ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、西側がタブー視してきたウクライナ戦争への直接介入と、西側の兵器を用いたロシア内の軍施設への攻撃の許可を要求した。
ゼレンスキー大統領は20日(現地時間)、ロイター通信のインタビューで、現在の状況は2022年2月にロシアがウクライナを侵攻してから最も厳しい時期だとして、このように要求した。これまで西側がダブー視してきたものであり、ウクライナ軍が1000キロメートルを超える戦線でロシア軍に押され、強い圧力を受けている現実を反映した要求だと、同通信は指摘した。
今回のインタビューは、ゼレンスキー大統領の就任5周年に合わせて行われた。大統領は2019年5月20日に5年の任期を始め、予定通りであれば3~4月頃に大統領選挙が実施されるはずだった。しかし、ゼレンスキー大統領は、ロシアの侵攻後に戒厳令を宣言した点を理由に大統領選を延期した。
ゼレンスキー大統領は「(東部の)ドネツク地域は非常に強力な(戦闘の)波に見舞われている」として、「わが国の東部でより多くの戦闘が行われていることを誰も注目しない」と述べた。大統領は具体的に、ドネツク州中部のクラホフ、ポクロフスク、チャソフヤール地域を戦闘が激しい地域として挙げた。先月10日にロシア軍が地上軍の兵力を新たに投じた東北部のハルキウ州の状況については、「統制がとれている」と主張した。
続けて、ロシアのミサイルの撃墜など領空防衛がいつにもまして重要だと強調した。「ロシア軍はウクライナの領土で300機の戦闘機を使っており、われわれが空で抵抗するためには120~130機の戦闘機が必要だ」として、西側が戦闘機をすぐに支援できないのであれば、領空防衛を支援してほしいと求めた。ウクライナ周辺の北大西洋条約機構(NATO)加盟国から戦闘機を飛ばし、ロシア軍のミサイルを撃墜することを提案した。
これは西側の直接的な戦争介入を意味するため、西側諸国には受け入れがたい要求だ。ドイツの場合、長距離巡航ミサイル「タウルス」を支援すれば、ミサイルシステムの運用に自国軍が直接介入する必要があることを理由に挙げ、ウクライナからの長距離ミサイルの支援要求さえ拒否してきた。
ゼレンスキー大統領は、西側がロシアを露骨に敵対視することを敬遠する点は理解するとしながらも、これは「意志の問題」だと主張した。大統領は「誰もが戦争拡大に対して懸念を表明しているが、ウクライナの人たちが死んでいるという事実には、みんな慣れてしまった」として、ウクライナの人たちの立場としては、西側の介入は「戦争拡大」とは違うと述べた。
さらに、西側が支援した兵器でウクライナとの国境近くなどに集結したロシア軍の施設を攻撃できるよう許可することも要求した。大統領はこれについて西側と議論を進めているが、「現時点では肯定的なものはない」と述べた。
大統領は、昨年5月にドイツなどを訪問した際には、ロシア本土を攻撃しないと約束したが、その後にこの約束を破り、ロシア本土への攻撃に乗りだした。特に今年に入ってからは、ドローンを動員したロシアのエネルギー施設への攻撃を着実に継続している。戦況が日増しに悪化し、さらに一歩進んで西側の兵器を動員したロシア本土攻撃まで主張したのだ。
ゼレンスキー大統領は、最近の状況は困難だが、今でも戦争に勝てるとして、「私たちがこの道を最後まで、可能であれば勝利の道に進むべきだと考えている」と力説した。