憲法裁判所の弾劾審判への出席を公言していた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領側が、突如として「条件」を掲げた。警護問題などが解決されないと出席できないというのだ。法曹界では、逮捕状の執行を物理力で妨害している尹大統領が憲法裁に出頭すれば現場で逮捕される可能性があるとの見通しが示されていた。尹大統領が大統領官邸を要塞として籠城戦を繰り広げる可能性もある、との見通しも示されている。
尹大統領の立場を代弁しているユン・ガプクン弁護士は8日午後、記者団に対し、「憲法裁の裁判に出席するという意思に変わりはない」としながらも、「大統領が出向いて話せる条件が整った時に行けるということ」だとの前提をつけた。そして「警護や身辺の問題が解決されないと行けないということは、言うまでもない」と述べた。
尹大統領は3日、大統領警護処を前面に押し立てて高位公職者犯罪捜査処による逮捕状の執行を阻止することに成功した。尹錫悦逃走疑惑が拡散した8日昼には、尹大統領と推定される人物が官邸周辺の警護状況を視察しているような場面がオーマイニュースのカメラにとらえられてもいる。
尹大統領側が掲げた憲法裁への出頭の前提である「警護問題の解決」は、結局のところ弾劾審判に出席しないこともありうるという話に他ならないと評されている。官邸を要塞、警護処を護衛の武士とした尹大統領が、少数の警護人員を帯同して官邸の外に出てくれば、直ちに逮捕される可能性があるからだ。元部長判事の弁護士は「逮捕状が発給されている状態なので、官邸の外に出てきた尹大統領を憲法裁への出頭前後に逮捕したとしても、何ら問題はない」と語った。
ソウル西部地裁は7日に逮捕状を再発行しているが、尹大統領側はソウル西部地裁の発行した令状には応じられないとの立場を守っている。この日、尹大統領側は「公捜処が請求しても適法な管轄であれば令状審査に応じる」と述べた。ソウル西部地裁ではなく、ソウル中央地裁が発行した令状には応じうるというのだ。
内乱を首謀した疑いが持たれている尹大統領が、捜査はもちろん裁判所の判断が適切かどうかまで自ら決めるという主張だが、警察特攻隊の投入まで取りざたされている2度目の逮捕状の執行をひとまず阻止するための時間稼ぎだ、との解釈が示されている。
尹大統領側の主張とは異なり、すでに司法府は、ソウル西部地裁の発行した逮捕状は適法だとの趣旨の立場を表明している。前日、裁判所行政処のチョン・デヨプ処長(最高裁判事)は国会に出席し、尹大統領がひとまず逮捕状の執行に応じ、その後、不服申し立て手続きなどを踏むのが法治主義だと述べている。