韓国大統領選挙を前に、「保守候補の一本化」をめぐる与野党3党の攻防が熱い。野党「改革新党」のイ・ジュンソク候補は繰り返し「独自完走」の意志を明らかにしているが、与党「国民の力」のキム・ムンス候補は一本化に向けた「懐柔」と「圧力」の手を緩めていない。最大野党「共に民主党」もイ・ジュンソク候補に対して「内乱勢力とは一本化しないということを公に宣言せよ」と迫るなど、一本化の動きに神経をとがらせている。一本化をめぐる3党の神経戦は、期限といわれる事前投票日(29~30日)の直前まで続くとみられる。
キム・ムンス候補は25日、遊説先の忠清南道公州(コンジュ)で記者団に対し、「(イ・ジュンソク候補と)様々な角度から会う計画を推進している。もともとルーツが同じなので、努力を続けていく」と述べた。国民の力の考える一本化の期限は28日だ。事前投票がはじまるまでに候補一本化が実現すれば、事前投票用紙の候補者名に「辞退」と表記されるため、投票者の混乱が防げるからだ。
キム・ムンス、イ・ジュンソクの両候補の支持率を合わせればイ・ジェミョン候補を上回るという最近の世論調査の結果は、国民の力をさらに一本化へと向かわせている。韓国ギャラップが20日から22日にかけて、全国の満18歳以上の1007人の有権者に対して実施した無線電話面接調査(信頼水準95%、標本誤差±1.8ポイント、回答率19.5%)によると、支持率はイ・ジェミョン候補45%、キム・ムンス候補36%、イ・ジュンソク候補10%。キム・ムンス、イ・ジュンソク両候補の支持率の合計(46%)がイ・ジェミョン候補を上回る。
問題は、国民の力の望み通りに両候補が一本化しても、支持層が完全に統合されるわけではないということだ。「保守一本化」を仮定した2者対決構図は、どちらに一本化してもイ・ジェミョン候補の支持率には大きく及ばないことを示している。韓国リサーチが韓国放送(KBS)の委託で全国の3000人の有権者に対して実施した無線電話面接調査(信頼水準95%、標本誤差±1.8ポイント、回答率19.5%)では、3者構図ではイ・ジェミョン候補49%、キム・ムンス候補34%、イ・ジュンソク候補8%だったが、仮想2者対決ではイ・ジェミョン候補48%、キム・ムンス候補39%だった。「イ・ジェミョン対イ・ジュンソク」構図では49%対29%で、差がさらに広がった。似たような結果は、大韓民国地方新聞協議会が20~21日に韓国ギャラップに委託して全国の1007人の有権者に対しておこなった電話面接調査(グラフィック)でも得られている。
一本化の「シナジー」どころか「算術的合計」ほどの支持率も得られないのは、両候補を支持する有権者層の年齢、思想傾向、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権に対する評価が異なるためだ。したがって、どちらか一方に一本化されると、もう一方を支持していた有権者は投票の動機が弱まらざる得ない。これは、イ・ジュンソク候補が一本化を強く拒否する理由でもある。遊説先のソウル鍾路(チョンノ)の西巡邏ギル(ソスンラギル)で記者団に応じたイ候補は、キム・ムンス候補に対して、「(私のおかげで)漁夫の利を得ようとしているくせに、一本化フレームで政治を混乱させていないで、この選挙から外れよ」と激しく批判した。
しかし、民主党の立場は異なる。一本化が実現すれば選挙の構図が揺らぎ、世論にどのような変化がもたらされるか予断を許さないからだ。イ・ジェミョン候補陣営は、ひとまず一本化を既成事実化する方向へと向かっている。弛緩した支持層を再結集させるとともに、一本化された際の政治的波及効果を最小化するためだ。イ・ジェミョン候補はこの日、ソウル汝矣島(ヨイド)の党本部で行われた記者懇談会で、「政治的利害関係を検討すると、一本化は双方にとって役立つので、一本化の可能性は非常に高い」として、「結局のところ『内乱一本化』に乗り出すだろう。当然それに備えている」と述べた。