与党「国民の力」の候補とハン・ドクス前首相の大統領選における候補一本化は、新たな変数に出会った。最大野党「共に民主党」から出馬するイ・ジェミョン候補の選挙法違反事件を1日に最高裁が有罪を趣旨として破棄し、高裁に差し戻したことでだ。イ・ジェミョン候補の大統領選への出馬そのものは阻めなくても、「絶対強者」と考えられてきたイ候補の大統領選での競争力が打撃を受けるのは避けられない。一方、「反イ・ジェミョン統一陣営論」は一段と力を得ている雰囲気だ。「やってみる価値のある対決」になったため、一本化の圧力はさらに高まるということだ。
■最高裁判所による破棄差し戻し、一本化圧力を強める? 弱める?
1日の最高裁による破棄差し戻し判決の直後、与党のハン・ドンフン候補陣営の戦略総括委員長を務めるペ・ヒョンジン議員は、「イ・ジェミョンを阻むためにハン・ドクスを擁立しようとの主張は意味を失った」として、「イ・ジェミョンが有罪との趣旨で破棄差し戻しされたことで、ハン・ドクス首相の出馬も同時に名目を失った」と主張した。イ・ジェミョン候補の司法リスクが復活したことにより、これまでの独走構図が崩れ情勢が揺らぐことになったのだから、「ハン・ドクスでなければ難しい」という一本化の論理は説得力が下がる、との主張だ。
しかし、ハン候補側の主張とは異なり、一本化の圧力はさらに強まる可能性がある。「どうせ負ける選挙なのだから、完走してせめて次期の党の主導権などの実利を得よう」という一本化回避への誘引は弱まるからだ。慶北大学のオム・ギホン教授(政治外交学科)は、「最高裁の判断により(イ候補を)攻撃する名目ができたため、統一陣営の名目も強まらざるを得ないのではないか」と語った。
■一本化に消極的なハン・ドンフンにキム・ムンスも心変わり?
もう一つの変数は、3日に与党の大統領候補に誰が選出されるかだ。決選投票に進出したキム・ムンス候補、ハン・ドンフン候補は、一本化の必要性にはいずれも共感しているが、積極性では少なからぬ違いを示している。キム候補は一貫してハン・ドクス前首相との一本化の意志を明らかにしているが、近ごろは「党員が納得する方法での一本化」という条件を付けはじめている。「候補譲歩論」のような「ハン・ドクス中心の一本化」に一線を引いている。キム・ムンス陣営のメディア総括本部長を務めるキム・ジェウォン元議員はこの日のラジオ出演で、「キム候補が主導する一本化交渉が行われるだろう」とし、「ハン前首相が(与党の最終的な大統領)候補になる可能性はないと思う」とも述べた。
ハン・ドンフン候補も「すべての人と共に歩む」と述べて、一本化の余地を残している。しかし、党主流による「一本化圧力」に対しては不快感を隠さずにいた。先日には「ハン・ドクスと与党候補の一本化」を迫る党内主流に対し、「党の主導権掌握のための下準備」だと尖った反応を示している。この日、ハン候補は記者団に対し、「与党の大統領候補が選出されれば、その候補を中心に勝つ道を歩む」と述べた。ハン・ドクス前首相との具体的な一本化策については、「党内で予備選挙が行われている」として発言を控えている。陣営の関係者は「ハン前首相の支持率が良好なら一本化せざるを得ない」としながらも、「今は予備選挙期間だから『一本化しよう』と言っているが、党候補に確定すれば状況がどうなるかは見守らなければならない」と述べた。
■「決選世論調査」以外に一本化の方法なし
選挙公報の発注日程などを考慮し、与党指導部は7日までにハン前首相との候補一本化手続きを終えることを目標にしている。与党内部では、ハン前首相との討論会を何回行うべきかなどについて、近く確定される党の候補との協議が必要だと考えられている。ただし、与えられた時間が多くないだけに、「決選世論調査」による一本化が現実的だとも主張されている。