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[寄稿]外交にも「ゴールデンタイム」がある…北方管理に今すぐ乗り出すべき

登録:2024-05-23 06:09 修正:2024-05-23 08:27
北朝鮮の金正恩国務委員長とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が昨年9月13日、朝ロ首脳会談に先立って握手を交わしている/朝鮮中央通信・聯合ニュースの資料写真

 韓米日の価値観外交で、朝中ロの北方外交が放置されてから3年目を迎える。チャン・ホジン国家安保室長は最近、韓ロ関係が「懸念のバランス」を通じてうまく管理されており、「ウクライナ戦争が終われば復元される」と楽観した。もちろん国際情勢のブロック化など外的な要因がないという仮定のもとの話だ。しかし、残念ながら歴史に「if(もしも)」はない。

 まず、外的要因に挙げられる国際情勢についてみてみよう。すでにブロック化は始まっている。米コロンビア大学のジェフリー・サックス教授は「米国の単一覇権は終わった」と主張する。いわゆる「Gゼロ(欧米の影響力の低下と発展途上国政府の国内重視によって生じた国際政治における権力の空白)」時代の多極体制に突入した。ウクライナ戦争がもたらした国際秩序の根本的な再編だ。BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)が浮上している。昨年、南アフリカ共和国で開かれた首脳会議で6カ国が新規加盟した。10月にロシアのカザンで開催される首脳会議で勢力は増えるだろう。グローバルサウス(北半球の低緯度と南半球にある発展途上国)も、ロシアと中国の主導で結集している。

 もう一つの仮定は、ウクライナ戦争が終われば韓ロ関係が復元されるということだ。周知の通り、ゼレンスキー政権は西側の支援なしにはわずか数カ月ももたない。イスラエルとハマスの戦争のために西側の支援が中断され、ロシア軍が勝勢を固めていった。このような危機的な状況で、米国議会が608億ドル支援法とロシア海外資産還収法を議決したことで、ウクライナは戦力を補強できるようになった。だからといって、奪われた東南部4州を取り戻す可能性は高くない。戦争は長期化せざるを得ない状況だ。

 戦争中のロシアにとって最大の友軍は北朝鮮だ。ロシアが北朝鮮に与えられるものは果たして「限られている」だろうか。そうではない。昨年の国家情報院の発表どおり、ロシアが輸入した北朝鮮製152ミリ砲弾100万発は、1個当たり600ドルと計算しても約6億ドルだ。ミサイルとドローンまで合わせれば数十億ドルに達する。そのお金を核ミサイル開発に使うことができる。それだけではない。戦後復旧のための労働者と戦線に投入のための傭兵など20万人派遣説が取りざたされている。傭兵の場合、毎年1人当たり3万ドルを稼げるだけではなく、実戦で経験を積むことができる。韓国のベトナム戦争派兵と同じだ。ロシアとしては、自国兵士の犠牲を最小限に抑え、北朝鮮兵士に代替することができる。さらに、新たに編入された東南部4州は、北朝鮮と互恵的な経済パートナーだ。北朝鮮が穀物と重装備部品とコークスを輸入し、マグネサイトを輸出することができる。

 北朝鮮がロシアから得られる無形の利益も少なくない。端的にいうと、北朝鮮制裁の無力化だ。ロシアは2022年、中国とともに国連史上初めて対北朝鮮決議案を阻止したのに続き、3月には国連の対北朝鮮制裁の専門家パネルの延長にも拒否権を行使した。韓国は非常任理事国なのに何も打つ手がない。ロイド・オースティン米国防長官は4月末、下院聴聞会で「朝ロ協力は非常に懸念されるべきであり、最優先課題として取り上げられるべき事案」だと強調した。

 ロシアはわずか2年前まで、南北に対し等距離外交を展開していた。だが、もはやそのバランスが崩れた。朝ロの密着は全面的に韓ロ間の敵対関係の反作用だ。韓ロ関係は国交正常化以来最悪だ。戦争直前までロシア市場で1・2位を占めていた韓国の自動車と家電製品は6・7位に下がった。現代自動車は工場売却後に撤退した。今やロシア在住の韓国人たちまで不安に震えている。今年1月、韓国人宣教師のP氏がスパイ罪で逮捕され、悪名高い連邦保安庁(FSB)の拘置所に収監された。沿海州に進出した中堅企業の法人長も逮捕された後、追放された。民主平和統一諮問会議のサンクトペテルブルク支会長(元韓人会長)は35年間のロシア入国禁止を言い渡された。財産どころか衣類一つも持ち出せなかった。飲食業に従事していたS社長も財産を没収される危機に瀕している。戦争が終わるまでロシアに暮らし続けることのできる韓国人は何人いるだろうか。

 昨年末、ロシア政府は「非対称的報復」を宣言した。にもかかわらず、韓国外交部の報道官は在ロ韓国人の被害が「韓ロ関係とは関係がない」として無視した。P宣教師の場合、ウラジオストクで逮捕されモスクワに移送され、官営メディアに公開するまで数回の交渉機会があった。しかし、在外国民の安全と財産を保護しなければならない国はそこになかった。そうして交渉のゴールデンタイムを逃してしまったのだ。マイク・ポンペオ元米中央情報局(CIA)長官兼国務長官は、2018年の朝米首脳会談を口実に平壌(ピョンヤン)を訪問し、抑留中の米宣教師3人を釈放させた。なぜ韓国政府は沈黙しているのか。在外同胞庁は何のために設置したのか。

 救急患者と同じように、ゴールデンタイムは外交交渉でも非常に重要だ。韓国政府は、時間が経てば韓ロ関係が自動的に復元されるという安逸な思考から抜け出し、今からでも北方管理に積極的に乗り出さなければならない。

//ハンギョレ新聞社
パク・チョンス|前大統領直属北方経済協力委員長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1141670.html韓国語原文入力:2024-05-22 19:30
訳H.J

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