与党「国民の力」のハン・ドンフン前非常対策委員長が、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の昼食提案を健康上の問題を理由として断った。ハン前委員長はまた、「私は何があってもみなさんを、国民を裏切らない」と述べた。ハン前委員長は今後の政治的な身の振り方を念頭に置いて、「国民の味方」であることを強調しつつ尹大統領とは距離を置くのではないか、との観測が出ている。
国民の力のチョン・ヒヨン首席報道担当は21日、「ユン・ジェオク党代表権限代行は19日に、大統領室から『ハン・ドンフン非常対策委』との昼食会を提案されたが、日程は確定していない」と発表した。ハン前委員長は健康上の問題を理由として、丁重に昼食会への不参加の意思を伝えたという。
党内では、総選挙の過程で大統領室と確執のあったハン前委員長が、胸の内の不快感をあらわにしたのではないか、との声があがっている。ハン前委員長は総選挙の過程で、キム・ゴンヒ女史のブランドバッグ授受問題、イ・ジョンソプ前国防部長官の逃避問題、医学部定員2千人増員問題などで「国民の目線」に見合う対応を取るべきだとして、大統領室と確執が生じていた。
ハン前委員長は20日夜のフェイスブックへの投稿で、「誤りを正そうとする努力は裏切りではなく勇気」だとしつつ、「政治家が裏切ってはならない対象はみなさん、国民だけ」と述べている。これは党内で大邱市(テグシ)のホン・ジュンピョ市長が連日、4・10総選挙での敗北はハン前委員長の責任だとしつつ、「裏切り者」とまで述べて非難していることに対する反撃だ。
同日、ホン市長は自身のオンラインのコミュニケーション・プラットフォーム「青年の夢」への投稿で、ハン前委員長について「私たちに地獄を味わわせた政治検事であり、尹錫悦大統領も裏切った人物」だとし、「これ以上わが党の周りをうろうろしてはならない」と述べていた。ホン市長は「ハン・ドンフンの誤りによって過去最大級の惨敗を喫した」とし、「ハン・ドンフンは総選挙を大統領選挙ごっこの前哨戦とした人物」だと批判している。
ハン前委員長は20日の投稿で、「精巧で迫力のあるリーダーシップが国民の理解や支持と出会えば難関を乗り越えていける、という信念を持っている」とし、「精巧になるために時間をかけて学習し、省察する」と述べている。今年6~7月に予定されている党大会での党代表選挙への不出馬を表明しつつも、いつか政治に復帰するとの考えを再確認したかたちだ。
こうした中、21日にも「ハン・ドンフン責任論」をめぐる攻防は続いた。尹大統領の「メンター」と呼ばれたシン・ピョン弁護士はフェイスブックで「国民の力の総選挙での惨敗の最も大きな原因は、ハン・ドンフンが自身の能力に対して抱いた過信」だと述べた。ホン市長の相次ぐ「ハン・ドンフンたたき」については、「ハン・ドンフンを大統領選のライバルとみなしているため」(慶尚道選出のある議員)との解釈が示されているが、ホン市長は「ハン・ドンフンをライバルとは考えていない」との立場を表している。
ソウル東大門甲(トンデムン・カプ)で落選したキム・ヨンウ前議員はフェイスブックで、「それでも総選挙を戦えるように火をつけてくれたハン・ドンフンに、誰が石を投げつけられるのか」と述べてハン前委員長を擁護した。ユ・サンボム議員も記者団に、「ホン市長は良くない結果が出ればいつも誰かを非難することで党内状況を難しくしているようだ」と述べてホン市長を批判した。