李在明(イ・ジェミョン)大統領は15日、光復節(独立記念日)80周年記念演説で、南北関係を「平和的統一を目指す過程にある特殊関係」と規定し、「平和な朝鮮半島は『核のない朝鮮半島』」だと述べた。「統一を目指す特殊関係」と「非核平和の朝鮮半島」という歴代の民主党系列の政府の南北関係認識と戦略基調を継承するという宣言だ。
金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と李大統領の南北関係の認識および戦略基調には「接点」がない。金委員長は「北南は最も敵対的な二国間関係」だとしたうえで、「絶対に核を放棄することはできない」と述べてきたからだ。だが、南北の最高指導者の基本認識に「接点」がないことが、直ちに南北間の緊張と衝突の危険性を高めるわけではない。6月4日の李在明政権発足後、南北関係はむしろその反対方向に進んでいる。北朝鮮向けビラ・汚物風船の中止、拡声器放送の中止、宣伝放送・妨害電波送出の中止など、互恵的やりとりで軍事境界線一帯の緊張が少なからず和らいだ。「改善」までは行かなくても、「管理」はできているわけだ。
李大統領の対北朝鮮メッセージには、北朝鮮が粘り強く求めて来た内容もあった。李大統領が3項目にまとめて発表した「現在の北朝鮮体制」尊重▽吸収統一の排除▽敵対行為禁止がこれに当たる。
つまり、韓国側が持っている南北関係の認識を北朝鮮側に強いるよりも、北朝鮮の懸念を尊重し、その解消に向けて努力するという意味だ。それと共に、直ちに接点を見出せない「遠い未来」をめぐって対立するよりは、「9・19軍事合意」の「先制的かつ段階的復元」のように「今すぐ」できること、例えば「実質的緊張緩和」と「信頼回復のための措置」を取り、「忍耐を持って着実に解決していこう」と呼びかけた。これも北朝鮮が反発するような内容ではない。
さらに李大統領は、北朝鮮が拒否している「核なき朝鮮半島」についても、「非核化は短期的に解決できない複合的で非常に難しい課題であることを認める」とし、北朝鮮に「先に非核化すべき」と圧力を加える意向がないことを明確にした。「交流協力の再開」に関しては、「公利公営・有無相通の原則」に基づいて「交流協力の基盤」を回復し、「南北住民の暮らしを実質的に改善」する「平和共存と共同成長の朝鮮半島の新時代」を戦略目標に掲げた。そして「北朝鮮側の呼応を忍耐をもって期待する」という言葉で、急がず、催促もしないという意志も同時に明らかにした。
このように李大統領が差し伸べた手に、金委員長が最終的にどのような反応を示すかはまだ分からない。「金正恩の代弁人」と呼ばれる朝鮮労働党中央委員会のキム・ヨジョン副部長が2回発表した談話で、「ソウルの希望は砂漠で花が咲くことを願うような愚かな夢」だと蔑んだが、これまで金委員長は「李在明政権」について自ら言及したことはない。
来年1月に予定されている労働党第9回大会で、韓国に対する戦略基調を決めるものとみられている。複数の元高官は「政府が緊張緩和と信頼醸成措置を着実に実行し、10月末の慶州(キョンジュ)アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議で、『平和な朝鮮半島』のビジョンに対する周辺国首脳の支持を得ることができれば、大きく役立つだろう」と語った。