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ソウル中央地検のイ・チャンス地検長が弾劾訴追の棄却後の今年3月13日、ソウル中央地検に出勤している/聯合ニュース

　「検察の指揮体系が崩壊し、主要な懸案事件だけでなく類似受信（違法な出資金・預金集め）、違法私金融、ボイスフィッシング、デジタル性犯罪、麻薬事件など、国民の命や健康、財産にかかわる民生犯罪の捜査もまひすることが懸念される」

　昨年12月5日、野党の「共に民主党」と「祖国革新党」の主導でソウル中央地検のイ・チャンス地検長（検事長）、チョ・サンウォン第4次長、チェ・ジェフン反腐敗捜査第2部長の弾劾訴追が国会本会議で成立した際、ソウル中央地検は「指揮体系の崩壊、犯罪捜査のまひ」を掲げて政界を批判する声明を配布した。イ検事長らは、ドイツモーターズ株価操作事件に関与したキム・ゴンヒ女史（尹錫悦前大統領夫人）に手心を加えて嫌疑なしとしたなどの理由で弾劾訴追された。憲法裁判所による棄却決定で今年3月13日に職務に復帰したイ検事長、チョ第4次長の2人が、わずか2カ月後の今月20日午後、突如として法務部にそろって辞意を表明した。6月3日の大統領選挙を目前にして、検察の指揮体系の混乱はもちろん、選挙・民生犯罪の捜査のまひが懸念される。とりわけ尹錫悦（ユン・ソクヨル）、キム・ゴンヒ夫妻による候補公認介入疑惑の捜査などは、なおざりにされたかたちだ。

　イ検事長は「健康上の理由」をあげている。チョ次長の辞意の理由は明らかにされていない。首都圏のある検事は「キム・ゴンヒ女史に対する手加減操作の疑惑などに対する監察から逃れることを意図したものではないか」と語った。

　イ検事長は尹錫悦前大統領が検察総長だった時代、最高検察庁の報道官を務めていた。水原（スウォン）地検城南（ソンナム）支庁長を務めていた際には、現在「共に民主党」の大統領候補であるイ・ジェミョン氏の京畿道知事時代の城南FC後援金疑惑捜査を進めた。全州（チョンジュ）地検長時代には、文在寅（ムン・ジェイン）元大統領と娘のダヘ氏関連の捜査を進めた。昨年5月にソウル中央地検長に任命されてからは、キム・ゴンヒ女史のブランドバッグ受け取り疑惑と株価操作疑惑にいずれも免罪符を与えた。また、キム女史を検察庁に出頭させて調査せよというイ・ウォンソク検察総長（当時）の指示に逆らって、大統領室警護処の付属庁舎に検事を送って調査するという特恵を提供した。

　検事の懲戒業務にかかわった経験を持つ法曹人は、「検察総長の指示を実行しなかったのは明白な抗命で、監察が行われれば解任の可能性もある重い懲戒理由となる。ソウル高等検察庁が嫌疑なしとの判断を覆して再捜査を決めたドイツモーターズ株価操作事件も、キム・ゴンヒ女史を起訴するという形に結論が変更されれば、誠実義務違反（職務怠慢）で懲戒されうる」と語った。憲法裁はイ検事長らの弾劾訴追を棄却した際に、「証拠を収集するために適切に捜査したか、あるいは捜査を指揮・監督したかについては、多少の疑問がある」と述べている。

　検事懲戒法は、検事が退職を希望する際は法務部長官が懲戒理由の有無を確認すると規定している。検事が懲戒免職されると、弁護士開業が3年間できない。検事の懲戒業務にかかわった経験を持つ法曹人は、「監察が開始されると辞表が出せなくなり、退職手続きも中断されるため、大統領選挙後に予想される監察を逃れるために先制的に辞表を出したとみられる。すでにパク・ソンジェ法務部長官と辞表を受理するかどうかが話し合われた可能性が高い」と述べた。

　祖国革新党は「内乱首魁（しゅかい）尹錫悦の政治検察の代表選手であるイ・チャンスが、難破船から最初に飛び降りた」と批判した。ユン・ジェグァン報道担当は論評で、「イ・チャンスは不当で不義な権力者のために検察権を行使した。イ・チャンスを法廷に立たせることこそ正義だ」と主張した。

ソウル中央地検のチョ・サンウォン第4次長検事/聯合ニュース