「実用外交」路線を掲げた李在明(イ・ジェミョン)大統領の就任後、凍りついた韓中関係が雪解けを迎えるという期待が中国で広がっている。米中覇権争いが進む中で、李大統領が韓米同盟と韓中協力という二重の課題をバランスよく遂行できるかに関心が集まっている。
官営「環球時報」などの中国メディアは4日付で、李在明大統領の「実用外交」と尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の「価値観外交」の違いを指摘し、「李大統領就任後、韓中関係が改善されるだろう」という見通しを示した。李大統領は大統領選挙運動期間中、「国益中心の実用外交」を外交・安全保障の中心に据えた。これをもとに、韓米同盟が対外政策の基盤であることを前提にしながらも、前政権時代に悪化した韓中関係を適切に管理する計画だ。同盟国である米国と日本などに傾いていた外交の重心を戦略的に再調整する方針だ。
中国の専門家たちは、韓国の新政権の「実用主義」の外交方針が、韓中関係復元のチャンスになると期待している。上海対外経済貿易大学韓半島研究センターの詹徳斌所長は、前政権の外交政策を「極端な『一方状態』」だと指摘したうえで、「新政権のバランスの取れた政策が韓中関係に肯定的な影響を与えるだろう」と予想した。中国社会科学院アジア太平洋グローバル戦略研究院の王暁玲副研究員は「前政権が『価値観外交』を固守したのとは異なり、李大統領のような革新勢力は国家利益から出発し事案を判断する」とし、貿易交渉推進など冷ややかになった両国関係を解くための実質的な措置があると分析した。
韓中間の緊張は、戒厳・弾劾政局の中で慎重に緩和されてきた。今年2月、中国の習近平国家主席は、中国を訪問したウ・ウォンシク国会議長を首脳級に礼遇し、11月に慶州(キョンジュ)で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議への出席を示唆した。両国の文化・観光交流も次第に拡大し、制限されていた韓国コンテンツの中国市場進出に対する期待感も高まっている。
トランプ政権のけん制の中で、米中間の「バランス取り」は非常に難しい課題だ。米国は「安米経中(安保は米国、経済は中国)」路線を取る同盟国に「中国共産党が追求する罠」だと警告し、対中国圧迫戦略への協力を求めている。一方、中国は韓国をはじめとする周辺国との関係改善を図りながらも、米国第一主義の通商政策に共に対抗しようと説得している。この機会に韓国の外交的空間は広くなる可能性もあるが、同時に米中双方から圧力を受ける恐れもある。
中国では、やや曖昧な「実用外交」の実体を李在明政権が明らかにしなければならないという声もあがっている。中国社会科学院アジア太平洋グローバル戦略研究院の董向栄研究員は「中国と韓国は、実用主義的観点からどんな状況でどのように協力するかを明確にしなければならない」と「環球時報」に語った。また「韓米関係の発展が中国の利益を損ねてはならない」とし、「中国に対し非理性的な態度を堅持していた前政権とは異なり、韓国の新政権はより理性的な態度を取るだろう」と述べた。