米国の「相互関税」交渉を主導した米通商代表部(USTR)のジェイミソン・グリア代表が7日(現地時間)、メディアへの寄稿で、世界貿易機関(WTO)体制の終結を宣言した。米国が関税などを武器に他国の貿易障壁を撤廃する、いわゆる「トランプ・ラウンド」を確立したというものだ。
グリア代表はこの日、ニューヨーク・タイムズへの寄稿で「米国は、関税と国外市場へのアプローチと投資のための交渉を並行することによって、新たな貿易秩序の軸を設けた」としたうえで、「われわれは今、『トランプ・ラウンド』を目撃している」と主張した。米国のドナルド・トランプ大統領がこの日、世界各国に課した相互関税を、1992年の「ウルグアイ・ラウンド」などの多国間通商協定に例えたのだ。
グリア代表は、WTOに代表されるこれまでの貿易秩序は「不公平だった」と非難。「WTOが支配するこれまでの秩序は、理論上は経済的効率性を追求し166の加盟国の貿易政策を規定するが、支持することも持続することもできない」として、「米国はこの体制を維持するために雇用と経済安全保障を失い、他の国々は必要な改革を達成できなかった。その最大の受益者は中国だったということは驚くべきことではない」と主張した。
さらに、「これまでのシステムは、関税を公共政策の合法的な道具として認めなかった。そのため米国は核となる製造業などを保護する関税を犠牲にせざるをえなかった」として、「その間、他の国々は米国製商品を自国市場から締め出し、補助金・賃金抑制・為替操作などによって対米輸出を人為的に促進した」と述べた。
一方、トランプ大統領が4月2日の相互関税課税宣言後に各国と繰り広げた交渉については、「公正だ」と自賛した。グリア代表は、トランプ大統領が先月27日、スコットランドにある自身が所有するターンベリーのゴルフ場で、欧州連合(EU)のウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長と15%の相互関税などに合意したことを言及し、「これは公正でバランスが取れており、多国間機構に対するあいまいな期待ではなく、具体的な国益を指向する協定」だと規定した。
また、「(関税交渉の過程で)貿易相手国が自国市場を米国に開放し、経済や国家安全保障の問題に関する合意を成し遂げ、貿易をよりいっそう持続可能な方向に再確立するうえで、今回ほど強い関心を示したことはない」として、「わずか数カ月の間に米国はWTOでの成果のない数年間の交渉よりも広い海外市場へのアクセスを確保した」と主張した。
グリア代表は、交渉相手国から米国に対する投資を引き出した成果として韓国についても述べた。「韓国は15%の関税とともに、米国の自動車基準を受け入れた」として、「韓国は非市場的な競争のもとで衰退した米国の造船業の再活性化も助けるだろう」と明らかにした。韓国が関税交渉の過程でいわゆる「MASGA(米国の造船業を再び偉大に)」プロジェクトのために、投資や協力ファンドの1500億ドルを含む3500億ドルの投資を約束したことに言及したのだ。
さらに、他国が今回の貿易交渉を履行するように強制すると主張した。グリア代表は「合意履行を詳細に監視し、(相手国が)履行しない場合は、必要に応じてより高い関税率をすみやかに再課税する」と宣言した。