本文に移動

イスラエル、2週間が戦争の限界か…防空網の費用負担が困難な状況

登録:2025-06-21 10:39
18日(現地時間)イスラエルの防空システムである「アイアン・ドーム(Iron Dome)」がイランから発射されたミサイルをテルアビブ上空で迎撃している。イスラエルとイランは13日、イスラエルが「ライジング・ライオン(Rising Lion)」作戦を開始してイランを攻撃して以降、相互に空襲を繰り返している=テルアビブ/AP・聯合ニュース

 イランを攻撃しているイスラエルが、1日で少なくとも2億ドル(約300億円)を戦費として消費しているのにくわえ、防空網が急速に消耗している。2週間以上戦争が長期化すれば、戦争遂行能力に深刻な限界が来るものとみられる。

 イスラエルはイランとの戦争で、防空網の稼動だけで数千万ドルから2億ドルまで費やしているだけでなく、戦闘機の出撃、イランからのミサイルによる被害、産業の稼動中断などによって、負担が指数関数的に増大しており、2週間あるいは1カ月間さらに戦争が続く場合、イスラエル経済は耐えられなくなると、ウォール・ストリート・ジャーナルが19日報じた。イスラエルのライヒマン大学のアロン経済政策研究所の評価によると、イスラエルはイランとの戦争が1カ月続く場合、約120億ドル(約1兆8000億円)を支出する必要がある。

 イスラエルの戦争遂行で最も重い費用は防空網の運営だ。1日に少なくとも数千万ドルから2億ドルが必要とされる。イスラエルの多重防空網の一つである「ダビデ・スリング(ダビデの投石器)」は、ミサイル、ドローン、航空機の迎撃用だが、動作するたびに迎撃ミサイルが少なくとも2発発射され、約70万ドル(約1億円)の費用がかかる。長距離弾道ミサイル迎撃用のアロー3は、1回に400万ドル(約5億8000万円)が必要とされる。イランは今回の紛争で、イスラエルにこれまで400発のミサイルを発射し、相当数がイスラエルの防空網を突破した。

 最新鋭戦闘機であるF-35は、1時間の飛行に燃料費用だけで1万ドル(約145万円)が必要とされる。イランとの距離は少なくとも1000キロメートルあるため、イスラエルの戦闘機は空中給油機の稼動を必要とする。統合直撃弾(JDAM)や2000ポンド汎用爆弾「MK84」などの戦闘機の装着爆弾は別途費用がかかる。

イランの弾道ミサイルを受けて廃虚になったイスラエル南部のソロカ病院の20日の様子=EPA・聯合ニュース

 しかも、イスラエルは、今回のイランとの紛争で、本土で建国以来最大となる戦争被害を受けている。数千軒の建物と家屋が破壊・破損した。少なくとも4億ドル(約580億円)の被害だ。何より、イスラエルは今回の戦争で経済が麻痺状態にある。イスラエル経済はここ数日間、イランのミサイル攻撃の前に麻痺した。必須事業の労働者だけが働き、飲食店などほとんどの業種で稼働できずにいる。国際空港も数日間閉鎖され、現在は部分的に運営している。

 アロン経済政策研究所のツビ・エクスタイン所長は「毎日、ガザ戦争やヒスボラとの戦争よりもはるかに高い費用を負担している」と評した。イスラエル銀行のカルニッツ・フラグ前総裁は「戦争費用を決める主な要因はその期間」だとしたうえで、「1週間程度ならば大丈夫だが、2週間や1カ月となると完全に話が違ってくる」と懸念を示した。

 今回の戦争で、イスラエル防衛の核心資産である防空網の消耗も深刻化すると、分析されている。イスラエルは戦争初期、世界最高水準の防空網でイランのミサイルを迎撃し、攻勢を続けたが、迎撃ミサイルの消耗速度が生産速度を追い抜き始め、急速な減少が懸念されていると、ニューヨーク・タイムズが19日報じた。このため、イスラエルは、戦略的要衝地と人口密集地域に優先的に防空網などの防衛資源を配備する方式に切り替えている。

 イスラエルは、「アロー」システムを含む少なくとも7つの防空システムを運用しており、米国からは艦艇基盤迎撃システムやレーザー兵器まで支援されている。しかし、戦線が多方面に拡張され、防御網の負担が重くなっており、ディモナ原子炉やテルアビブの軍事本部のような戦略施設を保護する迎撃を最優先に定めているという。

 ラン・コチャフ予備役空軍准将は「迎撃ミサイルは米粒ではなくて、数量は有限だ」と述べ、防空網の持続可能性に懸念を示した。実際にイスラエルは、1日に数百発のミサイルを迎撃し、一部は重複して迎撃しており、正確な消耗量さえ把握が困難な状況だ。

 イスラエルの情報機関であるモサドの元高官のゾハル・パルティ氏は「今こそ、イスラエルにとって、イランの核施設の目標を攻撃するのに成功し、勝利を宣言して戦争を終わらせる2~3日の機会」だと述べた。イスラエルが早期に終戦しない場合、戦略的な困難に直面しかねないということだ。

 米国のドナルド・トランプ大統領は19日、イスラエルが要請しているイラン攻撃への参加の決定を、2週間以内に行うことを明らかにし、イスラエルとしては、それまでに防空網の消耗と戦費負担が増大する戦略的ジレンマが迫ってきているためだ。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1203939.html韓国語原文入力:2025-06-21 08:30
訳M.S