「MASGA」(「Make American Shipbuilding Great Again 米国造船業を再び偉大に」)プロジェクトに向けた1500億ドル規模のファンド造成と投資のために、韓国の造船業界が膝を突き合わせ意見収れんに乗り出した。韓国政府は韓米首脳会談の主要議題になる「国防費増額」問題にもMASGAプロジェクトを活用する方案を模索している。
3日の造船業界の情報によると、韓国の3大造船企業であるHD韓国造船海洋、ハンファオーシャン、サムスン重工業と韓国造船海洋プラント協会(造船協会)が、韓米MASGAプロジェクトに関するタスクフォース(TF)を構成し活動に突入した。業界関係者は「4月にワシントンで開かれた韓米通商協議で、米国が韓国との造船分野の協力に言及した後に構成された『対米タスクフォース』活動の延長」だとし「企業の意見をまとめて政府に伝え、最終的には韓米MASGAプロジェクトに協力することが目的」だと説明した。
2024年基準で受注シェアが0.1%まで低下した米国の造船業を再び強化するために、韓国政府が約束した1500億ドルのプロジェクトファンドの使用先について、韓国政府は「米国内の新規造船所建設、造船人材育成、造船関連サプライチェーン再構築、造船関連の維持・補修業務(MRO)費用など」と説明している。造船業界はこのファンドで、米国現地の造船所の持分買収と新規造船所設立▽韓国企業が投資した現地造船所の船舶受注に対する金融(融資・保証)支援▽自動運航船舶、液化天然ガス(LNG)運搬船、砕氷船などの技術開発支援などが可能だとみている。
造船3社は、韓国政府の積極的な対米進出構想を歓迎しながらも、速度では差を見せている。昨年12月、1億ドルを投資して米国のフィリー造船所を買収したハンファオーシャンが最も攻勢的だ。ハンファオーシャンは韓国造船業界で初めて米海軍の艦艇メンテナンス(MRO)事業を受注し、米国現地で軍艦と特殊船を直接建造する事業も推進する計画だ。一方、世界1位の造船会社であるHD現代は、米国現地への投資に関心を示しながらも慎重な立場だ。HD現代は今年6月から米国現地のエジソン・シュエスト・オフショア(ECO)とLNG二重燃料コンテナ船を共同建造するプロジェクトを推進中であり、防衛産業の造船会社であるハンチントン・インガルスとは技術協力のための了解覚書(MOU)を締結した。民間商船中心のポートフォリオを持つサムスン重工業は相対的に米国との協力経験が少なく、技術支援の側面で役割を模索中だという。
企業の立場が分かれるのは、対米投資が招きうる負担のためだ。造船業界の関係者は「米国現地の造船所の老朽化が激しく、短期間に生産性を高めることは容易でないかもしれない」として「韓国に比べて高い米国の最低時給と熟練工を育てるための教育訓練のコストなどを考慮すれば、越えなければならない難題が多い」と話した。
ただ、トランプ大統領の残りの任期(3年半)の間に韓米造船協力が産業的な成功をおさめられるかという懸念があるにもかかわらず、企業と政府が攻撃的に飛び込む必要があると専門家たちは助言する。ナイス信用評価のパク・ヒョンジュン責任研究員は、「昨年12月に発議されたが会期満了で廃棄された船舶法(SHIPS for America Act)発議案は、米国内の船舶生産を増やす内容が含まれており、共和党と民主党いずれも多くの議員が名前を上げた超党派的な関心事」だとして「韓国政府が支援する枠組みの中でうまく協力していけば、韓国造船企業が米国市場に進出する良い機会になるだろう」と話した。
韓国政府関係者はこの日「対米投資のためにファンド基金(1500億ドル)で現地造船所買収などどんな新規事業ができるか、まず企業側の意見を取りまとめる手続きを踏む」とし「200兆ウォン(約21兆円)を超える金額を一度に短期間で使うことはなく、企業と米国の両方に役立つシグネチャープロジェクト(代表事業)を探すことが急務」だと明らかにした。
一方、韓国政府は米国が要求する「国防費増額」問題にもMASGAプロジェクトを活用する案を検討している。韓国政府の関係者はこの日ハンギョレに「MASGAプロジェクト210兆ウォンの中で軍艦建造、修理費用は国防費にも算定されると見れば良い」と話した。先月31日(現地時間)、ワシントンで記者団に会った韓国政府高官も、「我々が国防費については様々な計算法を変えることを含めて話しているため、近いうちに話に進展があるとみられる」とし、「造船についても計算を変えれば、(国防費に含まれることが)あり得る」と説明し、米国内の船舶建造、米国艦艇修理費などが国防費に含まれる可能性があることを示唆した。
そうなれば実際に国防費支出を増やさずに「書類上の金額」を増やす効果をもたらすと韓国政府は期待している。米国は韓国の国防費増額など「安保パッケージ」の議論を韓米首脳会談まで先送りした状態だ。ドナルド・トランプ米大統領は、韓国政府に国防費を国内総生産(GDP)の5%水準に増額することを要求している。