韓国検察が、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の就任後に高価なブランドバッグなどを受け取った大統領夫人のキム・ゴンヒ女史をついに嫌疑なしとした。尹大統領の職務と関連性がないという理由からだ。金品を渡したチェ・ジェヨン牧師が尹大統領に頼んでほしいという趣旨だったというのに、検察はそうではないと強弁する。検察総長出身の大統領の夫人を何がなんでも守ろうとする検察の姿は気の毒なほどだ。今後、検察は国民の前で「公正と常識」という言葉を使わないでほしい。
ソウル中央地検刑事1部(キム・スンホ部長)は2日、キム女史と尹大統領、そしてブランドバッグなどを渡したチェ牧師を全員嫌疑なしとした。検察がこの決定を下すまでの過程は、あらゆる論理を組み合わせた過去の「政治検察」の姿を思い出させる。捜査チームは「一切の他の考慮なしに証拠と法理により起訴できないという結論に至った」と明らかにした。「国民の法感情には合わないかもしれないが、法律家の職業的良心に則り下した結論」とも話した。詭弁だ。
検察は、昨年11月に起きた同事件を放置し続け、総選挙で与党が記録的惨敗を喫した直後に捜査に乗り出した。
当時、イ・ウォンソク検察総長は、「聖域も特別待遇もなく捜査せよ」と述べた。しかし、捜査チームは総長に事前報告もせず、大統領警護処の建物でキム女史を「出張聴取」した。そのようにして下した嫌疑なしの結論に良心が咎めたのか、検察は外部関係者の判断を受けるとして捜査審議委員会を招集したが、起訴を主張するチェ牧師を呼びもしなかった。ところが、チェ牧師が要請した捜査審議委員会が大統領の職務との関連性が認められるという判断を下したところ、この捜査審議委員会の起訴勧告を選択的に受け入れなかった。何から何まで尹大統領の顔色ばかりうかがっていたのだ。
事案が違法かどうかは裁判所が判断する。このように国民的関心が高く、意見が分かれる状況で、検察がすべきことはきちんとした捜査を通じて被疑者など事件関係者を起訴し、裁判所の判断を受けることだ。
ところが罪を明らかにしなければならない検察が、逆に「護衛武士」となって国民の非難を全身で受け、必死に起訴を阻んだ。法の判断を源泉封鎖したのだ。何がそんなに不安だったのか。
尹大統領は検察総長時代、「生きている権力」に対する捜査を強調した。検察はその指示に従って、文在寅(ムン・ジェイン)政権の関係者を「埃が出るまで叩いて」捜査したと評価される。ところが、尹総長が大統領になってからは、大統領夫人の各種の不正疑惑を大目に見ようとあらゆる努力をしている。次の検察の努力は、キム女史の「ドイツモーターズ株価操作」関与疑惑を大目に見ることなのか。検察は自らに恥をかかせているのではないか。