中国の習近平国家主席の11年ぶりの韓国国賓訪問と李在明(イ・ジェミョン)大統領との初の韓中首脳会談を通じて、「THAAD(高高度防衛ミサイル)をめぐる軋轢(あつれき)」から9年ぶりに韓中関係が復元の道へと入った。1日、慶州(キョンジュ)国立博物館で行われた韓中首脳会談で、両首脳はミクロとマクロの経済分野でかなりの進展を遂げる一方、「朝鮮半島非核化」など敏感な事案での課題を確認した。
ウィ・ソンラク国家安保室長は、当初予定された1時間を越え1時間35分にわたって行われた首脳会談後の会見で、「韓中関係を全面的に復元する成果があった」と評価した。さらに「11年ぶりに行われた(習主席の)国賓訪問は、韓国が国益中心の実用外交を進める中で、韓中関係の発展が安定的な軌道に入ったことを示している」と述べた。
今回の会談の最も具体的な成果は「ミクロ経済」分野から出た。両首脳は韓中自由貿易協定(FTA)の第2段階であるサービス・投資分野交渉の実質的な進展に向けた協議に拍車をかけると共に、サプライチェーンの安定化に向けた協力を強化することにした。2009年に始まった韓中通貨スワップ協定を延長するなどの了解覚書(MOU)7件にも署名した。韓中関係の信頼が弱い状況で、まず民生・経済分野で両国国民が利益を体感できる内容を進展させ、関係回復の動力を育てていくという李大統領の実用外交ロードマップが反映された。
李大統領が会談を控えて強調し続けた朝鮮半島非核化に向けた中国の役割については、原則的な立場を確認するにとどまった。李大統領は同日、首脳会談の冒頭発言で、「朝鮮半島の平和と安定を定着させる上でも、中国の役割は非常に重要だ」とし、「朝鮮半島が安定してこそ北東アジアも安定し、それが中国の利益にも合致する。大きな役割を期待している」と述べた。しかし、会談後の中国の発表文には朝鮮半島に関する言及が全くなかった。ウィ室長は「習主席も朝鮮半島問題の解決と朝鮮半島の平和安定のために努力し続けると述べた」としつつも、「具体的に北朝鮮との対話を再開するにあたって、中国がどのような役割を果たすかについて議論が行われたわけではない」と説明した。
李大統領の度重なる提案にもかかわらず、習主席が最後まで留保的な立場を示した背景には、朝中関係に対する考慮があったものとみられる。北朝鮮は同日公開したパク・ミョンホ外務次官談話で、韓国が中国と「朝鮮半島非核化」を話し合うことは「ばかげた夢」だとし、強く反発した。
李大統領と習主席は、中国のハンファオーシャン制裁、西海(ソヘ)での構造物設置、限韓令などの敏感で難しい事案についても話し合ったが、具体的な答えは得られなかった。ウィ室長はハンファオーシャン問題が首脳会談で議論されたとし「米中間の問題が解決されれば、そのようなムードの中でハンファオーシャンの子会社に対する制裁問題も生産的な進展がありうる」と説明した。ウィ室長は西海の暫定措置水域(PMZ)に中国が設置した大型鉄製構造物と限韓令について、「実務協議を通じて互いに意思疎通を図り、問題を解決していこうという共感があった」とだけ伝えた。特に、限韓令と関連してウィ室長は「文化に対する交流・協力を活発に行い、コンテンツ(の協力に)取り組むことへの共感があった」とする一方、今後実務的な意思疎通が必要だと述べた。一部では「限韓令解除」への期待感が性急に高まっているが、まだそのような段階ではないという意味だ。
韓国の原子力潜水艦建造について、両首脳はひとまず「意見の相違」を露呈しない方を選んだ。ウィ室長は原潜問題を議論したのかという質問に「今回の会談で両首脳は様々な懸案について多くの意見を交換した」とし、「そのような脈絡で多様な安保イシューが扱われたとだけ申し上げたい」と答えた。これに先立ち、中国外務省は「韓米は核不拡散原則と地域安定を守るべき」として警戒感を示したが、この日の首脳会談後、中国側の発表文にはこの事案が言及されなかった。原潜の建造には時間がかかるため、中国は韓米協議が具体化するのを見ながら対応するものとみられる。
国家安保戦略研究院のヤン・ガビョン首席研究委員は、「李大統領と習主席はいずれも最悪だった韓中関係を円満に回復させることに焦点を当て、困難な問題は今後の課題として残した」とし、「韓中関係が徐々に回復し、協力が強化されれば、朝鮮半島の非核化、西海の構造物などの難題にも進展がみられるだろう」と語った。さらに「回復の第一歩を踏み出した韓中関係を安定化させるために、来年初めに李大統領の答礼訪問につなげる必要がある」と強調した。習主席は李大統領の訪中を要請した。