このところ米国は、国際社会の広範な反対にもかかわらず、中国や韓国を含むすべての貿易パートナーに対して「相互関税」と「普遍関税」を課した。各国はこれに懸念と不満を表明しており、自由貿易体制の最も暗い時期だと考える人が多い。これについて、いくつか見解を述べたい。
1つ目に、米国は自らの基準に基づき、理論的根拠やデータの活用、政策執行のあらゆる側面において深刻な欠陥がある、いわゆる「相互関税の計算式」を用いたが、これはまったく理にかなっておらず、対等でもない。米国側は、韓国が米国製品に平均で50%の関税を課していると主張し、韓国に25%の相互関税を適用すると発表したが、韓国内ではこれは理解できないとする見解が多いことが注目される。韓国の多くの知人が、韓米両国は高水準の二国間自由貿易協定(FTA)を締結しており、両国間での実際の平均関税率は0.79%の水準にすぎないと述べている。
2つ目に、米国は長年にわたり、国際貿易で多くの利益を得てきた。現在の米国の対外貿易構造は、米国内の産業構造と市場経済の法則が作用した結果であり、貿易赤字はただちに損失を意味するものではない。しかも、米国は商品貿易で赤字を出しているだけであり、サービス貿易の黒字の規模はきわめて大きく、2024年には2950億ドルとなり、史上最大額に近づいた。米国は中国にもサービス貿易で最大の赤字をもたらす国だ。一時は世界の自由貿易の創設者だった米国が、「米国第一主義」と「米国例外主義」を追求するために、国際経済と貿易規則を無視し、いわゆる「相互性」と「公正性」を追求するという名目で分別のない関税賦課を強行し、世界各国の正当な利益を犠牲にさせ、米国の覇権的利益に役立たせるようにした。これは、典型的な一方主義かつ保護主義であり、経済的な覇権行為として嘆かざるをえない。実際、米国の追加関税措置は、むしろ米国側に害を及ぼしており、世界経済回復にとっての深刻な障害になるだろう。
3つ目に、中国と米国の経済・貿易関係の本質は互恵と共生だ。中米国交樹立からの46年間、両国間の貿易額は25億ドル未満から2024年には約6883億ドルに急増し、両国と両国国民の双方が大きな利益を得た。この数年間、米国は貿易赤字を理由に、中国に対して追加関税の適用を続ける一方、中国の発展を抑制するために、先端技術製品の対中輸出を制限し、他国が関連分野で中国と協力することを妨害することで、中国と米国および中国と他国間の正常な経済・貿易協力を深刻に阻害している。貿易戦争に勝者はおらず、保護主義に道はない。
中国は貿易戦争を望まないが、中国人民の正当な権益が侵害されることは座視できない。中国は中米間の経済・貿易関連の問題について米国と交渉する用意はあるが、対話は相互尊重をもとに平等な方式で進められなければならない。もし、米国が経済と貿易の制限措置をさらに強化することに固執するのであれば、中国は確固たる意志と十分な手段をもって断固として反撃し、最後まで対応するだろう。われわれがこのようにするのは、自国の主権と安全保障、発展の利益を守るためだけでなく、国際貿易のルールと公正性、正義を守るためでもある。
習近平主席は、世界経済の海はそれぞれが孤立した小さな湖や川には戻れないと強調した。一方主義と保護主義の逆流がいかに荒く押し寄せたとしても、開放と協力は変わることなく主流の流れであり、互恵と共生は今もなお民意が求めるものであり、経済のグローバル化の流れに逆らうことはできない。中国は多国間主義を断固として守り、高水準の対外開放を積極的に推進して、中国式の現代化発展の機会を世界各国と共有し、互恵と共生をよりよく実現するだろう。
自由貿易と経済グローバル化の支持者かつ提唱者であり受恵者である中国と韓国は先日、ソウルで経済貿易相会合を成功裏に開催し、多国間主義を守る声を上げることにした。両国が意思疎通と調整を強化し、自由貿易体制を共同で守り、普遍的に恩恵を与える包容的な経済グローバル化を推進することを希望する。中国は今年、韓国がAPEC会議を成功裏に開催することを支持しており、韓国とともにAPECの中心価値を守り、自由で開放的な貿易と投資を保護するという初心を堅持し、地域経済の統合を持続的に推進することを望んでいる。
戴兵|駐韓中国大使 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )