に必要だと信じ、ユ・スンミン、イ・ジュンソクら正しい未来党の勢力と統合を推進したが、その統合が千秋の恨事となった。あのような失敗は絶対に二度としない」

 今や裏切り者騒動は、かつてとは質的に異なる。政治の目的そのものが裏切り者の処断になってしまっている。1人の裏切り者を処断したら、新たな裏切り者を探し回る。絶えず新たな宿主を探し回るウイルスのようだ。政治家たちは裏切り者ウイルスに感染することを恐れて震えている。自分が裏切り者にされないようにするために、相手を裏切り者だと非難する。一度でも裏切り者と言われたことのある有力政治家をあげると、ユ・スンミン、キム・ムソン、チュ・ホヨン、キム・ソンテ、オ・セフン、イ・ジュンソク、ナ・ギョンウォン、ウォン・ヒリョン、ホン・ジュンピョ、アン・チョルス、ハン・ドンフン、チャン・ドンヒョクなど、数えきれない。

 絶望的なのは、強硬支持者を説得して難局を打開するリーダーシップのある保守政治家が見当たらないことだ。公認さえ得られればよいと考えて沈黙する嶺南(ヨンナム=慶尚道)の土豪政治家、強硬支持層を利用して権力を握って政敵を排除しようという付和雷同政治家、そして裏切り者呼ばわりされた政治家がいるだけだ。保守が社会の主流だった時代は、進歩派の人間を迎え入れて領域を拡大していたが、パイが小さくなると外部からの輸血も絶え、ライバルを打ち負かそうという欲求だけが残った。そんな中で李在明大統領による保守侵攻まで起きている。ハン・ドンフンを排除した後、地方選挙で敗北したら、支持層は次に誰を新たな裏切り者とするのだろうか。「裏切り者無間地獄」から脱する道が見えない。

//ハンギョレ新聞社

キム・ジュニル|時事評論家 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1241972.html韓国語原文入力:2026-01-27 18:51
訳D.K

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