個人情報流出事故をきっかけに、日本事業と関連し、ネイバー側の株式の売却を事実上求めて来た日本政府が、韓国にも調査を要請した。国内の業界では異例のレベルの日本の圧力にも、韓国政府は韓日関係を考慮して自国企業の不当な被害を黙認するのではないかという批判の声があがった。波紋が広がったことを受け、日本当局は株式の売却を直接求めたわけではないという立場を一歩遅れて表明した。
個人情報保護委員会(個人情報委)のある当局者は2日、ハンギョレの電話インタビューで、「先月中旬頃、日本の個人情報保護当局から、LINEヤフー(ネイバーが株式を50%持っているAホールディングスの子会社で、日本のメッセンジャー市場の70%を占めるメッセンジャーアプリ「LINE」の運営会社)の個人情報流出事件と関連し、ネイバーを調査してほしいという電子メールを受け取った」と明らかにした。同当局者は「外交文書に準ずる電子メールではなかった。まだ返信はしていない」と付け加えた。
これに先立ち、日本の総務省はLINEの個人情報流出事故を機に、3月以降2回にわたりLINEヤフーに対する行政指導を行った。日本の行政指導には法的な拘束力はないものの、かなりの影響力がある。この行政指導にはLINEヤフーに対する株式保有構造の改編も含まれている。業界では、ネイバーのAホールディングスの株式を、同社に共同出資した日本企業のソフトバンクに渡すよう求める内容とみられている。
韓国の業界と専門家の間では、株式の売却要求とともに、韓国に調査を要請した日本政府の行為が適切ではないという意見が多い。匿名を希望した元規制当局幹部は「外国企業が起こしたセキュリティ事故だとしても、通常は該当国家で直接調査を行い、必要な場合は調査官を(外国企業の当事国に)派遣する」とし、「日本当局が韓国当局に調査を要請したのは、無礼な要求であり越権」だと指摘した。
波紋が広がったことを受け、日本総務省の中村朋浩総合通信基盤局利用環境課長はこの日、聯合ニュースの電話インタビューで、「行政指導の目的は適切な委託管理のためのセキュリティガバナンスの見直しの検討を要請するもの」だと述べた。また「行政指導の内容の中で『委託先たるネイバー側から資本的な支配を相当程度受ける関係の見直し』という表現があるが、株式の売却や整理を求めるような表現は全く含まれていない」と強調した。それと共に「どのような方策を取るかは根本的に民間が考えなければならない」と語った。
しかし、火種はまだ残っている。委託先という表現を使っているが、事実上ネイバーを取り上げ、資本的支配を相当程度受ける関係とまで言及した状況では、ネイバーが経営主導権を渡す方向での整理が避けられないということだ。ネイバー関係者は「韓国側の反発が激しくなったことを受け、一歩退くような外交的レトリックを使うことで、問題を取り繕うとしている可能性もある」と懐疑的な立場を示した。
外交部と科学技術情報通信部、産業通商資源部などの関係部署は「ネイバー側の立場を尊重し、日本と意思疎通を図っている」という趣旨の立場を繰り返し表明してことも物議を醸している。現政権が強制動員被害問題をめぐり韓国が一方的に譲歩する内容の第三者弁済で取り繕いを図り、韓日関係の改善、韓米日協力を成果に掲げてきた中で、「韓日関係を改善したのに、企業を奪われる」、「日本が韓国を敵対国として扱っている」という非難世論を恐れ、消極的に対応しているという批判が高まっている。
一方、ネイバーのAホールディングス株式処理をめぐる動向は、9日のソフトバンクの決算・投資者向け説明会(IR)前に糸口がつかめるものとみられる。株式の調整とそれに伴う費用はソフトバンクの投資家(株主)の利害にかかわる問題であるため、ソフトバンク側がネイバーに協議を要請したことが分かった。日本総務省の2度目の行政指導にともなう改善案の提出期限は7月1日だ。